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経済学者「中国経済は長期低落傾向」日本人がやるべき投資はもうこれしかない!世界の流れからみた当然の結論 

 経済学者の上念司氏は、「権威主義体制の国も自由主義国も政策を間違える」と指摘する。そんな中で日本人は何を信じ、どういった投資を行うのがベストなのか。上念氏が「普通に考えたらもう答えは出ている」と話す投資方法と、その結論に至った思考のプロセスを紹介する。 

※本記事は上念司著『経済学で読み解く正しい投資、アブない投資』(扶桑社)から抜粋、再構成したものです(全4本中の4本目)。 

第1回:なぜネットの投資情報はゴミばかりなのか!経済学者「2~4%のマイルドインフレなら、短期的な景気後退局面があってもいずれ景気は持ち直す」 

第2回:経済学者が指摘する「中国EVが詰んでいる理由」…大変だ!アメリカが警鐘「チャイナに半導体製造装置を売ったらダメだ!」

第3回:もし中国と戦争になったら「10億人の人口は飢え死にする可能性」経済学者指摘…世界は2つに分断され、日本も戦争に巻き込まれる 

目次

大国も政策を間違える 

 現在の中国政府は政治的な理由から経済理論に逆らった無茶な政策を実行しています。そして、これは歴史上何度も繰り返されている点が重要です。古くは毛沢東が1950年代に実施した「大躍進政策」です。大衆運動によって中国経済を先進国並みにするという無茶な目標を立てました。  

 もちろん、そんなものは到底達成することはできず、約5000万人から6000万人が餓死しました。しかし、中国共産党はこれに全く懲りておらず、最近ではゼロコロナ政策が無惨にも失敗し、中国経済は長期低迷に陥っています。  

 このように、社会主義のような権威主義体制の国は、誤った経済政策を選択しやすいという傾向があります。しかし、だからといって日本や欧米のような自由主義諸国が間違った政策を絶対に選択しないかというと、必ずしもそうではありません。イギリス政府およびイングランド銀行がポンドの価値を維持するという誤った政策に手を染めたという過去があります。 

 また、アメリカも古くは1930年代の恐慌期においてまだデフレから脱却できていなかったのに金融緩和を解除し、増税するという大間違いをっています。最近では2008年にリーマンブラザーズ証券の破綻処理を間違えてリーンショックという大事故も起こしました。そして、日本も御多分に漏れず、デフレの真っ只中で何度も金融緩和を解除するという愚策を取ってきました。 

第二次安倍政権は前政権の「逆」を選択 

 ただ、ポイントは経済政策の選択を間違えるということではありません。間違いを犯したあと、それに気づいてどれだけ早く修正するかという点です。この点が社会主義諸国のような権威主義体制の国と自由主義諸国の大きな違いです。  

 自由主義国家の場合、間違いを犯してもそれを正す手段があります。それは「国政選挙」です。間違った経済政策を採用すればいつか必ず国民が困窮し、国民はその状態に耐えられなくなります。鬱積した不満は選挙で爆発するわけです。そして、政権交代が起これば、経済政策は見直され、前の政策が否定されます。そして、たいていの場合は前の路線と180度違う政策が採用される。前が間違っていたんで、逆をやれば正解。極めて単純です。  

 2012年の政権交代選挙はまさにそれでした。民主党政権が円高容認で、かつ緊縮的な政策運営をしていたのに対して、第二次安倍政権はその逆をやったわけです。金融緩和、財政拡張、成長戦略(規制緩和)というアベノミクス三本の矢はまさにそれを象徴する政策でした。そして、景気が低迷していた原因である、誤った経済政策が正されれば、当然景気はよくなる。景気がよくなれば株価が上がる。当たり前のことが起こったにすぎません。 

 そして私はこのときすでに経済学の知見を身につけていたので、絶対に株価が上がると思って株を買ったわけです。このとき買った株はすべてインデックスです。個別銘柄は買っていません。  

中国は経済理論通りの“罠”に陥っている 

 逆に言うと、権威主義国家の場合、権威主義国家の場合、間違った政策を採用してもそれが正されずにダラダラと長く続く可能性が高いということです。権威主義国家の独裁者は大抵メンツがありますので、自分の間違いを認めません。そして間違いを認めないまま長きにわたって政権の座に就く。 

 結果として、その独裁者が死ぬまで間違った政策が採用される。ソ連が崩壊した理由はまさにこれではないでしょうか?毛沢東がもう少し長生きしていたら、中国は崩壊していたかもしれません。そしていま、習近平という新たな独裁者が。永久に独裁を続けるための法整備を完了しました。さらに経済政策は間違い続けています。中国の長期停滞はこのまま続く可能性が高いと思われます。  

 とはいえ、権威主義国家がつくり出す市場の歪みを利用して大きく儲けることも可能です。実際に、中国がWTOに加盟した2001年からリーマンショック直前の2007年までの間に中国株に投資していたら相当な儲けを出すことができたでしょう。しかし、中国の高度成長はサスティナブルではなかった。その後の株価でみてもわかる通り、大して上がっていません。  

 取引規制や空売り禁止、「国家隊」による買い支えなど、ありとあらゆる株価維持策をやってこのザマ。そもそも、高度経済成長そのものが持続可能ではありません。高度経済成長とはマラソンでいうと4番手グループぐらいの選手が、ごぼう抜きでトップグループに追いつくことです。トップグループに追いついたらそこから先はいままでのようにはいきません。マラソンと違って経済はなにが正解かコースが決まっていないからです。 

 トップの背中を追いかけているうちは、真似してればよかったものの、トップに追いつたら自分も試行錯誤をしなければならないのです。ところが、中国は試行錯誤の努力より、産業スパイで技術を盗むことに注力してしまいました。さらに、研究開発において一番大事な「自由」という価値観を共産党が否定しています。これではトップを走り続けることは難しい。経済学の理論通り、中進国の罠に陥りつつあるわけです。  

日本人が選ぶべき投資、その結論はもう出ている 

 ちなみに、中国経済が長期低落傾向を続けることが確実ならそれで儲ける方法はなきしもあらず。「上海総合指数」とほぼ連動して動く香港の「ハンセン指数」という株価指数があります。この株価指数に連動した商品の中に、株価が下がると基準価格が上がるいわゆる「ベア型」と呼ばれるオプションなどを組み合わせたややリスクの高い商品があります。 

『経済学で読み解く正しい投資、アブない投資』(扶桑社)

 ネットで検索したら「NEXT NOTES 香港ハンセン・ベア ETN」が出てきました。この商品はETFではなく、「ETN」です。ETFは裏付けとなる資産を保有しているのに対して、ETNは信用力の高い金融機関が特定の指標に連動するように発行した債券です。発行している金融機関は裏付け資産を保有せず、その信用力により債券を発行しますので少しリスクは高め、手数料も高めです。  

 調べてみたところ、私が口座を持っているSBI証券でもこの商品は買えることがわかりました。コロナ前の2019年以降の価格は、まさに中国株の低迷に合わせて逆向きに6000円から1万円まで上がっています。  

 ゼロコロナ政策が終わったときに、中国株は一時的に上昇したので7000円を一瞬割れますが、その後リバウンドが期待外れに終わり再び中国株は低迷しました。特に2023年後半にかけての売りがキツかったので、その分この指数は逆に動いて価格を上げました。  

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この記事の著者
上念司

1969年、東京都生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。在学中は創立1901年の日本最古の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年、経済評論家・勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一教授に師事し、薫陶を受ける。金融、財政、外交、防衛問題に精通し、積極的な評論、著述活動を展開している。

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