「半導体製造装置」は日本が圧倒的なシェア!TBS子会社だった半導体企業が世界首位を取るまで
本稿で紹介している個別銘柄:東京エレクトロン(8035)、KOKUSAI ELECTRIC(6525)
「半導体と言えばNVIDIA」「TSMC」と言った声も上がる中、経済ジャーナリストの田宮寛之氏は、「半導体をつくる機械である『半導体製造装置』や『半導体材料』、製造に使用される薬品などでは、日本企業が圧倒的に強い」と話す。今回はウエハーの上に回路をつくり込む「前工程」で有名な企業2社を紹介する。全3回中の3回目。
※本稿は田宮寛之著『日本人が知らない!! 世界シェアNo.1のすごい日本企業』(プレジデント社)から抜粋、再構成したものです。
第1回:日本には光り輝く企業がある!世界経済を支える「グローバル・ニッチ・トップ企業」とは
第2回:医療業界で「世界シェア30%」を誇る、“日本人が知らない”ニッチトップ2社を紹介!
目次
世界シェアトップ多数の半導体製造メーカー・東京エレクトロン(8035)
東京エレクトロン(8035)は世界トップクラスの半導体製造装置メーカーで、世界シェア1位や2位の装置を多数抱えている。
東京エレクトロンは半導体の製造工程のうち、前工程で使われる装置で高いシェアを占める。前工程では、シリコン製の薄板(ウエハー)の上に、酸化膜や窒化膜を形成させ(成膜)、フォトレジストと呼ばれる化学薬剤を塗布する。そこに、回路パターンを照射したあと(露光)、膜の不要な部分を削る(エッチング)。
東京エレクトロンの装置は成膜工程で使用される「拡散炉装置」「バッチ成膜装置」、フォトレジストの塗布に使用される「塗布・現像装置」(コータ・デベロッパ)、エッチングで使用される「ガスケミカルエッチング装置」で世界シェアトップを誇る。
特にコータ・デベロッパでは東京エレクトロンが圧倒的に強く、世界シェアは約90%におよぶ。
同社の技術力は台湾のTSMCから高く評価されていて、TSMCが主催する2024 TSMC Excellent Performance Awardでは、「Excellent Technology Collaboration」と「Production Support」の2部門で表彰された。
先端半導体の生産はTSMCの独り勝ち状態にあり、サプライヤーとしてTSMCに深く食い込んでいることは今後の大きな成長につながる。
「TBS子会社」から出発した東京エレクトロン
同社は電子機器商社として1963年に設立された。創業者は日商岩井(現・双日)出身の久保徳雄と小高敏夫の2人。
小高は日商岩井時代にエレクトロニクス機器の輸入業務に携わる一方で、TBS(現・TBSホールディングス)を担当していた。創業の際にTBSに出資を依頼したところ、当時、ベンチャー企業投資に熱心だったTBSの眼鏡にかなった。
TBSの子会社としてスタートし、1980年の東証2部上場を機に出資比率は徐々に低下したが、今でもTBSは東京エレクトロン株を3.2%保有する大株主だ(2025年3月末時点)。創業当時はTBSに間借りしており、その後いったん移転したが、1994年から赤坂のTBSビル内に本社を構えている。
設立当初は車載用ラジオや電卓といった電子機器を輸出し、半導体製造装置や電子部品を輸入する専門商社だった。設立初年度から黒字で順調なスタートを切ったが、1973年に石油ショックに襲われる。
そこで当時、売上の6割を占めていた車載用ラジオや電卓などの低採算品の輸出から撤退し、成長途上にあった半導体製造装置などの輸入に特化することにした。
ただ、同社は装置を売りっぱなしにはせず、装置の改良やメンテナンスなどのサポート業務にも注力。当時の米国製装置は故障しやすかったため、サポート業務は歓迎されて、装置の販売増加につながった。そうこうしているうちにサポートだけでなく、装置製造も自社でやろうという機運が高まっていった。
“商社的なビジネス”が強み
一方、日本企業の半導体生産量がどんどん増加していたため、米国の半導体製造装置メーカーは日本国内での装置製造を検討するようになっていた。
こうした流れを受けてイオン注入装置製造のテル・バリアン社、エッチング装置製造のテル・ラム社などとの合弁企業を設立。国内の半導体メーカーへ装置を製造販売した。
1985年のプラザ合意をきっかけにした円高不況で、合弁相手のビジネス意欲が低下すると合弁相手から株を買い取って完全子会社化。1986年には半導体製造装置の輸出を開始した。
その後、国内外で売上が伸びて、89年から91年までの3年連続で半導体製造装置メーカー世界トップに輝く。
創業からわずか25年で世界首位にトップに躍り出たのは、同社が商社で創業し、フットワークが軽いからだろう。製造業でスタートすると技術志向が高く、自前技術にこだわりすぎて新製品開発に時間がかかりすぎることがある。
しかし、同社は簡単に他社と提携するし、必要とあれば他社をM&Aすることもある。商社的なビジネス展開が同社の特徴だ。
同社の技術力は特許保有件数からもわかる。2024年3月末で2万3249件と世界トップなのだ。将来への種まきにも力を入れていて、2025年から2029年までの5年間で研究開発費1.5兆円、設備投資7000億円を予定し、1万人を採用するとしている。
成膜装置のシェア70%で世界首位・KOKUSAI ELECTRIC(6525)
KOKUSAI ELECTRIC(6525)は半導体製造工程の中の「成膜」に特化した半導体製造装置メーカーだ。成膜とは、半導体の基板となるシリコンウエハーの上に酸化膜・窒化膜を形成する技術を指す。
成膜装置は枚葉式とバッチ式の二つのタイプに分けられる。枚様式はウエハー1枚ごとに成膜するが、バッチ式は一度に数十枚から数百枚のウエハーに成膜する。バッチ式のほうが高効率なのは言うまでもない。
KOKUSAIは、数十枚以上のウエハーにまとめて成膜できるバッチ式の成膜装置に強みを持つ。中でもALD(原子層堆積法)という方式での世界シェアは約70%を誇る。
成膜装置全体では東京エレクトロンも強いが、ALD方式ではKOKUSAIのほうが圧倒的にシェアが高い。
同社が得意とするALD方式では、複数のガスを何度もウエハー上に供給して化学変化を起こすことで原子レベルの薄膜を何層も重ねていく。微細で複雑なデバイスに対して均一に成膜できる。
丁寧に膜を形成するので時間がかかるという欠点があるが、同時に数百枚を扱うことができるので作業効率は高い。同社の「バッチALD方式」の成膜装置は、世界の半導体製造になくてはならない存在だ。
また、膜のトリートメント装置では世界シェア2位を誇る。トリートメントとは、成膜後にプラズマや加熱により膜の改善を行う作業のこと。膜から不純物を取り出したり、粒子を安定させ強固にしたりする。同社の装置は複雑な構造のデバイスでもムラなく、均一にトリートメントができる。
中国政府が承認せず経営統合が破断
KOKUSAIのルーツは、1949年に電気通信機器および高周波応用機器の製造販売を目的に設立された国際電気だ。同社は1956年に「ゲルマニウム・シリコン単結晶引上装置」を受注し半導体製造装置事業に舵を切った。
2000年に国際電気・日立電子・八木アンテナが合併し、日立製作所傘下の日立国際電気が誕生した。日立グループの一員として半導体製造装置事業を展開したが、親会社である日立製作所は社会インフラ事業に傾注する一方で、事業ポートフォリオの見直しを実施。日立製作所は日立国際電気の全株式を米国投資ファンド・KKRへ売却した。
2018年に日立国際電気が成膜プロセスソリューション事業を会社分割し、これがKOKUSAI ELECTRICとなった。
その後、KOKUSAIは成膜だけでなく、成膜の前後の工程も取り込んだ装置の開発を目指し、半導体製造装置で世界首位の米国アプライド・マテリアルズとの経営統合を試みた。
2019年中にアプライドがKOKUSAIの全株式をKKRから22億ドルで取得する計画だったが、中国政府の承認を得ることができず経営統合は破談となってしまった。中国としては米国企業の市場シェア拡大を認めるわけにはいかなかった。また、KOKUSAIが米国企業傘下になれば、装置の購入がより困難になる懸念もあったと見られる。
破談以降は、上場を目的に努力を重ね、2023年10月に東証プライムへの上場を果たした。
売上3000億円を達成へ
上場によって取引先からの信頼が増すだけでなく、採用面でもメリットがある。上場時に金井史幸社長(当時)は、「当社は工場がある富山県ですら知名度が不十分。上場企業であれば学生に来てもらいやすくなる」とコメントした。
半導体の歴史は微細化の歴史だった。台湾TSMCや韓国サムスン電子が開発を進めている「3ナノ」や「2ナノ」といった回路線幅は、ウイルスよりはるかに小さく原子のレベルだ。
微細で複雑な半導体では非常に細く深い溝の中へきちんと膜を埋め込んでいかなければならない。KOUKSAIの「バッチALD方式」成膜装置の需要は高まるばかりだ。
同社は2025年3月期に2389億円だった売上高を中期的に3000~3300億円にする目標を掲げている。具体的な時期は明らかにしていないが、世界的な半導体需要の高まりによって遅くとも2029年3月期頃には目標を達成すると見られる。
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