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10年で一気に孤立した中国・習近平が、影で日本に”土下座”している本当の理由…頼りになるのは日本だけだった

 長老たちの意見が政治の将来を決める「北戴河会議」という不思議イベント。全く違うことを説くトップとナンバー2。他国に嫌われる大中華思想の尊大さ‥。みんかぶプレミアム特集「丸わかり中国経済」(全10回)の第5回は、西側先進国の価値観では理解できない大国・中国の政治構造と今後の課題を、中国政治のエキスパート・柯隆さんが分かりやすく解説する。

目次

党大会まで1カ月。習近平続投は堅いが、首相以下の人事が焦点に

  第20回共産党大会が近づいている。中国政治の行方を左右する北戴河会議もどうやら無事に終え、習近平・国家主席の3期目続投は確実になっている。だが、足もとの中国社会の現状を見るにつけ、再選されたとしても、決して盤石な政権運営が続けられるとは思えない。むしろ、私が思うのは、中国共産党内部に綻びが生じているのではないかということだ。

 と言うのも、今年に入って習近平体制下の中国経済は急減速している。世界中の非難を浴びた上海のロックダウン解除後も、「ゼロコロナ政策」は相変わらず続いていて、今度は四川省の首都、成都で上海のような厳格な行動規制が行われている。上海ロックダウンが中国のみならず、世界の経済に悪影響を与えたというのに全く懲りていないようだ。おそらく習近平は事態の深刻さを全く理解していない。と言うより、周囲が習近平に、中国社会の現状を正確に伝えていないのではないかと思う。

 先日、北戴河会議後に習近平と首相の李克強が中国の南北に分かれ、習が毛沢東を引き合いに出したのに対し、李は鄧小平の「改革・開放」路線の堅持を主張した。全く違う方向性の話をしたことで、世界中のメディアや政治学者たちの憶測を呼んだ。李は暗に習の路線を否定したのではないかということだ。

 ただ、これについては、李克強はナンバー2の首相で、国家主席が政治に重きを置くのに対して、首相は実務を手掛ける立場だという職務そのものの違いがある。実務を手掛ける立場としては、国民の生活に直結する経済を重視する姿勢を打ち出すことは当然で、これをもって両者が対立していると憶測をするのはいささか無理があるのではないだろうか。

 いずれにしても、李克強は来年の3月に首相の任期が切れるので、これから焦点になるのは、次の首相が誰になるかということだ。習近平の3期目続投は覆らないとしても、その人事次第では政権運営に変化が見られるかもしれない。私としては、そこに期待したいと思っている。

習近平続投阻止の可能性があるとしたら、どんな場合なのか

 いま、共産党大会へ向けて、各地でし烈な駆け引きが繰り広げられている。我々はしょせん野次馬だから、何とでも言えるが、中国の権力闘争は日本とは比較にならないくらい激しく、特に州レベルや省レベルの役人は、次の人事で上を目指そうとして、ライバルを追い落とすために必死で工作している。中には自殺に追い込まれることも珍しくない。

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この記事の著者
柯隆

柯隆(か・りゅう) 1963年中国・南京生まれ。88年来日、94年名古屋大学大学院、経済学修士号取得。長銀総研、富士通総研を経て、2008年東京財団政策研究所主席研究員に。中国政治、社会関連の著書多数。「『中国「強国復権」の条件』(慶応義塾大学出版会)が第13回樫山純三賞を受賞、近著は『ネオ・チャイナリスク研究』(2021年、慶応大学出版会)。日本と中国双方の政治、経済に精通したオピニオンに定評。

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