1日70人…増え続ける高齢行方不明者、5日生存確率はゼロ。最も多い死因に衝撃走る

 高齢者の行方不明者数が年々増加し続けている。桜美林大学の鈴木隆雄・老年学総合研究所長らの調査によれば、認知症で高齢者が行方不明になった場合、発見まで5日以上かかってしまった場合の生存確率は0%だという。

増え続ける高齢者の行方不明

 ご存じの通り、日本国における最大の課題は急速に進む高齢化だ。総務省統計局によれば、2021年の総人口は前年から20万人も減少した一方で、高齢者(65歳以上の人)の人口は前年に比べて3621万人に上り、過去最多となった。また、高齢者が総人口に占める割合は28.8%で、こちらも過去最高を記録している。

 このように、かつてないほどに高齢者が多くなった日本で、特に70歳代以上の行方不明者数が増加しているという。警察庁によれば、2016年には9000人台だった70歳代の行方不明者数は2021年には1万242人に上った。同様に、80歳代の行方不明者数は、2016年に1万118人だったものが、2021年には1万2706人に増加している。2021年の60歳以上の行方不明者数は2万7097人にも上り、1日あたり74人程度が行方不明になっている計算だ。高齢者人口が増えているのだから当然と言えば当然だが、やはり恐ろしい。

 そこで気になるのが、なぜ高齢者は行方不明になってしまうのか、ということだろう。

 警察庁によると、全人口において、行方不明になってしまう要因で最も多いのが「疾病関係」で2万3308人(2021年)、そのうち「認知症又はその疑いによるもの」は1万7636人にも上った。つまり、高齢者で行方不明になってしまう人のかなりの割合が、認知症を原因として行方不明になってしまっている、と言えるだろう。ちなみに認知症が原因で行方不明になった人数は、2016~21年の5年間で2204人も増加している。

行方不明になった高齢者は発見しづらく死に至る可能性大。最大の死因は?

 ところで行方不明になった高齢者は、その後どうなるのか。桜美林大学の鈴木隆雄・老年学総合研究所長らの調査によれば、警察への届出が遅れるほど、また発見が遅れるほど、生存確率が下がることがわかったという。

 同調査では、高齢者の生存確率は、当日に発見されれば82.5%、翌日なら63.8%、3〜4日目は21.4%と下がっていき、5日目以降の生存者はいないことがわかった。つまり、高齢者が行方不明になってから、家族や知人の人がすぐに気づいて警察に捜索願いを出すか、自分たちで探し出さなければ命を落とす確率が高いということだ。

 意外なことに、前期高齢者(65歳以上74歳以下)の方が、後期高齢者(75歳以上)よりも行方不明になった後の発見が難しくなるそうだ。前期高齢者の方が後期高齢者よりも体力があるため、徘徊する距離が長くなってしまい、遠くまで歩いていってしまうためだという。単純に前期のほうが助かりやすい、というわけではない点には注意したい。このことから、中年の若い認知症患者にも、同様に気をつけなければならないだろう。

 東京都健康長寿医療センター研究所によれば、行方不明になった認知症患者に多い死因は溺死と低体温症だという。どれだけ立派な人生を歩んできたとしても、最後の死因が溺死となってしまったら、当人も死んでも死にきれない。

 さらに、行方不明になって見つからない人もいる。警察庁によれば、行方不明者のうち2021年中に「所在確認」がなされた者は6万5657人だったが、行方不明者が見つからないなどに該当する「その他」は8754人にも上った。

 このように、行方不明になればたちまち、それが今生の別れになる可能性もある。

認知症患者が行方不明にならないための対策を

 では、認知症患者の行方不明を防ぐためにはどうすれば良いのか。

 認知症患者の家族や関係者が運よく本人を発見できる可能性は低い、と考えておいた方が良いだろう。まずは一刻も早く警察に連絡することをおすすめしたい。また普段から、外出時にはGPSで追跡できる端末を持たせておく、などの対策もすべきだろう。

 中部脳リハビリテーション病院 脳神経外科部長の矢野大仁氏は「学研ココファン」の記事にて、部屋から出られないようにしたり、威圧的な態度を取って外出させたりすることの危険性を指摘している。こうしたことによって逆に、認知症患者が周囲を怖がって逃げようとしてしまうこともあるようだ。

 また、各地の地方自治体が設置している「見守りネットワーク」(消費者安全確保地域協議会)を普段から利用することも考えたい。上述した桜美林大学の調査によれば、見守りネットワークを利用している認知症の高齢者が、行方不明になってから発見されるまでの平均時間は15.8時間、未利用の高齢者は43.0時間だった。この1日ちょっとの差が、高齢者の命を救うことにつながる。認知症患者のご家族がいる方は、ぜひ利用を検討してみてはいかがだろうか。

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