街録chとReHacQ高橋弘樹が「詐欺師の言い分を垂れ流している」と批判を受けたことについて。三谷三四郎が人殺しの言葉を配信する理由
地上波からNetflix、さらにはABEMA、U-NEXTまで――。コンテンツが乱立する今、人を真に熱狂させるのは「面白い」の先にある「ヤバい」番組だ。1000人以上の剥き出しの人生を記録し続けてきた『街録ch』ディレクター・三谷三四郎が、エッジの効いた一作を独自のバイアスで読み解く。
連載「今、ヤバい番組」第9回は、「箕輪厚介 VS 吉田豪」の“あの対談“について、『街録ch』三谷三四郎がアンサーを出す。
目次
対談で『街録ch』を批判され、プチ炎上したことについて
コトの発端は、吉田豪さんがReHacQ(リハック)の高橋さんについて「明らかに倫理観が欠けている気がして乗れない」と発言したことだった。そこからご自身の発信の価値観、ReHacQ、そしてついでに僕の『街録ch』に対する批判へと展開していった。
『SUPER DOMMUNE 2026/05/27 箕輪厚介 VS 吉田豪 サブカルHATASHIAI最終決戦!! & DOMMUNE Presents AMADEO』における2人の主張を要約すると、以下のようになる。
「政治などが絡むと倫理観が必要。完全にアウトな人だろうが、面白ければ取り扱おうという感覚が見えて、恋愛リアリティショーのように面白おかしい存在にしてしまっている」
箕輪さん「石丸さんのこと言ってる? 石丸さんの何がダメなの?」
豪さん「『街録ch』とかにも思うことですが、面白いものもある一方で、詐欺師の言い分をそのまま出しちゃうようなものもすごくあって、それは出す側が考えなきゃいけないライン。(中略)政治と宗教は面白がってはいけないというラインは守りたい。面白ければいい、を政治に持ち込むのは危険。(中略)面白主義で政治を扱っていたら僕は引く」

この発言を切り抜いた動画がX(旧Twitter)で拡散され、プチ炎上状態に。それに対してReHacQ高橋さんも生配信で「批判するならすべての動画を見てからすべきで、そうでないなら疑問に留めて対話すべきだ」と応酬。現在、ReHacQでの対談は豪さんから断られ、DOMMUNEであれば実現の可能性があるかもしれない、という状況だ。
『ドラえもん』を見て罪を犯す人だっているかもしれない
この一連の騒動について、当事者の一人として僕がどう思ったか。まず、「詐欺師の言い分もそのまま出しちゃうようなものがすごくある」と言われてしまうと、出演してくれている「詐欺師ではない人たち」に対して失礼になってしまう。「一定数いて」など、もう少し配慮のある言い方はできないものかな、とは正直思った。ただ、過去に詐欺をしていた人や、取材をしてから「この人は現在進行形なのかも?」と感じた人が複数いたことは事実なので、そこに対して反論するつもりはない。
僕の考えとしては、世の中には金持ちも貧乏人も、経営者も犯罪者も、善人も悪人も入り乱れて共存している。それを『街録ch』という場所で表現しているつもりだ。面白がっている部分はたしかにあるかもしれないが、決して彼らを「善人」として描いているわけではない。
受け手がどのような印象を受け、どんな行動に移し、人生にどのような影響を与えるのか。そこまで完全に配慮された映像がつくれたら理想的だが、実質不可能ではないかと思っている。
『ドラえもん』を見て罪を犯す人だっているかもしれない。逆に『殺し屋1』を見てボランティア活動に目覚める人だっているかもしれない。テレビでクリーンな印象を持たれていたタレントから性被害を受けた人も山ほどいるはずで、そのすべてがメディアのつくり手の責任なのだろうか?
CMにバンバン出ているタレントが、裏で非道徳なことをしていて「バレていないだけ」なら、その人間は詐欺師か? 権威ある人間が学歴や経歴の一部を改ざんしていれば、その人間は詐欺師か? 詐欺師かもしれない人間を出演させている僕や高橋さんは詐欺師か? 政治家引退直後に森喜朗氏にインタビューし、面白い人として描いた吉田豪さんは詐欺師か?
豪さんは配信で個人名を出していなかったが、おそらく以下の人物を指しているのではないかと推測する。
ReHacQに関して:石丸伸二さん
街録chに関して:アウトロー系YouTuberや、元フジテレビアナウンサーの長谷川豊さん(※他にもいるかもしれないが)
共に賛否が分かれる強烈な人間であることは間違いない。豪さんにとっては「完全にアウト」なのだろうが、僕や高橋さんにとっては「アウトではない」という認識の違いがある。両氏ともに逮捕歴はなく、石丸伸二氏に関しては選挙ポスター代の未払いをめぐる民事裁判での敗訴歴がある。
人を殺した人物にインタビューして動画にする意義
「モラルの線引き」。これは以前、僕が豪さんから『街録ch』でインタビューされた時に問われたテーマだ。正直、当時はそんなものは定まっておらず、「定まらないまま進んでしまっている」と回答した。その後、豪さんの「人を殺したことがある人はインタビューしない」という基準に影響を受け、僕自身も別のインタビューでそう答えた時期があった。

しかしその後、ヤクザ時代にどうしても許せないことを仲間にされ、射殺したという実体験を語ってくれた方の動画を配信した。この動画を見て不快に思う人はいたかもしれない。しかし、この動画を通じて「こんな理不尽な振る舞いをされると、人は殺意を抱いてしまうのか」「人を殺した後、こんなにも罪悪感に苛まれるのか」という事実が伝わる内容になったと確信しており、動画自体に大きな意義があったと思っている。人殺しは単純な悪人なのか?それをどう思うかは、見る人が決めればいい。
対談の中で豪さんは、オウム事件の時に麻原彰晃を面白がったテレビ局に言及し、「政治や宗教、陰謀論、人が死ぬものを面白がっちゃダメ」と語っていた。4年前のインタビュー動画でも、僕に対して同じことを伝えてくれている。
自分の中でも理解できる部分もあれば、そうではないと思う部分もある。オウム事件をバラエティが面白おかしく扱っていたことが、今思えばヤバいことだというのはもちろんわかる。しかし当時、彼らが地下鉄にサリンを撒くか、坂本弁護士一家殺害事件を起こすかなんて、誰にもわからなかったはずだ。バラエティ番組への出演と彼らの非人道的な犯罪に、明確な因果関係があるのかはなんとも言えない。
僕が『街録ch』で「宗教」を取り扱ってきて学んだことがある。それは、とりわけカルト宗教と呼ばれる新興宗教の「宗教2世」の人たちが、どれだけ苦しい思いをしてきたかということだ。安倍晋三元首相銃撃事件の犯人である山上被告も宗教2世だった。殺人という行為自体に肯定の余地はない。しかし、彼が背負わされた宗教2世というカルマ、その苦しみについて語るコンテンツがもっと世の中に溢れ、そこから這い上がった人のストーリーがもっとポピュラーな社会であったなら、彼もあのような行動をとらずに済んだかもしれない。
臭いものには蓋をするべきなのか?
カルト宗教2世の問題は、親のあり方を考える上でも重要なテーマだ。支配が強ければ強いほど、その期間が長ければ長いほど、心に負った傷や欠損は大人になってからも治ることはなく、むしろ肥大化して苦しみ続ける。
それは宗教2世に限らない。学歴信仰や家父長制など、親が持つ独自の価値観を強制され、子供の自尊心を奪うような教育を受けた人間は、自己否定を繰り返し、多くは大人になってから社会からドロップアウトしてしまう。だからこそ、この問題については発信する意義があると思っている。そこに線引きはしていない。
政治に関してはどうか?『街録ch』には政治家はそこまで多く出演していないので熱く語れる立場にはないが、ReHacQが一般層の政治への関心を喚起するムーブメントをつくった功績は本当にすごいことだと思う。
もちろん賛否はあるだろうし、豪さんが言う「モラル的にどうなんだ」という指摘もあるだろう。だが、メディアというものは逸脱しては修正し、新しいやり方を構築して新たな文化をつくっていくものだし、誰もやっていないことに挑戦している業界の先輩である高橋さんに関して僕は一定のリスペクトは持っている。その過渡期において「詐欺師を無尽蔵に出している」ともとれるような批判は、僕の感覚としてはかなり誇大に感じる。
おじさんたちよ、そうだ、野糞にいこう!
吉田豪さんは50代、ReHacQ高橋さんは40代、そして僕(街録ch三谷)はギリギリ30代。見てきた景色も、目線も、生きてきた環境もそれぞれ違う。完全にわかり合うことなどできないだろう。でも、別にどっちが正しいか決める必要もないし、それぞれの思想をぶつけ合う必要もないし、無理に理解しようとしなくてもいいと思っている。
「豚肉を食べない」と決めて生きている人の理由や背景を、歴史から学んで完璧に理解する必要があるだろうか?「ふーん、そうなんだ」でいいのではないか。
僕には今、5歳と2歳の娘がいる。昨今のネット空間で、おじさん同士がそれぞれのプライドを懸けて主義主張をぶつけ合っている姿を、彼女たちに見せたいとは思えない。未来の社会を担う子供たちのためにも、不毛な議論はやめて、腹に溜まっているものを一旦すべて絞り出して捨ててしまい、仲良くしたほうがいい。
だから僕は、吉田豪さんとReHacQ高橋さん、そして僕(もし空いてたら箕輪さんも)で一緒に、茨城の山奥にある「プープーランド」という野糞ができる山へ行きたいと思っている。そこで「全員、野糞するまで帰れま3」というクソ企画をやりたい。
カメラの前で野糞をするというのは、実はかなり精神的ハードルが高い。互いに応援し合わなければ、全員がウンコを出し切ることは絶対に不可能なのだ。そうやって手を取り合い、平和にこの日本を盛り上げていこう!という素晴らしい人生の分岐点になること間違いなし!!