竹中平蔵「東京を政府の直轄地に」東京一極集中への批判は間違っている

東京への一極集中が進む日本。しかし経済学者の竹中平蔵氏は、「東京はさらに強くならなければいけない」と話す。東京の現状や今後東京が取るべき選択肢について、竹中氏が考える。全3回中の第2回。
※本稿は竹中平蔵著「日本経済に追い風が吹く」(幻冬舎新書)から抜粋・再構成しています。
第1回:米不足解消につながる制度はもうできている!竹中平蔵「全国で活用している自治体はたった一つだけ」
第3回:日本が強くなるために必要な“行革”……竹中平蔵「小泉内閣が派遣を増やしたわけではない」
目次
世界で一番再開発が進んでいる東京
東京に風が吹いている。東京という経済拠点を、さらに強化するチャンスがあるということである。どういうことなのか説明しよう。
日本の人口は毎年約60万人のペースで減少している。一方で東京圏の人口は約10万人増えている。したがって他の地域は毎年50万人減っていることになる。「東京(圏)一極集中」といわれる現象である。
今、高層ビルの上から東京の街を眺めると、たくさんのクレーンが立ち並んでいることがわかる。これだけ多くのクレーンが立っている都市は、世界中どこを探してもない。東京では現在、約25の大型都市再開発プロジェクトが進んでいる。
例えば、日本橋や八重洲、浜松町で大規模開発が行われている。六本木、虎ノ門、赤坂、北青山と枚挙にいとまがない。渋谷では、駅周辺の道玄坂と宮益坂を歩道でつなぐ工事が進められようとしている。新宿西口では、小田急百貨店のビルの建て替えが進んでいる。
民間事業者が行った都市開発には、明確なコンセプトがある。例えば、三井不動産が開発して2007(平成19)年に開業した六本木の「東京ミッドタウン」は、もとは自衛隊基地だった。街のコンセプトは「JAPAN VALUE」。
東京が国際都市としての競争力を飛躍的に高めていくために、働・住・遊・憩が高度に融合し、世界中からさまざまな人や企業が集まり、新たな価値創造の舞台となる「経年優化の街づくり」を目指した。東京ミッドタウンのホームページにはそう記されている。
森ビルは、200を超える地権者を説得してまとまった土地をつくり、長い期間をかけて2003(平成15)年に「六本木ヒルズ」を完成させた。「文化都心」というコンセプトのもと、六本木ヒルズは、オフィスや住宅、商業施設、文化施設、ホテル、放送センターなど、さまざまな機能が複合した街になっている。
2023(令和5)年11月には、森ビルの「麻布台ヒルズ」が開業した。地権者は300を超え、30年の歳月をかけて開発を進めてきた。
麻布台ヒルズのコンセプトは、「緑に包まれ、人と人をつなぐ『広場』のような街“Modern Urban Village”」。広大な中央広場を中心に、オフィス、住宅、ホテル、インターナショナルスクール、商業施設、文化施設などの多様な都市機能が融合している。