元アジアNo.1日本株セールスマンが明かす至極の投資ルール4原則「投資で意識しているのは高田純次」

本稿で紹介している個別銘柄:ソニー(6758)

 2025年の相場が始まり、日経平均株価は大発会で昨年末比587円の下落からスタートした。翌日には一転し、前日比776.25円で4万円台に回復するなど、激しい展開を見せている。大和証券やUBS証券などで機関投資家向け日本株セールスや、みずほ証券で調査部の経験を持つ田口れんた氏(X : @TaguchiRenta)は、日本株の今後がどう見えているのか。田口氏の現在にいたるまでの経緯と投資のマイルールにと合わせ聞いた。みんかぶマガジン短期連載「元アジアNo.1日本株セールスマンが示す、日本株の羅針盤」第1回。

目次

対機関投資家の最優秀日本株セールス受賞の過去

ーーまず、田口さんの投資遍歴と現在にいたるまでの経緯をお聞かせください。

 1988年に大和証券に入社し、日本株の機関投資家向けセールス担当になりました。社内の規制などにより売買はほとんどできませんでしたが、同年には当時日本を代表する企業であったソニー(6758)の株を100株ほど購入しました。その後も数年に一度のペースでさまざまな銘柄を購入しました。

 1991年には大和証券のスイス・ジュネーブ支店に赴任し、約8年間にわたりスイスのプライベートバンクを顧客とした機関投資家向けの業務に携わりました。1999年に東京に帰国し、証券外務員としてふたたび職務に就きました。その後は主に外資系の運用会社を担当しました。

 2000年にはUBS証券に転職し、2006年には『アジアマネー』誌で機関投資家向けの最優秀日本株セールスに選ばれました。2007年にはメリルリンチ証券(現・BofA証券)に転職し、2年間自己売買部門のトレーダーとして働きました。2009年にはバークレーズ証券、2015年にはみずほ証券に移り、調査部に所属しました。

 2023年に独立し、現在はマーケットストラテジストとして個人投資家向けの講演などを行っています。

 また、独立を機に本格的に株式投資を再開しました。これまでの経験から日本株の比重が高く、少しだけ米国株も保有しています。さらに、高配当で安定したリターンが期待できる資産としてJリートも持っています。

 基本的にはデイトレードのような短期売買は行いません。ポートフォリオを2つに分けて、ほとんど売買しないポジションと、おもしろいカタリストなどがある銘柄でキャピタルゲインを狙うポジションを保有しています。

投資を行う上で大切にしている「四字熟語」

ーー次に、田口さんの投資のマイルールについて教えてください。

 基本的にはほとんど売買しないポジションを保有しており、一部おもしろいモメンタムがある場合にキャピタルゲインを狙うポジションを保有しています。

 そんな私は、投資を行う上で、以下の四字熟語を常に意識しています。

 それが「臨機応変」「朝令暮改」「君子豹変」「高田純次」です。

 まず「臨機応変」とは、急激に変わる状況に応じて判断を変える能力を指します。また、自分の意見に固執すると、うまくいかないことが多いです。そのため、状況が変わった場合には、その都度判断を見直す「朝令暮改」が必要です。頻繁に変わることに対して否定的な意味合いもありますが、相場で勝ち続けるためには重要な心掛けだと思います。

 例えば、朝に買った銘柄がその日のうちに3割上がり、「ガチホするんだ」と決め込んで翌日に大きく下落するよりも、朝令暮改のスタンスで状況に応じて判断を変えることが必要な局面もあると考えています。ただし、リートや高配当銘柄はインカムゲイン狙いのため、朝令暮改には当てはまりません。

 また、自分の判断に誤りがあった場合は速やかに認めて修正する「君子豹変」の精神を持ち、損失を最小限に抑えるよう努めています。

高田純次のような「いい加減さ」が大事

ーーそして「高田純次」..…具体的にはどのようなルールなのでしょうか?

 ある種のいい加減さも株式投資には必要だと考えています。株式投資は「アートとサイエンス」と言われることがあります。サイエンスとして、バリュエーションなどの数値に基づいて判断しますが、それだけでは不十分で、感性や感覚を頼りに判断するアートな要素も必要です。これを芸能界一のテキトー男として知られる高田純次さんになぞらえています(笑)。

 上記の四字熟語以外では、自分で考えて判断することが重要です。『選択の科学』(シーナ・アイエンガー・著、文藝春秋)という、人間の判断や選択を分析した書籍によれば、自分で判断した結果なら、失敗しても後悔しないと言われています。逆に他人の指図やアドバイスに従って失敗すると、大きな後悔を感じることが多いとの指摘になっています。

 投資においても、証券アナリストが買いと判断してそれに従った結果、失敗すると精神的なダメージが大きいです。特に投資は非常にストレスの多い取り組みですので、常に自分で判断し、何かあってもメンタルをコントロールできる状態を保つことが大切だと考えています。

ーーこの四字熟語をマイルールに設定したきっかけは?

 機関投資家向けの日本株セールスや、自己売買部門のトレーダーとしての経験をもとにしています。日本株セールスでは、自分のアイデアにこだわり続けることが重要でしたが、自己ポジションを持っていないため、株価の上下は自分に直接影響しませんでした。

 一方、自己ポジションを持つことで日々のパフォーマンスに変動が生じ、リーマンショックのような金融ショックも経験しました。これにより、臨機応変を始めとする四字熟語のマイルールを順次追加していく必要性を感じました。

価格倍増で半分売却、10%下落でポジション調整

ーー上記を踏まえて、売買におけるマイルールはありますか?

 保有銘柄が買値の2倍になったら、半分を売却するようにしています。これにより、初期の投資金額を回収でき、その後の運用が精神的に楽になるからです。

 また、ストップロスの基準を10%に設定しています。銘柄が下落した場合、一旦ポジションを解消するか、減らすことでメンタルの安定を図っています。

ーー長期的に不安なく保有するためのルールなのですね。

 例えば、投資した銘柄が10分の1になってしまった場合、それを取り戻すのは非常に困難ですし、その間に大きな機会損失が発生します。そのため、撤退ラインを明確に設定し、惰性で保有しないようにしています。

〈構成・西脇章太(にげば企画)〉

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この記事の著者
田口れんた

株式投資歴36年。1988年に大和証券に入社し、日本株の機関投資家向けセールスを担当。1991年にスイス赴任後、1999年に帰国。UBS証券やバークレイズ証券で外資系機関投資家を担当し、2006年にアジアヘッジ誌でアジア最優秀日本株セールスに選出。2015年3月からみずほ証券調査部でリサーチマーケティングチームに所属し、機関投資家向けマーケティングを担当。2023年に独立し、現在はマーケットストラテジストとして活躍中。(X:@TaguchiRenta)

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