イーライリリーの株価高騰を支える「謎の肥満薬」…筆者が出会った「一気に体重10kg減の体験者」と医師の警鐘

医薬品のイーライリリーの株価が過去2年で2倍以上に値上がりしている。同社が2025年2月に発表した第4四半期(10-12月期)決算でも売上高は前年同期比45%増の135.33億ドルと好調だ。その大躍進を支えているのが、同社が手掛ける「肥満薬」だ。一体どんな薬なのか。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一が解説するーー。
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糖尿病治療薬として開発された「マンジャロ」だが…
GLP-1受容体作動薬の市場が急速に拡大している。糖尿病治療薬として開発された「マンジャロ」(一般名:チルゼパチド)は、減量効果の高さから肥満治療薬としての関心が高まっている。特に米国では、製薬業界だけでなく消費財市場にも影響を及ぼすまでになっている。
「マンジャロを始めて、3か月で10kg痩せた。さすがに10kgも痩せると私の体型の変化に気づいてくれる人も多い」
そう話すのは、港区にあるIT企業に勤める竹山憲一氏(48歳、仮名)だ。
「オンラインで買うと3万円〜5万円かかるのですが、医師に『私は糖尿病の気(け)があること』を強調して、保険適用でやってもらうことで約4600円で手に入った。飲むと、食欲が全くなくなるのがわかる。満腹感があるわけではなく、お昼だしそばを食べようかなと考えると、別に食べたくないなという感覚になる。米国のウォールマートが、マンジャロを飲んでる人の食料品を買う量が減ったと聞いて、調べて試してみたのがきっかけだ」
マンジャロは、糖尿病の治療のために作られた薬だ。体重を減らす効果がとても高く、世界で注目されている。週に一回、自分で注射を打てばよく、血糖値を下げながら自然に食べる量を減らせる仕組みになっている。
マンジャロのすごさは、科学者たちが行った実験でも証明されている。ある研究では、従来の薬を使った人よりもマンジャロを使った人の方が、血糖値の改善が大きく、体重もより減っていた。しかも、週に一回注射するだけでよいため、毎日毎食薬を飲む必要がない。副作用は他の薬と同程度で、一定の安全性も確かめられている。今までの薬よりも効果が高く、試験では多くの人が10キロ以上減量(平均で15%)できたという結果が出たという。