注目の「安い日本株」リスト!元アジアNo.1日本株セールスマン「すでに世界中の投資家が割安さに気づいている」

本稿で紹介している個別銘柄:トヨタ自動車(7203)、任天堂(7974)、セブン&アイ・ホールディングス(3382)、ニデック(6594)、牧野フライス製作所(6135)

 2025年の相場が始まり、日経平均株価は大発会で昨年末比587円の下落からスタートした。翌日には一転し、前日比776.25円で4万円台に回復するなど、激しい展開を見せている。大和証券やUBS証券などで機関投資家向け日本株セールスや、みずほ証券で調査部の経験を持つ田口れんた氏(X : @TaguchiRenta)は、日本株の今後がどう見えているのか。みんかぶマガジン短期連載「元アジアNo.1日本株セールスマンが示す、日本株の羅針盤」第二回は田口氏のポートフォリオや情報収集源、そして2025年の株式相場に対する見解を聞いた。

目次

証券アナリストの「投資判断」と「目標株価」は無視

ーー田口さんの銘柄選定の基準について教えていただけますか?

 毎朝の習慣として、私はまず「ブルームバーグ」や「ロイター」といった海外ニュースをチェックしています。これにより、銘柄の売買に役立つ情報を収集しています。

ーーなぜ海外のニュースを日々チェックするのですか?

 現状、日本株を保有している投資家の約3割が外国人であり、売買を行っている投資家の約6割が外国人です。彼らの判断が日本株に与える影響は非常に大きいのです。

 海外ニュースをチェックした後は、証券会社のレポートから株価に影響を与えそうな情報を見つけだし、それをもとに売買の判断を行います。具体的な銘柄の投資にもこの情報を活用しています。よく証券アナリストの「投資判断」と「目標株価」だけを見て投資する方がいますが、私はそれらの情報を一切無視しています。むしろ、レポートの内容を重視していますね。

今後は「株式益利回り」に注目!株主還元がさらに活発になる

ーー証券会社のレポートで特に注目している箇所はどこですか?

 私はPERの逆数である株式益利回り(※企業が利益の全額を配当した場合の配当利回り)とPBRに着目しています。特にPBRが1倍を割っている場合、東証の要請に応じる必要があるため、また買収対象になる可能性も高いので、これらの銘柄は常に監視しています。

 また、株式益利回り(以下、益利回り)の重要性は今後ますます認識されていくと考えています。理由としては、東証が「資本コストや株価を意識した経営」を求めており、これにより株主還元がさらに活発になることが期待されるからです。その結果、配当利回りが益利回りに近づいていくと予測しています。

 加えて、「益利回り並みの配当が期待できるのではないか?」という投資家の期待も高まっているため、益利回りはこれから注目すべき指標だと考えています。

日本ではインフレがはじまりつつある…評価手法も変化していく

ーーちなみに、その兆しや具体的な事例などはありますか?

 トヨタ自動車(7203)は、数年以内に5兆円の株主還元を行う可能性があるとされています。その原資は当期利益であり、全額を配当に回した場合、5兆円は同社が上げた利益全額を配当として支払うことになります。つまり、益利回りと配当利回りが完全に一致することになるため、非常に重要だと考えています。

ーーこれまで益利回りに注目が集まらなかった理由は何でしょうか?

日本はこれまでゼロ金利やマイナス金利だったので、株の益利回りと10年債利回りを意識する必要はありませんでした。ところが近年のインフレです。日銀は政策金利を引き上げ、日本の10年債利回りは上昇中です。現在1.2%程度の10年債利回りが2%に上昇することも考えられるでしょう。その際にPER50倍の銘柄の評価はどうなるでしょうか? PER50倍の銘柄は益利回り2%になります。10年債利回りが2%ならば、リスクの少ない10年債利回りの方が有利な投資になり資金がPER50倍の銘柄から10年債に流れるでしょう。つまりPER50倍の銘柄は売られ、10年債は買われることになります。

ーートヨタのような事例が増え、日本株の配当利回りが益利回りに近づき、さらにインフレにより10年債利回りが上昇することで益利回りの重要さが増すということでしょうか?

 まさにその通りです。株主還元が増え、企業が利益の多くを配当に回すケースが増え、それと同時進行でインフレに伴う10年債利回りの上昇しますので、益利回りの考え方が重要になります。

モメンタムトレード戦略を駆使して売買

ーー田口さんはデイトレードのような短期売買は行わないとのことでしたが、売却の基準は決めているのでしょうか?

 私はカタリスト(※市場や株価の変動を誘発する材料やきっかけ)が出た際に株価が上がると予想して購入することが多いため、材料が出尽くした時点で売却することが多いです。

 具体例としては任天堂(7974)のケースです。ニンテンドースイッチの後継機が4月に詳細が発表になると言われています。8年ぶりの新ハードということで話題になり、市場の注目も集まるでしょう。その発表時に株価が上がることを見越して、私は任天堂の株を保有していて、発表時に株価が上がったタイミングで利益確定をしようと考えています。

日本株はまさに「眠れる森の美女」

ーー現在、米国株が強い一方で、日本株は軟調な印象を持つ方が多いです。そんな中、田口さんが日本株を多く保有している理由は何でしょうか?

 私は、日本株をグリム童話の『眠れる森の美女』に例えています。王子様にキスされるまで誰もその美しさに気づかないように、日本株もその価値に気づかれるまで眠っているのです。

 最近では、カナダのコンビニ大手・アリマンタシォン・クシュタールによるセブン&アイ・ホールディングス(3382)の買収提案や、ニデック(6594)牧野フライス製作所(6135)に対する敵対的買収の動きから、世界中の投資家が日本株の割安さに気づいたのではないでしょうか。

 ちなみに、セブン&アイ・ホールディングスはPBR1〜2倍、牧野フライス製作所は1倍です。日本株全体では、PBR1倍割れの銘柄が4割もあります。これから世界中の投資家が次の『眠れる森の美女』となる銘柄を探し始めると予想しています。

ーーそう考えると、日本株にはまだ上昇の余地がありそうですね。

「日本はデフレ経済だからダメだ」と言われることが多いですが、インフレ経済は始まっていますし、私は「人口減少」がデフレの原因というのは正しくないと考えています。

ーーその理由は何ですか?

 インバウンド需要が高まっているため、日本人ではなくても、日本で消費する人の数は増えています。簡単に計算すると、毎月300万人の外国人観光客が来日し、年間に3600万人に上ります。平均滞在期間は10日なので、1年の2.7%に相当します。この2.7%を人数に直すと98万人です。

 現状日本では年間60万人減少していますが、この98万人を加えると人口は年間で38万人増加している計算になります。労働人口が不足するという話もありますが、テスラが2025年に1台450万円の人型ロボットを1000台作り、2026年から量産を始める予定です。将来的には価格が300万円に下がるとされており、人型ロボットが相当な労働力を代替できるでしょう。人とは異なり休日が不要なため、かえって労働力が増える可能性すらあると予想しています。

〈構成・西脇章太(にげば企画)〉

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この記事の著者
田口れんた

株式投資歴36年。1988年に大和証券に入社し、日本株の機関投資家向けセールスを担当。1991年にスイス赴任後、1999年に帰国。UBS証券やバークレイズ証券で外資系機関投資家を担当し、2006年にアジアヘッジ誌でアジア最優秀日本株セールスに選出。2015年3月からみずほ証券調査部でリサーチマーケティングチームに所属し、機関投資家向けマーケティングを担当。2023年に独立し、現在はマーケットストラテジストとして活躍中。(X:@TaguchiRenta)

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