「日足は見なくていい」米国株のプロが「月足」しか見ない理由
チャートを見て自分の持っている銘柄の株価が下がっていると、つい「もう売ったほうがいいのかもしれない」と動揺する人も多いだろう。そんな中で、米国証券業界で30年以上の実務経験を持つ米国株トレーダー・マーケットアナリストの鎌田傳氏が勧めるのが「月足チャート」を使って、相場の大きな流れを見ながらトレードのタイミングを判断する「月足投資」だ。なぜ月足なのか、鎌田氏がその理由を解説する。全3回中の2回目。
※本稿は鎌田傳著『米国株ETF投資――「オルカン・S&P500」の次の一手!』(バトン社)から抜粋、再構成したものです。
日本生まれのローソク足、米国生まれの移動平均線
私は米国の証券業界で30年以上、投資の世界に身を置き、投資アドバイスやマーケット分析、自身のトレードを通じて、成功も失敗も経験してきました。その結果、私がたどり着いた結論は、「まずは月足チャートを見る」ということです。
まず月足チャートの基本となるローソク足から説明しましょう。ローソク足は江戸時代の米相場から生まれた、日本発祥のチャートです。

米国では、かつて「バーチャート」と呼ばれる高値と安値を結んだ棒状のグラフが主流でした。TradingMarketsの上司だったコナーズ氏も好み、社員も使っていました。バーチャートでも始値、高値、安値、終値がわかるので全く支障はありません。
ただ視覚的には、ローソク足のほうがヒゲと実体を区別するのがとても簡単です。現在では、米国でもローソク足チャートが広く使われるようになり、世界中の投資家に浸透しています。
ローソク足を利用したトレードでも、移動平均線を入れてトレンドの方向や売買のタイミングを見極めるのが一般的です。
移動平均線とは、一定期間の終値の平均値を結んだ折れ線グラフで、米国発祥のテクニカル指標です。日本では5日、25 日、75 日、200 日が広く定着していますが、米国では20 日、50 日、200 日が主流です。
日本発祥の「ローソク足」と米国で考案された「移動平均線」。2つを組み合わせたトレードは、まさに日米の知恵の融合と言えるでしょう。
見るのは月足だけでいい
さて、ローソク足には分足、日足、週足、月足がありますが、私が活用するのは月足です。極論すれば月足以外は不要と言ってもいいかもしれません。
その理由から説明しましょう。個人投資家の多くは、日足チャートを見ていると思います。以下は、ダウ平均株価(DJI)の日足(2025 年7月~12月)です。

チャートからは2025年7月から、株価は横ばいを繰り返しながら、徐々に上昇しているのがわかります。
同年11月前半は過去最高値を更新していますが、中旬以降は大幅な下落がありました。FRBの利下げ観測後退や高値警戒感から売られ、11月13日には一時700 ドルを超える下げ、さらに18日には550ドル超安となっています。
では、同じ期間を以下の月足で見てみましょう。

月足では上昇トレンドが継続しており、11月の値動きは日足では上げ下げを繰り返しているものの、月足では十字線が1本現れているだけです。
十字線は、始値と終値がほぼ同じ価格となり、買い手と売り手の勢力が拮抗していることを示します。相場の転換点となる場合もありますが、一時的に上昇・下落のどちらにも動きにくい「様子見」状態を示す場合もあります。
このケースでは、10 月の終値より11月の終値のほうが高く引けており、上昇トレンドは維持されていました。700 ドルを超える下落があっても、月足で見れば上昇トレンドは継続していたということです。
日足はノイズが多すぎる
2つのチャートを比べてみると大きなトレンドを把握するには日足より月足のほうが判断しやすいと思いませんか。それはなぜでしょう?日足にはノイズ(雑音)が多いからです。
株価は買い手(需要)と売り手(供給)のバランスによって上下します。買い圧力が優勢なら上がり、売り圧力が優勢なら下がる。買い手と売り手が拮抗すれば、株価は動かず横ばいになります。
需給のバランスは、さまざまな要因によって左右されます。最大の要因は業績でしょう。
成長性があり、好業績が見込める企業なら買いが集まり、株価は上昇します。しかし、業績が振るわず、赤字に転落しそうな会社の株式は買い手がつかず低迷、赤字に転落すれば売りが集まり、下落していきます。
しかし、それ以外にも株価が上下する要因は多々あります。景気、金利、為替、投資家心理、そしてニュースや政治動向などです。こうした要因が日々の株価を動かすため、日足チャートには短期的な値動きが色濃く現れます。
紹介したダウ平均株価が2025 年11月に一時的に下落した背景には、FRBの利下げ観測の後退や、高値警戒感がありました。
しかし、11月下旬になると追加利下げ観測が強まり、ダウ平均株価は上昇に転じます。実際にFRBが利下げを決定したのは12月10日のことで、その翌日にはダウ平均株価が大幅に上昇しました。
こうした市場参加者の期待や政策決定の影響が、日足チャート上では日々の上昇・下落という値動きとなって現れているのです。
脳卒中が「長期保有」にたどり着かせた
最近はAIによるアルゴリズム取引も、高騰や暴落の原因になっています。
アルゴリズム取引とは、コンピュータが市場データ(株価、出来高、ニュースなど)を分析し、あらかじめ設定されたルールに基づいて自動的に売買する取引手法です。
AIによるアルゴリズム取引では、人間では不可能な高速・大量の取引が可能で、主に機関投資家の売買執行や、短期的な値幅取りに利用されています。短時間で大量の売買が可能なため、株価の乱高下を招くこともあります。こうしたアルゴリズム取引も、日足チャートに現れます。
デイトレードや短期で利益を上げているトレーダーにとっては、分足や日足は重要なツールでしょう。
デイトレーダーは刻々と変化する分足をにらみながら、短期トレーダーなら毎日変化する日足をチェックして発注、決済を繰り返します。AIに関して言えば、米国市場なら雇用統計など重要指標が発表された瞬間に株価を予測し、高速で大量発注し利益を上げます。
私は、そのようなトレードを決して否定はしません。私も短期トレードをして、利益を上げていたこともあります。
しかし、脳卒中に倒れ、モニターに張り付き、株価の変化を注視しながらトレードすることが不可能になったとき、パッと視野が広がったのです。
ニュースや為替、投資家心理などの影響で日々の株価は多少上下します。しかし、上昇基調が続く銘柄を選べば、そうした短期的な値動きに惑わされることなく、長期保有で利益を狙えるのではないか―。そんな考えにたどり着いたのです。
