吉田豪、キングコング梶原を巡る「違和感」の答え合わせ。YouTubeで大成功しても、なぜ芸人仲間からリスペクトされないのか?
4月18日に、下北沢でイベント『キングコング梶原をプロデュースしたい5人の者たち』(出演者:三四郎、吉田豪、マッコイ斉藤、片山勝三、スーパー・ササダンゴ・マシン)が開催された。“プロデュースする側”で登壇したプロインタビュアー・吉田豪氏がそこで目撃したのは、キングコングというコンビが抱えるあまりに好対照な構造、そして、長年抱いてきた仮説の決定的な「答え合わせ」だった。世間を騒がせながらも一度話せば信頼を得る西野亮廣とは対照的に「なぜか一緒に仕事をした人間に悪く言われる」梶原雄太。その差は一体どこにあるのか。吉田氏は、梶原が抱えるリアルな不器用さに着目する。
みんかぶプレミアム連載「吉田豪の月イチ気になる話。」
目次
ホリエモン、ヒカル……「タモリは面白くない」という言説の共通項と世代間ギャップ
キングコング梶原さんがタモリさんに失礼なことを言って、いま炎上してますね! YouTuberのヒカルさんが「タモリは面白くない」って言い出したのが発端なんですけど、それってホリエモンが「松本人志はつまらない」「面白いのは小島よしおとハンバーグ師匠」って言ってたのと同じで、笑いの趣味は人それぞれだし、その人のいちばんいい時期を知ってるかどうかも大きいじゃないですか。
タモリさんはもともと放送禁止なネタを得意とするアングラ芸人で、『いいとも!』の司会に選ばれてからもその後もオフコースとか名古屋とかゴルフとかミュージカルとかをディスりまくるギラギラした芸風だったのが、『テレフォンショッキング』でいろんな人と会わざるを得なくなったことでだんだんキャラクターが変わっていったんですよね。毒素を意識的に消した合気道の達人みたいなスタイルになって、たまにボソッと面白いことを言うけど基本的には脱力した司会をして、コアな部分は深夜の『タモリ倶楽部』で出すようになった。ヒカルさんは『タモリ倶楽部』を見たことないみたいだし、いまのタモリさんは『ミュージックステーション』で力を抜いた司会をして、あとはNHKで街を歩いたりとか知的そうなことをしてるおじいちゃんでしかないだろうから、気持ちはまあわかるんですよ。
ただ、「タモリさんって人を落とさないじゃないですか。要はいじらないじゃないですか」ってヒカルさんが言ってたのは完全に間違ってて、あんなに共演者をいじりまくる人もいないんですよ。ただ、それをアイドルやアーティスト相手にはやりにくいから『Mステ』では自粛してるだけのことだと思います。そして、キングコングが『いいとも!』のレギュラーになったとき、タモリさんから最初にいじられたのが梶原さんだったらしいんですよ。梶原さんのこと結構気に入ってたみたいで何度もいじりにいったけど、いつも全然うまく返せなくて、しょうがないから西野さんをいじるようになった結果、タモリさんと西野さんの交友関係が始まった、と。そして西野さんはタモリさんのアドバイスで絵本を描くようになり、それがいまの『プペル』の映画にまでつながるわけなんですけど、問題は今回も梶原さんが全然いい返しをできてなかったことにあるんですよ。
「タモリ批判」への対処で露呈した、梶原雄太の誠実さと技術的誤答
梶原さん、最初はヒカルさんのタモリ批判を気まずそうな顔でやりすごそうとしていたけど、どうしても逃げ切れなくなった結果、自分もとんねるず派で、タモリさんをそんなにおもしろいとは思っていないことを正直に告白しちゃった。後日、キングコングのYouTubeで「あのときどうすれば良かったのか西野、教えてくれ!」とか言ってたけど、正解は「タモリさん、人のこといじるの大好きですよ! 僕の顔のことも『茶碗蒸しの木のスプーン』『ピスタチオみたい』とか言ってきて、あんなの全然面白くない!」とか、事実誤認を訂正した上で相手の論調に乗っかって、言い過ぎることでギャグにするとかだったとボクは思います。でもこれ、すごく梶原さんらしいと思ったんですよ。あの人は、真面目で細かいことを気にするタイプで、でもウジウジ考えた結果、常に間違った選択をする不器用な人なんだろうなって。今回も「ちゃんと誠実に正直な気持ちを言う」という間違った選択をしたってことなんだと思います。
ボクがそう思うようになったのは、先日やったばかりのイベントがきっかけです。元キングコングのマネージャーだったスラッシュパイルの片山勝三さんが主催した『キングコング梶原をプロデュースしたい5人の者たち』っていうイベントのゲストとして呼んでもらったんですけど、これがボクにとって最高の“答え合わせ”の場になっちゃったんですよ。ボクがずっと持論として言い続けてきたことが、現場で完璧に証明されたというか。
正直、キングコング西野さんって、言うことなすこと鼻につくじゃないですか。いちいち鼻につくことばかりなんですけど、でも実際に一緒に仕事をした人で西野さんのことを悪く言う人って実は全然いないんですよ。一方で、梶原さんはなぜか一緒に仕事をした芸人やスタッフから悪く言われることが非常に多い。以前、これも片山さん主催の『西野亮廣と西野を嫌いな4人の男たち』ってイベントのゲストに呼ばれたとき、控室でドランクドラゴン鈴木拓さんが「俺よく西野が嫌いってことでこうやって呼ばれるんだけど、実は西野のことは嫌いじゃなくて、本当に嫌いなのは梶原なんだよ」って言ってて、そしたら似たようなことを言ってる芸人さんが意外と多いことに気付いたんですよ。だから、「嫌われ芸の西野さんと、ガチ嫌われの梶原さん」ってネタにしてたら、梶原さんがYouTubeで「なんでちゃんと話したこともない奴がそんなこと言うんだ!」とかボクに怒ってたこともあって、それで今回のイベントに繋がったわけです。
そもそもボクが最初に西野さんと一対一でイベントをやったときに感心したのが、彼の見事な「アメリカンプロレス」ぶりだったんです。対立構図をはっきりさせて、派手なリアクションで最後列の客にまで感情を伝える。そしてボクがどれだけ厳しい技を仕掛けても、見事に受け切って思いっきり負け顔を見せてくれる。受け身の能力がすごいんですよね。会話していても「わかります」「ですよね」とか、常に“受け”の言葉を入れてくるから考え方が違っても平和に着地できる。その「プロの受け身術」に学ぶべきじゃないかって話を、ボクは今回のイベントで梶原さんに提案してきたんです。
イベントに吉本芸人の出演は「ゼロ」という非常事態
そもそも、今回のイベントは前提からすごかったんですよ。西野さんの場合は「西野を嫌いな5人の男たち」っていう企画が成立するけど、梶原さんの場合は本人が繊細すぎて、あくまで「プロデュースする」っていうオブラートに包んだ体裁にしないと怖くて企画できない。さらに同じ吉本芸人の出演はゼロで、芸人も三四郎だけ。あとは全部芸人以外のゲストだったのが、どうやらオファーしても断られまくったせいだってことがわかるわけです。司会の三四郎・相田さんが最初に渡された台本と出演者が全然違ったという(笑)。
ボクもイベントの直前に誘われたし、マッコイ斉藤さんにいたっては二日前にオファーがあったという異常事態で。最終的にはプロデューサーの片山さんまで演者としてステージに出てきた(笑)。どれだけの人に嫌われて、どれだけの人に断られてるんだって話なんですよ。控室でも司会の三四郎が「梶原さんと関係性がない」って不安がってたんですけど、他の出演者も全員関係性がなくて、だからこそ気軽にかなりキツい攻撃を梶原さんに入れていって、すごい面白くなったんです。
ところが梶原さんの反応が致命的にマズい。いや、思ったよりもちゃんと受け身も取ってくれてちゃんと噛み合ったんですけど、ボクらがキツめの攻撃を仕掛けて現場が盛り上がると、梶原さんが「ありがとう」って言っちゃうんですよね。ボク、何度も注意しましたからね。「感謝しちゃダメなんですよ。西野さんみたいに『最悪や!』とか芸として怒ってくれないと、プロレスが成立しないんです」って。そしたら本人も「それができないんよ」みたいになって、結局、最後の感想でもまた「ありがとう」と言ってて、「そこがダメなんですよ!」っていう(笑)。いじられたいのに誰もいじってくれない期間が長すぎて、キツい球を投げられるとつい嬉しくなっちゃうんでしょうね。