1ドル160円へ…海外ファンドが一気に買い込んでいる「信じられないくらい安い」日本株一覧

急激に進む円安‥1ドル150~160円台突入は必至か

 さて、ここのところ、ドル円の為替レートが激しく動いています。特に最近では急激な円安が進み、1998年8月以来、24年ぶりに1ドル140円台を超えてきました。そもそも8月初めまで、急激な円高が進んでいたのに、一転して円安に転じたのです。下落幅は何と25円以上にも達しています。8月以前に投資していた海外投資家は為替差損だけで3割を超える損失となっているのです。

 直接の原因はインフレ抑制のために米国が金融引き締めに急激に舵を切ったことにあります。要するに日米の金利差が今日の円安を招いているのです。

 例えば、岸田政権または日銀が他の先進諸国に追随して、モーションだけでも円安抑制の目的で0.25%でも0.5%でも公定歩合の引き上げを英断できれば、金融引き締め路線に舵を切ったと判断され、円安はある程度止まるのでしょう。

 急激な円安に慌てたのか、最近でこそ松野官房長官が「時期が来れば適切な対応をとる」とやっと発言しましたが、市場もメディアも全くと言ってよいほどの無反応であり、これが現政権に対する期待感なのでしょう。所詮は経済音痴の素人集団の岸田政権下では最適なタイミングでの適切な対応など皆無なのだと思います。

 このまま策を講じず放置すれば、1ドル=150~160円くらいまで円安は加速すると考えられています。円安になればなるほど、物価高がさらに加速することは必至でしょう。そうなれば、ほとんどの原材料を輸入に頼っている日本の家計や企業は大打撃受け、消費は一層冷え込んで成長は鈍化し、スタグフレーションに陥ってしまう可能性も否定できません。

 そこで今回は、この円安状況の中で海外ファンドやアクティビスト達は対日投資についてどう考えているかについて述べたいと思います。

日本は世界でもまれな低インフレ国‥外から見れば株式は大バーゲンセール状態

 日々、テレビなどのメディアでは多くの消費者が物価高騰に悲鳴を上げているニュースが流れていますが、実は日本のインフレ率というのは先進諸国と比べても極めて低いことがわかります。

 2021年でも OECD加盟国のインフレ率の平均は 3.7%となっており、米国3.9%、ユーロ圏2.6%に対して日本は-0.2%とかなりの乖離があるのです。さらに2022年の見通しではOECD加盟国平均8.5% 、米国5.9%、ユーロ圏7.0%と深刻なインフレ率に対して日本は1.9%と他国のインフレ率に較べたら比較にならないほど低いのです。

 そう考えると、日本という国は比較的物価が安定している素晴らしい国なのです。世界中の先進諸国はこれまでも高いインフレ率に対峙してきているので、いかにタイミングを図って、迅速に対策を施行する重要性やその効果を十分に理解しているでしょうし、それだけタフなのだと思いますが、残念ながら日本はそうした免疫を持ち合わせていません。

 そう考えると、昨今の物価高など諸外国に比べれば大したことではないのです。こうした点も日本がグローバルスタンダードからかけ離れているといえるのです。

 もっと言えば、対日投資するファンドやアクティビストにしてみれば、2%に満たない低いインフレ率より、円安効果で3~4割以上のディスカウントが得られることに大いに魅力を感じているのです。

 さらに物価は上がれど、相変わらず株式だけはアンダーバリューの大バーゲンセール状態で放置されているので、比較的高止まりしている不動産よりも、そうした優良不動産を資産として大量に保有している会社の株式に投資するほうが高パフォーマンスを得られると彼らが考えるのは自然な流れだと思います。そして、これは特に中小型株いえることなのです。

日本の優良小型株が安値で放置されているトリックは

 それでは何故、日本で優良不動産資産をたくさん持っている中小型株の企業価値が安値で放置されているのでしょうか?

 それはほとんどの上場企業の掲げている中期経営計画などの業務計画に大きなトリックがあるからなのです。実は中期経営計画や期末計画を作成する際に目標とされるROE(自己資本利益率)やROIC(投下資本利益率)にはブックバリュー(簿価ベース)での自己資本が分母に使われていることが問題なのです。そもそもROEやROICというのは当該企業が投資家のお金や企業自体が使用している資産に対してどれだけ利益を上げているかを表す重要財務指標なのです。

 含み益の大きな賃貸不動産を保有する企業の場合、含み益を含まない実態よりも小さい自己資本を使うので、あたかも高いリターンを生み出していると投資家は錯覚を引き起こしているのです。

 そもそもROE(自己資本利益率)というのは企業サイドが投資家に対してどれだけの利益を上げているかを表す重要な財務指標なのです。ですが企業側が「簿価ベースでROE8%達成しました」と発表したところで実際は2~3%ということも珍しくありません。これでは企業の経営サイドは株主に対してアカウンタビリティ(説明責任)を十分に果たしているとは言えませんし、ともすれば株主を欺いているともいえましょう。

 このギャップこそがトリックであり、日本の経営者が眠りこけて真剣に稼ぐ力を追求せず、日本の上場株をいつまでもアンダーバリューにしている元凶に他ならないのです。

 最近でこそ、賃貸不動産のついては時価開示が適用されるようになりましたが、これも個別ではなく総額での開示なので、実態については不明な点が多く、不十分であるとの指摘があります。

静かに買い進み、時が来たらアクティビストに豹変する「沈黙の株主」たち

 しばらくは続くであろう強烈な円安を活かしつつ、10月からは多くのアクティビストが来季の株主総会を目指して続々上陸してくるのは必至です。

 そして彼らは優良不動産を多く保有しているリッチ企業を競うように買ってくると思われます。そうした企業には複数のアクティビストが群雄割拠で相乗りしてきて、来年の株主総会にはアクティビスト達が一斉にシェアホルダープロポーザル(株主提案)をしてくると思われます。

 核心をついた大量の株主提案を前に企業は理論構成、説明準備をしなくてはならなくなり、正念場になることはいうまでもありません。

 そうしたことを見越してか、一部の有名資産家が最近では「純投資」と断言して優良不動産資産を大量に保有しているアンダーバリューの銘柄だけを狙い撃ちしていきています。

 ちなみにこの「純投資」という名目で、静かに、静かに買い進んでいるこれらの投資家は、数年間かけてターゲット企業の株式を買い集め、「濫用的買収者」のレッテルを貼られないように用意周到に事を進めています。

 そして筆頭株主になり、最終的には当該企業のマジョリティを意のままにしようと考えているようなので、敢えて「沈黙の株主」に徹しているのです。沈黙していれば、いつまでもアンダーバリューの安価なままで株式が買い集められるからです。実は目的や要求が明確なアクティビストよりも何を目的にし、何を画策しているか不明な「沈黙の株主」の方が企業にとってはよほど脅威なのです。

いま、アクティビストたちが保有している銘柄は

 すでに「沈黙の株主」の保有銘柄は280銘柄以上、投資金額も総額で1兆円を優に超えているといわれています。そして着々と筆頭株主に名を連ね出してきています。

 彼らは今日もコツコツと静かに中小型株を買い増しています。今後、アクティビスト本格参入で中小型株の水準訂正が巻き起こると思われますが、その時こそ、彼らの壮大な仕掛けが姿を現します。多くの中小型株のマジョリティを意のままにして、多くの中小型株の支配者になりうると考えています。

 常に株式投資の勝者というのは、皆が気付いていないときに静かに着実に投資をしているものです。

 多くの投資家は気づいていませんが、すでにアクティビストの相乗りは始まっています。さらにアクティビストの相乗りにとどまらず「沈黙の株主」までもが相乗りしている企業もあります。そうした企業を我々は投資すべきであると考えます。

 来年の株主総会はこれまでにないような鋭い株主提案がアクティビストから次々と出されるような大変革が起きると確信しています。実はその布石は今年の株主総会からちらほらと見え始めていました。

 例えば、シンガポールのバサンタマスターファンドは、東洋水産が50%超の株式を保有しているユタカフーズに対して、長年放置され続けている約90億円の利益剰余金や東洋水産に貸付けている55億円の使途についての株主提案をしました。すると、20%近い賛成があったことに慌てたのか、ユタカフーズ側は本社工場内に99億円の新工場建設を即座に発表するなど、株主提案の賛成率やその効果についても急激に変わってきているのです。

 最後にアクティビストの相乗りや「沈黙の株主」が実際に買っている銘柄の一例を挙げておきたいと思います。

【アクティビスト相乗り銘柄】

  • ワキタ(東証プライム:8125)
  • イハラサイエンス(東証スタンダード:5999)
  • 東芝(東証プライム:6502)
  • オリエンタル白石(東証プライム:1786)  など

【沈黙の株主・アクティビスト相乗り銘柄】

  • 石井鐵工所(東証スタンダード:6362)
  • ジャフコ(東証プライム:8595)
  • 世紀東急(東証プライム:1898)  など

【沈黙の株主銘柄】

  • 岩崎通信機(東証プライム:6704)   など多数

【アクティビストが狙う親子上場解消銘柄】

  • ユタカフーズ(東証スタンダード:2806)
  • 東亜石油(東証スタンダード:5008)
  • 伊勢化学(東証スタンダード:4107)   など
この記事の著者
木戸次郎

1965年生まれ。明治大学政治経済学部卒。 地場証券会社を経て投資顧問会社の代表取締役。その後、ベトナム国営バオベト証券バオベトジャパン理事、ベトナム国防省タイソングループ顧問、外資系ファンドの戦略アドバイザーを経て現在はTMI総合法律事務所のマーケティング担当。著書にベストセラーとなった『修羅場のマネー哲学』(幻冬舎)『修羅場の鉄則』(幻冬舎)、『木戸次郎の大化け株』(宝島社)、『株はあと2年でやめなさい』(第二海援隊)、『常勝の株』(講談社)ほか多数。

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