究極のほったらかし投資「ドル建て終身保険」の凄まじい威力! 50歳から預けてみたら…

老後資産形成コンサルタントの浦井麻美さんが「一方通行で確実に資産が増えていく」と話す米ドル建て終身保険。では実際、どのような商品があり、資産はどれくらい増えるのか。具体例を挙げ、米ドル建て終身保険の魅力を伝える――。全4回中の4回目。
※本稿は浦井麻美著『老後資産はドルで増やしなさい 毎月3万円で1000万円貯まる方法』(かんき出版)から抜粋・再編集したものです。
第1回:9割の人が知らない「iDeCoの落とし穴」 …リターンが大幅に悪化する恐れ
第2回:1ドル=150円で生活こう変わる! やっぱり資産運用は世界最強の通貨「米ドル」一択な理由
第3回:「ドル建て終身保険」が今、絶好のチャンスなワケ…長期の資産形成に最も適している
米ドル建て生命保険の種類
米ドル建ての生命保険にも、次のような種類があります。
①米ドル建て終身保険
被保険者の一生涯をカバーしてくれる保険のことです。日本でも終身保険は非常にメジャーな保険商品であり、実際に加入している人も大勢いらっしゃると思うのですが、その保険料払い込みや解約返戻金、保険金の支払いを米ドルで行うのが米ドル建て終身保険です。
米ドル建て終身保険には、予定利率が固定タイプのものと変動タイプのものがあります。固定タイプは、たとえば予定利率が2.5%であれば、保険契約が解消されるまでずっとその利率が適用されます。これに対して変動タイプは、たとえば2.5%を最低保証すると同時に、将来、運用がうまくいったときには、この予定利率が上昇します(利率は、一定期間ごとに見直されます)。もちろん2.5%は最低保証なので、仮に運用がうまくいかなかったとしても、2.5%の利率は保証されます。
②一時払い米ドル建て終身保険
全期間分の保険料を1回で支払う保険です。全期前納払いに比べて、保険料の総支払額が安いことが特徴です。また、全期前納と異なり、被保険者の死亡時や解約時などには支払った保険料は返還されません。また生命保険料控除は、保険料を支払った最初の年のみ受けられます。たとえば持病がある人、高齢の人、相続の準備が必要な人、増え方を確定したい人などにお勧めです。
保険会社によって商品性はやや異なりますが、ここでは代表的な2つのタイプについて仕組みや特徴を説明しておきましょう。まず1つ目は無告知型の一時払い米ドル建て終身保険です。保険会社によって多少の違いはありますが、契約時に入院していなければ無告知で加入できます。つまり、持病がある人でも加入できるということです。また80歳まで加入できる保険会社が多いので、ある意味、超高齢社会向けとも言えそうです。
もう1つのタイプは、払い込んだ一時払い保険料よりはるかに大きな保障が得られるタイプの一時払い米ドル建て終身保険です。こちらは85歳まで加入できるものがあります。そのため相続対策の最後の砦(とりで)と言ってもよいでしょう。生命保険は「500万円×法定相続人」の非課税枠があるので、相続税対策に有効なのです。
③米ドル建て養老保険
養老保険は生存給付金タイプで、保険期間が満期を迎えたときに満期給付金を受け取ることができるというものです。死亡時に受け取れる保険金と、満期時に受け取れる満期給付金の額が同額であり、保障と資産形成の両方を同時に行える商品設計になっています。
養老保険は、貯めた保険料をいつ、いくら必要か、自分で満期と必要金額を設定する保険です。満期までに被保険者に何かあれば、保険金が支払われるタイプなので、目標期日(満期)と目標金額(保険金額)を自分で決めることができます。満期が来て保険金が支払われたら保障は終わりです。そのため、マイホームの購入資金、子どもの大学費用、結婚資金など、使う時期がある程度見えているようなケースでの資産形成に役立ちます。
50歳から預けてみたら…
老後の資産形成を前提にするのであれば、やはり①の米ドル建て終身保険がお勧めです。
一例を挙げて説明していきましょう。ここでは50歳の女性が「積立利率変動型終身保険」に加入したケースを想定しています。この商品は名前にもあるように、積立利率が運用状況に応じて変動するというものです。最低の積立利率は2.5%(2020年12月時点)ですが、それが3.0%、あるいは3.5%というように上昇することもあるのです。逆に、運用が悪かったとしても2.5%は最低保証されますから、安心してお金を預けておけるというわけです。
契約内容は次のようになっています。
- 主契約……………積立利率変動型終身保険(米ドル建て)
- 保険金額…………3万米ドル
- 保険期間…………終身
- 払い込み期間……10年
- 保険料……………151.50米ドル(月払い)
- 契約年齢…………50歳
契約したときの年齢が50歳で払い込み期間が10年ですから、この女性は60歳になるまで毎月151.50米ドルの保険料を払い込んでいきます。したがって払い込む保険料は全額で1万8180米ドルになります。ちなみに保険料を払い込むときには、その時々の為替レートが適用されますが、ここでは便宜上、1米ドル=107円を適用していきます。
151.50米ドルで1米ドル=107円だとすると、月々の払い込み保険料は円建てで1万6210円になります(端数は切り捨て)。したがって、1年間の払い込み保険料は19万4520円。10年間だと194万5200円になります。
さて、この保険は終身なので、保険料の払い込み期間が終了した後は、そのまま据え置く形になります。仮に年2.50%で運用し続けた場合、払い込み保険料の総額である1万8180米ドルに対して、払い込みが終了した60歳時点の解約返戻金額は1万6747.58米ドルになります。つまりこの時点で解約すると、解約返戻金の額は払い込み保険料の額を下回るため、米ドルベースでは「元本割れ」になります。
ちなみに2.5%の積立利率だと、保険料の払い込みが終了した後、65歳まで解約せずに据え置くと、解約返戻金が払い込み保険料を上回ります。さらに引き続き70歳まで据え置くと、解約返戻金は2万115.55米ドルに。この時点の為替レートが1米ドル=107円であれば、円建ての解約返戻金額は215万2363円ですから、払い込んだ保険料に対して、1.10倍(プラス10%)です。
もし積立利率が3.50%まで上昇したらどうなるでしょうか。この場合、解約返戻金が払い込み保険料を上回るのが61歳のときです。そして70歳まで解約せずに据え置くと、解約返戻金は2万4189.42米ドルになります。もし1米ドル=107円だったら、円建てで258万8267円ですから、払い込み保険料に対して1.33倍になります。この保険で有利に運用するためには、やはり若いうちにスタートさせることです。
ここでは50歳の女性を事例にしましたが、もっと早く始めると、同じように払い込み期間が10年だったとしても、その後の据え置き期間が長くなればなるほど、解約返戻金は大きくなります。たとえば払い込み期間が10年で、その後30年間据え置いたとすると、積立利率が2.5%の場合で解約返戻金は2万6849.61米ドルですし、3.5%であれば3万9618.87米ドルになります。つまり積立利率が3.5%で30年間据え置くと、払い込んだ保険料に対して2倍超の解約返戻金が受け取れるのです。
運用は「長期」が鉄則
注意点がひとつだけあります。それは短期の解約は損だということです。たとえば1年目に解約した場合、払い込み保険料が1818米ドルであるのに対して、積立利率2.5%の場合だと、解約返戻金は979.60米ドルにしかなりません。払い込んだお金に対して約半分程度の解約返戻金しか得られないのです。
したがって、とにかく続けることを前提にしてください。そのためには、月々の保険料を無理な金額に設定しないことです。この手の積み立て型の金融商品で往々にして起こる失敗は、欲張ることです。少しでも早く、少しでも多くのお金をつくりたいという想いが強すぎて、毎月の積み立て金額を大きくしてしまうのです。
これは保険も同じです。毎月の払い込み保険料が高すぎると、途中で払えないという事態に追い込まれてしまいます。特に年齢の若い人は、収入自体がそれほど多くないはずですので、ここでの無理は禁物です。毎月の払い込み保険料は、続ける自信のある金額で設定してください。
とはいえ20年、30年経つと、何かと状況も変わるものです。払い込み期間中にどうしても現金が必要になった場合、2つの方法があります。1つは解約返戻金の範囲内で部分解約することです。全額解約は基本的にもったいないので、部分解約を利用することにしましょう。もう1つは契約者貸し付けを受ける方法です。その時点での解約返戻金の一定内で貸し付けを受ける方法です。
あるいは、コア・サテライト戦略で運用している場合は、コア部分である保険を解約するのではなく、サテライトに充てている米国株式やETFの一部を売却してキャッシュをつくったほうが合理的です。ドル建て終身保険は、20年、30年とほったらかしにすればするほど保険金額も解約返戻金も右肩上がり(もちろんドルベース)で増えていきます。
もし、将来、増えたお金を使って何かしたい場合は、必要なときに、少しずつ解約返戻金を使っていけば良いのです。残りの解約返戻金の部分は、保険会社が今まで通りの運用を続けてくれるので、残った解約返戻金は増えていくのです。
