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高市政権は食料品の消費税ゼロ化を実現できるのか…高市首相が密かに成功させた「革命」と、2年後の参院選で切ってくる最強の「解散カード」

(c) AdobeStock

 2月8日投票の衆院選で高市早苗首相が率いる自民党は歴史的大勝を果たした。連立与党を組む日本維新の会(36議席)と合わせ、高市内閣は衆院で352議席という巨大与党に支えられる。政権発足後、株価最高値を更新してきた今、「日本丸」はどこに向かっていくのか。

 話題のサスペンス小説『奪われる~スパイ天国・日本の敗戦~』(みんかぶマガジンノベルス)を著した作家の伊藤慶氏は「今後2年間のゴールデンタイムで、高市首相は様々な制度・慣習を見直していくだろう。改革が断行できれば、日本経済は力強く成長する」と指摘する。はたして、この国はどうなっていくのかー。

 みんかぶプレミアム特集「戦後・リベラルの終焉」第4回。

目次

高市首相は「革命」に成功した…複数年度予算を導入し責任ある積極財政を推進する

 まず、触れておきたいのは今回の衆院選結果は高市首相(自民党総裁)が「革命」に成功したということだ。それは衆院で3分の2以上の議席を占める巨大与党が誕生したという意味ではない。予算編成の抜本的見直しという“偉業”を掲げ、それに基づく財政政策に舵を切るという意味である。この点、なぜかマスメディアには高市首相による「大転換」が報じられていない。

 1月の通常国会冒頭で衆院を解散した高市氏は「大義なき解散」と批判された。だが、筆者から見れば、「これだけ大義のある解散はない」と映る。今後の高市政権による経済・財政政策に大きく影響してくるため、最初にこの点を整理しておきたい。

 高市首相は2月20日の施政方針演説で「長年続いてきた過度な緊縮志向、未来への投資不足の流れを断ち切る」と予算編成の方針を示し、「政府の予算の予見可能性を確保することが必要。政府の予算の作り方を根本から改める」と強調した。これは従来の内閣が採ってきた「補正予算ありき」の予算編成とは決別することを意味する。首相は「可能な限り当初予算で措置する。2年がかりの大改革だ」と訴えた。

 そして、高市首相は「危機管理投資」「成長投資」などについては、予算を多年度で別枠管理する仕組みを導入するという。この「複数年度予算」によって投資促進に伴う経済成長の果実を得ながら、自らが掲げる「責任ある積極財政」を大胆に進めるつもりなのだ。先端技術・成長分野の「官民投資ロードマップ」(工程表)は3月中に示すと表明した。

高市首相による「真の解散の大義」

 言うまでもないが、憲法86条は「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない」とある。それを補う財政法は11条で「国の会計年度は、毎年4月1日に始まり、翌年3月31日に終るものとする」とし、12条では「各会計年度における経費は、その年度の歳入を以て、これを支弁しなければならない」と規定する。つまり、一会計年度で予算を完結させることが基本となる。

 だが、首相が予算上で「多年度で別枠で管理する仕組みを導入する」と表明したことは、筆者からすれば「革命」に等しいインパクトがある。民間企業においては「中期経営計画」など将来ビジョンを見据えた複数年度の措置が当然に存在するものの、日本の国家経営においてはあまり“重視”されてこなかったからだ。財政法15条は、あらかじめ国会の議決を経て、次年度以降(原則5年以内)に効力が継続する債務を負担する国庫債務負担行為を認めている。会計年度独立の原則の例外として位置づけられ、複数年度の事業を計画的・安定的に執行できるものだ。高市首相は「危機管理投資」「成長投資」などの予算は多年度で別枠管理する仕組みを導入し、投資促進に伴う経済成長の実現を目指すという。

 会計年度に縛られず、補正予算の編成という「弥縫策(びほうさく)」を打ち出すのではなく、国家を計画的・安定的に運営していく。これこそが高市首相による「真の解散の大義」だったのではないか。そして、首相が圧倒的な民意を得た点は大きな意味がある。来年度の予算編成には間に合わなかったが、今年12月に閣議決定される予算案においては従来とは異なる変化が見られることだろう。

 馴染みがない方もいるだろうが、この方針転換は予算案の編成において非常に影響は大きい。まず財務省からすれば、予算要求の基準の設定根拠が難しくなるはずだ。一律に予算枠を増やすわけにもいかず、上限をどうするか悩ましいところだろう。予算要求する各省庁は従来ならばシーリングにハマらなかった部分は補正予算としてドサクサ紛れで盛り込んできたが、当初予算は査定がより厳格と言えるため「額ありき」の積み増しは却下されていく可能性が高くなる。すでに各省庁は補正予算の編成がないことを想定し、前倒しで予算編成の省内作業を始めている。

食料品の消費税ゼロ化は本当に実現するのか

 高市内閣が日本成長戦略として経済安全保障の観点から経済成長を促すとしている点も重要だ。これは内閣としての国家ビジョンに基づく予算が組まれることにつながる。政権が目指す国家像に合致したセクターには強力な後押しがなされ、複数年度コミットメントによって安定的・計画的な成長が見込める。具体的には、AI・半導体、量子、国土強靭化・海洋・マテリアル、造船、GX(グリーントランスフォーメーション)など17の戦略分野が軸となる。これらの17分野は「安泰」であり、そこに集中する企業・人材は波に乗る可能性は高い。逆に言えば、それ以外は「勝ち組・負け組」の差が激しくなるかもしれない。

 予算案編成の大転換の意義を踏まえた上で言うならば、衆院で3分の2以上の議席を獲得した巨大与党に支えられる高市内閣は、その気になれば基本的に何でもできる。首相が衆院選で打ち出した「食料品の消費税ゼロ化」はもちろん、所得税減税と給付を組み合わせる「給付付き税額控除」、補助金や租税特別措置の見直しといったものも首相が本気ならば実現可能だ。

 高市首相は、超党派の「国民会議」で食料品の消費税ゼロ化に向けた制度設計を行い、6月までに中間とりまとめというスケジュールを描く。今秋の臨時国会に関連法案を提出し、可決・成立を急ぐ構えだ。食料品の消費税ゼロ化のためには年間5兆円近い財源捻出が必要とされるが、特例公債には依存しないという。これは、市場で消えない「責任ある積極財政」に対する財政悪化懸念を打ち消していく狙いがあるのだろう。

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この記事の著者
伊藤慶

作家・小説家。経済、政治に精通。小説家としての処女作『奪われる: スパイ天国・日本の敗戦 (みんかぶマガジンノベルス)』がみんかぶマガジンにて連載中。

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