ウクライナ戦争、まさかのプーチン優勢! エネルギー欲しさに裏切る欧州各国…「経済版NATO」構築へ(特集:電力ひっ迫「国際情勢編」)
ロシアによる侵攻後、ウクライナは健闘を続けてきたが、ここにきて大きな変化が起きている。背景にはエネルギー不足に喘ぐ欧州民がいる。無関係の中国やインドが高笑いするなか、西側諸国は資源大国ロシアの本当の怖さに怯えだした。みんかぶプレミアム特集「電力ひっ迫」(全9回)の第6回は、国際政治アナリストの渡瀬裕哉さんがグチャグチャになった国際情勢を解説する。「すでに裏切りの動きを見せている国がある…」。日本はどうする……!?
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「平和ボケ」ヨーロッパ人へのイジメが始まった
ロシアの国営天然ガス企業ガスプロムが、欧州向けの「ノルドストリーム1」パイプラインによるエネルギー供給量を7月27日から引き下げるという発表を行った。表向きの理由はタービンの保守点検としているが、それを額面通りに受け止める人はいないだろう。実際の理由はウクライナへの軍事侵攻を継続するロシアからの報復であることは明らかだ。
冷戦崩壊後、平和ボケした欧州はロシアによる潜在的脅威を忘却し、気候変動問題を重視したグリーンエネルギー投資を推進してきた。欧州諸国によるグリーン政策の展開は、産業競争力を失った彼らが経済競争のルール形成を掌握し、国際的な主導権争いでの巻き返しを図る試みであった。
欧州諸国が主導してきたグリーン政策は、欧州自身には下駄を履いたルール(京都議定書の一連の規定など)が適用されるとともに、省エネ努力を限界まで推進してきた日本の競争力を潰し、米国の産油国・産ガス国への転換を抑止し、中東産油国への牽制として利用されてきた。
外交力が不足する日本、対テロ戦争で劣化した米国・中東諸国は、欧州諸国によるルールメイキングにいいように踊らされてきた。「化石賞」のように日本のエネルギー政策を揶揄する取り組みも行われたことで、日本の人々は欧州の広報宣伝活動に乗せられて、自国の競争力がある高効率な石炭火力発電の輸出などを自ら制限する愚を犯してきた。