「集まって楽しい」の一歩先へ……コミュニティが売上を生み出していくための3つのステップ

実業家、投資家、映画プロデューサーなど多様な顔を持つ嶋村吉洋氏。そんな嶋村氏は、会社に頼らず、幸せなお金持ちになるためにはコミュニティづくりが欠かせないと話す。コミュニティはいかにしてお金を生み出していくことができるのか。そのステップを嶋村氏が解説する。全3回中の3回目。
※本稿は嶋村吉洋著『人生100年時代を生き抜くための億万長者のコミュニティ資本論』(プレジデント社)から抜粋、再構成したものです。
第1回:あなたの人生を劇的に変える「コミュニティ」……常識を捨て、起業よりも先にコミュニティをつくれ
第2回:飲み会がビジネスにつながる!「1つ1万円のお菓子」でもコミュニティビジネスなら売れてしまうかもしれない理由
目次
コミュニティビジネス、3つのステップ
ある程度、意思共有ができてコミュニティ内でビジネスが生まれたら、それをどう具体化し、売上につなげていくか。このプロセスを整理します。
「楽しい」だけでもコミュニティは成立しますが、継続するために、小さくても利益が出る仕組みをつくりたいものです。
コミュニティを基盤にしたビジネスでは、単なる販売戦略だけでなく、関係性や信頼を活用したステップを踏むことが大切です。そのためには、次の3つの段階があると私は考えています。
【ステップ1】内部消費(コミュニティメンバーでビジネスを支える)
まずは、メンバー自身が商品やサービスを購入し、コミュニティのビジネスを支えるモデルです。
「三菱は国家なり」と言われるほど強大な力を持った三菱グループや、他の巨大な企業集団、世界的な中国人コミュニティである華僑も、できるだけ身内の製品やサービスを利用するようにしているはずです。
私たちは成功している巨大組織を真似るようにしています。特に初期段階では、メンバーが自分たちの商品やサービスを利用することで、安定した売上基盤ができます。たとえば、美容室やカフェなど、日常的に利用するサービスをコミュニティメンバーが選ぶことで、外部に流れていたお金が内部で循環し、経済的な基盤が強化されます。
このような内部消費は「応援したい」という感情的なつながりも生み、継続的な収益源にもなります。実際に、あるカフェはコミュニティメンバーが頻繁に利用し、打ち合わせやイベントスペースとしても活用しました。
その結果、カフェは単なる飲食の場ではなく、交流のハブとなり、利用率が大きく向上しました。カフェの収益が増えることで、コミュニティ全体の活動資金も確保されるという好循環が生まれたのです。
このとき、メンバー限定の割引や特典を設ければ、より利用しやすくなりますし、実際に利用した感想を共有すれば、コミュニティへの信頼も高まります。
「利用する」「お金を出す」というより、「応援したい」という意識を全体で共有することが、内部消費を円滑にするポイントだと思います。
【ステップ2】リファラル(紹介)による拡張戦略
既存のコミュニティメンバーが友人や家族を紹介する「リファラル」は、コミュニティ外部から収益を得る有効な方法だと思います。
リファラル、つまり紹介は、単なるマーケティング手法ではなく、コミュニティ特有の「信頼」を最大限に活用する仕組みです。既存メンバーが自分の信頼をもとに友人や知人を紹介することで、新しい顧客は安心して商品やサービスを試すことができます。
そもそも、信頼をベースにした口コミは、あらゆるマーケティング手法の中でも最も強力です。実際、アメリカの調査会社ニールセンの広告信頼度調査レポート(Nielsen: Trust in Advertising 2021)によると、88%の人が「知人・友人からの推薦を最も信頼する」と回答しており、これはテレビCM(38 %)やSNS広告(33%)をはるかに上回る数字です。
また、アメリカのマーケティング会社ハブスポットの調査では、顧客の77%が「ポジティブな口コミが購入の意思決定に大きな影響を与えた」と回答しています。
この方法は広告費をかけずに効率よく集客できる点でも大きなメリットがあります。たとえば、コミュニティメンバーがカフェで手づくりスイーツを売り出し、「友人を紹介すると次回購入時に20%割引」というキャンペーンを実施しました。
この取り組みはSNSなどを通じて拡散され、地元だけでなく近隣地域からも新規顧客を呼び込むことができました。
その結果、1カ月の売上が通常の1.5倍に増加したのです。こうしたやり方は、商品やサービスのファンサイトなどでよく見られます。
参加者が多くなればなるほど、リファラルの効果は高まるでしょう。リファラルは信頼を基盤とした集客なので、新規顧客がリピーターになる可能性も高くなります。
また、メンバー同士のつながりが深まることで、コミュニティ全体の活性化にもつながります。ぜひ活用したい方法だと考えています。
「リファラルを活用する方法」
リファラルを活用するには、いくつか工夫が必要だと思います。まず、紹介キャンペーンを実施し、紹介した人と新しく参加した人の両方にメリットがある仕組みをつくると効果的です。
また、コミュニティ内での口コミが広がるように、メンバーが自分の体験を他のメンバーや外部の友人に共有できるよう、SNSやレビュー投稿を促すことも大切です。
さらに、紹介のプロセスを簡単にするために、QRコードやシェア可能なリンクなどを整備し、できるだけハードルを下げておくと、より参加しやすくなるでしょう。
【ステップ3】一般市場への販売や拡大
コミュニティのメンバーが商品やサービスを購入し、その知人や友人にも広がっていくと、次のステップとして一般の人々に向けて展開します。一般市場でビジネスが軌道に乗れば、収益は大きく拡大し、コミュニティ全体のブランド力も高まると思います。
その結果、新しいメンバーが集まったり、資金を呼び込むきっかけにもなるでしょう。たとえば、地方の農業コミュニティが地元の特産品を使ったジャムを開発し、オンラインショップや都市部のイベントで販売した事例があります。
この商品は「地域のストーリー」を前面に出すことで、「地元を応援したい」というお客様のニーズに応え、売上が大きく伸びたそうです。
また最近では、地域資源や文化、暮らしの魅力をテーマに、複数の企業や地域団体が連携して開催するキャラバン型のイベントも見られます。
たとえば、紀南地域の梅農家と連携し、梅を使った加工品やドリンクなどを都市部のマーケットで販売する取り組みでは、都市部の消費者と生産者との接点が生まれ、「地域を味わう」ことが地域貢献や地方創生の一環として受け入れられています。
このようなイベントは、単なる物販ではなく“共感を媒介とした交流の場”として機能し、販売だけでなくブランドの認知・信頼の獲得にもつながっています。
得られた利益を活用して新たな商品開発やコミュニティ施設の整備にもつなげることができました。一般市場からの収益は、コミュニティへの新たな投資を可能にし、事業全体の成長を加速させる原動力になります。
また、コミュニティのブランドが外部市場で認知されることで、さらに広い範囲での支持を得ることもできるのではないでしょうか。
成功のヒントは、次のようなことでしょう。
①ブランドストーリーを強化する……商品やサービスに、コミュニティの価値観や物語を加えることで、競争力を高める
②ターゲット層を明確化する……一般市場での顧客層を特定することで、プロモーションや商品設計を統一する
③オンラインとオフラインの併用……ECサイトやSNSを活用したデジタル販売と、イベントや店舗での直接販売を組み合わせ、顧客接点を広げる
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