第1回【持ち家 vs 賃貸】都内在住の30代男性、Aさんの悩み
「老後2000万円」という言葉がひとり歩きしているので「定年までに2000万円貯めなきゃ!」と思い込んでいる人もいるかもしれません。
しかし必要な老後資金は一律に考えるのではなく、人それぞれ異なる収入や資産の状況を踏まえて計画すべきです。
本連載では老後資金の計算をする上で気になるポイントを取り上げ、どのような差が出るのか検証していきます。
第1回は【持ち家 vs 賃貸】。人生のパートナーを見つけ、実家から独立して生活を始める場合、この2つのどちらにするか、悩む人が多いと思います。
目次
「人生100年時代」と「老後資金2000万円問題」
医療の進歩によって平均寿命は延び続けています。100歳を迎える人が珍しくなくなる時代は、もうそこまで来ているのかもしれません。
このような状況の中、金融庁の報告書が「長生きすることによって生活資金が足りなくなる可能性」について言及し「老後資金2000万円問題」として議論を呼びました。
その内容は「『平均的な年金収入を持つ夫婦』が『平均的な生活』をすると、65歳から95歳までの間の赤字の合計が2000万円になる」というものです。
報告書における平均的な生活費の根拠である総務省統計には、ローン返済負担のない人(持ち家の人)がかなりの割合で含まれており、そのため住居費の平均値が押し下げられているという特徴があります。
それでは賃貸住宅に住む人は2000万円を大きく上回る老後資金が必要なのでしょうか。持ち家に住んでいれば安心なのでしょうか。事例として働き盛りのAさんが作成した資金計画を見てみましょう。
持ち家か賃貸か、それが問題だ
Aさんは東証一部上場のメーカーに勤務する30歳の男性です。近々結婚を控えており、同い年の婚約者は専業主婦となることを希望しています。子供は2人もうける予定です。
Aさんの悩みは結婚後の住まいをどうするかです。
今まで同様、賃貸住宅を考えていますが、こんな思いもあります。「いくら家賃を払っても自分のものにならない賃貸よりも、分譲マンションを買ったほうが老後のためになるのでは?」
また「窮屈なマンションよりも、一戸建てでのびのびと子育てをしたい」とも考えています。
標準的なサラリーマンAさんのライフプラン
Aさんは生涯の収入や支出を一覧にして必要な資金を計算してみることにしました。前提となる条件は下表の通りです。