1ドル=150円で生活こう変わる! やっぱり資産運用は世界最強の通貨「米ドル」一択な理由
円安が進み、インフレも止まらない。脱却の道筋が見いだせないなか、老後資産形成コンサルタントの浦井麻美さんは、個人にできる備えとして「米ドル」を活用した積極的な資産運用を促している。浦井さんが示す、米ドルの強さの理由とは――。 全4回中の2回目。
※本稿は浦井麻美著『老後資産はドルで増やしなさい 毎月3万円で1000万円貯まる方法』(かんき出版)から抜粋・再編集したものです。
第1回:9割の人が知らない「iDeCoの落とし穴」 …リターンが大幅に悪化する恐れ
第3回:「ドル建て終身保険」が今、絶好のチャンスなワケ…長期の資産形成に最も適している
第4回:究極のほったらかし投資「ドル建て終身保険」の凄まじい威力! 50歳から預けてみたら…
日本人は資産運用するしかない
今後の日本経済は、成長し続けるような状況ではありません。むしろ成長率は下がっていくと考えたほうがよいでしょう。すると世の中の働く人全員が、「限られたパイ」を奪い合う時代になります。つまりどんどん収入が増える人がいる一方で、全く収入が増えず、いつまでも新入社員の頃とほとんど変わらない給料の人も出てくるはずなのです。そういう厳しい時代を私たちは生きている、という認識を持つようにしましょう。
さらに暗い話になりますが、これから日本では、少子高齢化、人口減少が加速していきます。働き手が減る一方で年金を受け取る人が増えるということです。高齢者人口が増えれば増えるほど、現役世代の社会保障負担が重くなる。それなのに給料は増えないわけですから、現役世代の可処分所得はどんどん減っていきます。その分だけ貯蓄に回す余裕も無くなります。必死に働いて老後のお金を賄うというのは、もはや前時代的な発想です。そこで、大事なのは、その貴重なお金をできるだけ効率よく運用することなのです。
私たちがお金を得る方法は3つあります。「自分が働いて稼ぐ」、「お金に働いてもらう(=運用によって増やす)」、「相続や贈与を受ける」がそれです。最後の「相続や贈与を受ける」については誰にでも当てはまる方法ではないので、もし自分が相続や贈与を受けられたら、それはラッキーなことと思って、大事に活用する方法を考えてください。1番目の「自分が働いて稼ぐ」は、これからの日本の人口推移を直視すると、ひたすら働くだけでは難しいと先ほど述べました。そこで、誰にでもできる、手元のお金を増やす方法として、私は「運用する」ことをお勧めしています。
ただし、お金を運用する方法はたくさんあります。株式や投資信託が最も広く知られていますが、それ以外にFX(外国為替証拠金取引)や商品先物取引、ビットコインなどの暗号資産、債券など実にさまざまです。このなかで何を選ぶのかが、お金を運用する上ではとても大事な問題です。では、何で運用するのが一番良いのでしょうか。
その答えが「外貨(ドル)」です。将来、日本の経済力・国力が低下するとしたら、外国為替市場で円が売られます。つまり円安になるということです。円安は物価上昇(インフレ)を招きます。要するに、これはお金の価値が目減りすることを意味します。
これから10年後、20年後を見据えると、すべての資産を円で持つのは危険です。「円安→インフレ(物価上昇)→円の価値下落」という流れをたどるのは必定だからです。円の価値が下落するリスクを最小限に抑えるためには、保有資産の一部を「外貨」で保有する必要があります。外貨といっても無数にありますが、選ぶべきは最強の通貨である「ドル」一択です。他の選択肢はありません。
米ドルが世界最強である理由
皆さんは「基軸通貨」という言葉を聞いたことはありませんか? 辞書などにはこう書かれています。
「国際通貨のなかで中心的、支配的な役割を担っており、国際貿易取引や国際金融取引で基準として採用されている通貨のこと。世界各国のなかで、経済的に最も強い力を持った国の通貨を基軸通貨とするのが一般的」
要するに、経済的に最も強い国はどこであり、その通貨は何か、ということを考えれば答えは明らかです。結論から言うと、現状、経済的に最も強いのは米国であり、その通貨は米ドルです。今の基軸通貨は米ドルです。
基軸通貨は時代の流れによって変わっていきます。たとえばかつてはイギリスが世界の覇者であり、20世紀初頭の基軸通貨は英ポンドでした。しかし、1920年あたりから徐々に大英帝国の威光に陰りが見えてくるようになりました。経済力が低下したことに加え、第一次世界大戦や世界大恐慌の影響を受けたイギリスの国力がどんどん後退していったのです。
それに取って代わって登場したのが米国です。すでに19世紀末には、米国の経済力はイギリスのそれを凌駕するまでになっていたそうですが、欧州が2度の世界大戦で戦場化したこともあり、第二次世界大戦が終結した頃には、イギリス経済は完全に疲弊していました。結果、米ドルは第二次世界大戦以降、いよいよ世界の基軸通貨として君臨するようになったのです。すでに米国の経済力に対抗できる国は、どこにもありませんでした。
もちろん米ドルが現在に至るまで順風満帆で来ているわけではありません。1971年のニクソン・ショック、1985年9月のプラザ合意、1987年10月のブラックマンデー、1998年10月のヘッジファンド危機、2000年3月のITバブル崩壊、2007年秋口のサブプライムショック、2008年9月のリーマン・ショックと、その都度、米ドルは大きく売られてきました。しかし、それでもまだ米ドルは基軸通貨の座を他国通貨に譲っていません。
今、中国が経済力をつけて、人民元を基軸通貨にしようと画策しているように見えますが、それでも米ドルの「世界の基軸通貨」としての立場は、当面揺るがないと思われます。その理由について考えてみましょう。
外国為替市場で取引されている通貨の大半は、対米ドルが大半を占めています。国際決済銀行(BIS)が2019年12月に発表した「外国為替市場全体の1日の平均取引量は約6兆5950億米ドルでした。もはや天文学的な数字にしか見えませんが、ここでどの「通貨ペア」の取引量が多いのかを見てみましょう。外国為替取引は、米ドルと円、米ドルとユーロというように、異なる2つの通貨を交換する取引なので、どの通貨を売ってどの通貨を買うのかという組み合わせを「通貨ペア」と称しています。
実に、上位10のうち実に9つの通貨ペア、トップ20のうちでは17通貨ペアが対米ドルの取引です。全通貨ペアに占める米ドル絡みの取引シェアは88.3%。このように1日に行われている外国為替取引の大半が、米ドル絡みになっているのです。これが基軸通貨であることの何よりの証拠といっても良いでしょう。
世界各国も米ドルを保有
「外貨準備高」という言葉をご存じですか。これは、各国の中央銀行や政府の金融当局が保有している外貨のことです。海外諸国から借り入れている外貨建ての債務の返済が困難な状況に陥ったとき、この外貨準備の一部を取り崩して、返済に充てられるようにするためです。また、自国通貨が外国為替市場で大きく売られたとき、つまり日本であれば円が大きく売られて円安が急激に進んだときの対処として外貨準備が用いられます。また逆も然りです。
これまで見てきたように、円安が進むと、日本国内の物価には上昇圧力がかかります。1米ドル=110円で輸入できていたものが、1米ドル=150円になったら、日本国内に輸入されているさまざまなモノの円建て輸入価格は上昇しますから、その分だけ日本国内の物価は上昇してしまうのです。
もちろん、この物価上昇が国民生活にマイナスの影響を及ぼさない程度のものであれば、多少円安が進んでも問題ないのですが、短期間で円が急落した場合は、国内経済への悪影響が懸念されます。そのため、日銀は外貨準備の一部を取り崩し、その外貨を外国為替市場で売ることによって、円安を修正しようとします。これが「円買い介入」です。
このように外貨準備は、通貨危機などによって対外決済ができないようなときのセーフティネット(安全網)であるのと同時に、自国通貨買い介入を実施する際のリザーブ(積立金)になるのです。ちなみに2020年10月末時点における日本の外貨準備高は、総額で1兆3946億8000万ドルです。
また国際通貨基金(IMF)が世界各国から報告を受けて取りまとめた数字によると、2019年6月末時点における全世界の外貨準備高は総額約11兆7330億ドルになりました。うち、米ドルは6兆7920ドルと圧倒的に米ドルの占める比率が高いのがわかります。つまり基軸通貨として米ドルに取って代われる通貨は、今のところ周りを見渡しても見つからないというところでしょう。