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中古でも1億円…都内マンションはもう無理? 実はあと5年後、“大量供給”で不動産市場は激変する!

 住宅価格の上昇が続くなか、50歳代を取り巻く住まいの環境は静かに、しかし確実に変わりつつある。物価や税・社会保障負担の増加、管理費や修繕積立金のインフレ、そして役職定年や賃金調整といった「働き方の曲がり角」が重なる一方で、首都圏のマンション市場は過熱し、都心部では前例のない価格帯が常態化している。こうした変化の中で、今後の生活設計をどう描けばいいのか。不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏は「2030年から東京に訪れる“大量相続”に注目してほしい」と語るーー。

 みんかぶプレミアム連載「牧野知弘 不動産を斬る!」

目次

「マンション=庶民の資産」だった時代は終わったのか

 都区部の新築マンション平均価格が1億3000万円台、中古マンションでも1億1000万円台。なんだか信じられないような高価格が常識となってしまったマンションマーケット。普通の都民ではほぼ絶対に住宅は手に入らなくなってしまいました。

 日本は景気が悪い。失われた30年などと言われている中で株価と不動産価格だけが絶好調ですよね。なぜでしょう。私たちが住むためのマンションがどうしてこんな値段になり、いったい誰が買っているのでしょうか。もやもやしますよね。

 外国人投資家のせいだという人がいます。ある銀行の調査によれば都区内の主要区で分譲されたマンションを調査したところ購入者の2割から4割が外国籍だったという発表は世間を驚かせただけでなく、「このやろう、外人のせいだ!奴らを追い出せ!」という江戸末期の攘夷論のようなことを言う人まで出てきています。

“中古なら買える”はもう幻想ーー投資マネーが市場全体を席巻

 でも実態は外国人ばかりではなく、大勢の日本人投資家が参戦していますし、タワマンをこしらえるだけの財力も販売力も持ち合わせていない中堅以下のマンションデベロッパーも大手が建てたタワマンの住戸をまとめ買いして、これを転売して生きながらえているのです。

 中古なら買えるのかと思っても1億円超え。投資家は何も新築物件だけに投資をしているわけではないので、当然中古もおいしくいただいちゃいます。結果、中古すらぜんぜん手が届かぬ水準になってしまったというのが現状です。

 こうしてみると、もはや一般市民は都内における住宅取得は夢のまた夢、あきらめざるを得ないということなのでしょうか。

 いやいやちょっとお待ちください。なんだかテレビショッピングのようになってきましたが、実は切り口を少し変えてみるだけで、今後東京で家を持つことは絵空事ではなくなってきそうなのです。その理由について、シミュレーションを行ってみます。

投資マネーと実需は別物ーー5000万円の“天井”が示す現実的な選択肢

 今後、東京では家が持てなくなる。あるいは今、無理してでも買わないとこれからインフレ社会になるのに、ぼやぼやしていると乗り遅れる。多くのデベロッパーや提灯持ち評論家の方々が口を揃えます。本当にそうでしょうか。

 まず現在のマーケットは投資マーケットと実需マーケットに分けて考える必要があります。このうち投資マーケットは、都心部を中心に主に転売を狙って入ってくるマネーです。彼らは比較的短期に売り抜けることを目的としていますので、彼らに投資仲間として追随するのは自由ですが、善良なる一般実需層の方はひとまず、放っておきましょう。

 では実需マーケットが今後どうなるかといえば、中古マンションの場合で現状では首都圏で5000万円がほぼ上限値とされます。東京カンテイが発表する中古マンション(70㎡タイプ)の平均価格はここ数年5000万円を目前に価格が横ばいになっています。投資マネーの流入が薄い1都3県のレンジで考えると、おおむねの実力値がこの辺りにあることが窺えます。したがって多少無理して埼玉県や千葉県などの中古を狙うという手はありますが、やっぱり東京に住みたいという人にとっては不満が残ります。

65歳以上の“ひとり暮らし”が爆増中…東京の世帯構造はこう変わった

 さて切り口をさらに変えていきましょう。時間軸を2030年に伸ばします。といってもあと5年、いや今年もあとわずかなので4年半程度先の未来のお話です。でもわずか先の東京はその姿を明らかに変えていきそうなのです。

 ここに2000年と2020年を比較した人口や世帯数の表を掲げてみました。20年間で東京の人口は約200万人、16.5%増加しています。世帯数は34%の増加。よく東京の住宅マーケットは世帯数が増え続けるから永遠に(?)大丈夫だといわれます。でもこの世帯数の伸びをもう少し詳しく見てみましょう。

出所:オラガ総研調べ

 まず単独世帯、いわゆるおひとりさま世帯の数が伸びているといわれます。20年で65%も増加しています。でも実は増加の中で目立つのが高齢単独世帯(65歳以上のおひとりさま)です。その伸びは20年でなんと2倍。そのうち後期高齢単独世帯(75歳以上のおひとりさま)に限れば2.64倍という異常な伸びを示しています。単独世帯が増加しているというと「ははーん。相変わらず東京には若い人が多いから」と考えるあなたは昭和脳であり、増加分の約3割が高齢者の単独世帯化(片方の配偶者が亡くなるなど)なのです。

 また都内に住む高齢者数は現在310万人でこの数は20年前と比べると63%もの高い伸びになっています。

2030年、東京に訪れる“大量相続”が住宅市場を揺るがす

 さて、2030年以降の東京はどうなるでしょうか。そうです。大量相続の勃発になります。膨れ上がった高齢者、とりわけ後期高齢おひとりさまになった方々が亡くなっていかれるのです。調査データは2020年ですから現在はその数はもっと膨らんでいるでしょう。そして単独世帯で相続が発生すると家が不要になります。

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この記事の著者
牧野知弘

不動産事業プロデューサー。東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現・みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て三井不動産勤務。J-REIT(不動産投資信託)執行役員、運用会社代表取締役を経て、2015年にオラガ総研株式会社の代表取締役に就任。ホテルなどの不動産事業プロデュースを展開している。著書に『なぜマンションは高騰しているのか』(祥伝社新書)など多数。

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