すみません、複利ってなんですか? 知らない日本人はこれから「野垂れ死にます」

「金融の知識を持たない日本人は、将来野垂れ死んでしまう」——。こう警鐘を鳴らすのは、自身のTwitterやnoteで投資の情報を発信しているレイチェルさんだ。これからの社会を生き抜くための手段として投資を推奨しているレイチェルさんが、投資を始める上で押さえておくべき三つの基本について語る――。 全4回中の1回目。
※本稿はレイチェル著『月3万円で3408万円の超安心資産をつくる! 毎月“5分”のシン・米国株投資術』(KADOKAWA)から抜粋・再編集したものです。
第2回:やっぱり「S&P500」か、それとも「オルカン」か…米株投資のレイチェルが出した答えとは
第3回:投資家レイチェル「金持ちになりたいなら『投機は必要』」…”嫌われ者”レバレッジの正しい使い方
第4回:日経電子版で朝5時に配信される”とある記事”…米株投資家なら「絶対読め」
国民全員に必要な金融リテラシー
2022年4月より、高校である授業が必修となりました。「金融経済」と「資産形成」です。なぜ、高校で金融リテラシーの授業が必修となったのか? それは、国としてその知識が高校生に必要だと認めたからにほかなりません。言い換えれば、日本国民全員にとって金融の知識が必要ということです。高校生が必要なぐらいですからね。
では、なぜ金融の知識が必要なのでしょうか? 金融の知識がないとどうなってしまうのでしょうか? はっきりと言います。日本の現状では、金融の知識がないと、野垂れ死んでしまいます。野垂れ死ぬという表現は少し過激ですが、実際に金融リテラシーがなくて困っている人が、大勢いるのが実情。ですから、政府としても、学校の授業に金融の知識を組み込むことによって、野垂れ死ぬ人、もとい、お金で困る人を一人でも減らそうとしているのです。
しかし、妙だと思いませんか? 昔は必要なかった金融リテラシーの知識が、今は政府が学校教育に取り入れるぐらい必要になっている。なぜ、昔はいらなかったものが、今では必要になったのか? その理由は、環境が変わったからです。世の中は激変しています。
たとえばiPhoneをはじめとするスマホが、日本で普及しだしたのは、だいたい2010年ごろから。私たちが当たり前のように使っているLINEの登場は2011年で、広く使われるようになったのは2013年ごろからです。以前はなかった産業なども生まれ、それまでは存在しなかった職業も次々と生まれました。ユーチューバーがいい例ですね。
たった10年ちょっとの間に、私たちの生活環境は大きく変化し、それに合わせて必要な知識もまた変わったのです。世の中の変化は速く、激しい! そんな中、お金を取り巻く環境も大きく変わっていきました。それにともない、金融リテラシーという知識が必要になっていったというわけです。
投資に欠かせない3つのキーワード
働いて稼ぐだけではお金が足りず、生活が苦しくなってしまう世の中になりました。そのような現況で、労働以外でお金を得る手法として私が推奨しているのが、「米国株投資」です。ただし、投資を始めていくうえで、絶対に欠かせないキーワードが3つあります。これらを知っておくだけで、投資で損をする確率を減らせるでしょう。
その1:「複利」
投資を語っているのに複利を知らなかったら、その人はモグリと言っていいでしょう。そのくらい、投資をするうえで欠かすことができない言葉です。まっ先にこの言葉を覚えましょう。では、複利とは? 複利とは「元本に上乗せされる利子も含めて、利子がつく」というもの。
たとえば、1万円に対して10%の年利がつく株があったとしましょう。1年後には1万1000円になっているわけです。利益は1000円です。さらにその翌年にはどうなっているでしょうか? また利益が1000円ついて、1万2000円になっている?それは間違いです。その翌年には、1万円ではなく、「1万1000円」に対して10%の年利がつくので、利益は1000円ではなくて「1100円」となり、1万2100円になっているわけです。
このように、上乗せされた利益を元本に含みながら伸びていく仕組みのことを、「複利」と言うのです。「そうはいっても、たった100円の差じゃないか」と思ったかもしれません。たしかにたった100円。短期での影響力は、大きくありません。
ですが、もっと長い目で見てください。複利というのは、長期的な投資で大きな力を発揮するもの。投資は、瞬間的に大きく伸びるものではありません。時間を味方につけて、長期で育てていくものなんです。これこそが、投資における一番大事な考え方! この点をはき違えてしまい、短期での利益を追求してしまうと、かえって損をするリスクを高めてしまいます。
その2:「投機」
「投資と投機って、一文字違いで似ているけど、どう違うの?」と考える人もいると思いますが、投機というのは、ギャンブルのようなものです。一方、投資とは、自分の資産を増やしていくための戦略や手法のこと。もしかしたら「投資はやってもいいけど、投機はしてはいけない」というのを聞いたことがあるかもしれませんね。
けれど私は「投機は行うべき」と考えています。とはいえ、なんでもかんでも投機すればいい、という意味ではありません。そうではなくて、「正しい投機をきちんと行うことによって、投機が効果的になり、資産が形成しやすい」ということです。
じゃあ、投機の正しい行い方って、一体どんなもの? それは、自分の全体の持ち分に対して、正しい割合で投機的な商品を持つこと、です。全部の資産を投機に回してしまうと、当たり前ですけど、単なるギャンブルになり、投資ではなくなってしまいます。ですが、自分の全資産の中で、投機的な商品を一部だけ持つことは、実は大きな武器になるんです。
その理由は、投機が資産を大きくさせるからです。最近、ボラティリティ(変動率)が大きい商品が増えてきています。ボラティリティとは、価格変動の度合いを示す言葉。不確実性の増す世の中にビジネスが連動するので、企業価値の変化も激しい世の中になりました。スタートアップベンチャーの企業価値は瞬く間に10倍、100倍になる可能性を秘めています。
一方でその逆も然り。数カ月で10分の1、100分の1になってもおかしくはありません。変化が激しい中であっても、どんな変化をしていくかがある程度わかれば、投機的な商品が成長するかどうかも、論理的にとらえることができます。その結果、大きな利益を得ることが可能なんです。もちろん、予測が外れてしまっても、全体としては軽いダメージにとどめるのが大事。
そのためにも、自分が保有する株式のうち、すべてを投機的なものにするのは絶対にやってはいけません。あくまで一部だけですよ。多くの人がやりたがらない投機を、あえてオススメするのは、変化が激しい世の中だからこそ、チャンスも大きいから。正しい使い方で、投機にもぜひ挑戦してみましょう。
その3:「分散」
投資において、「分散」には2つの意味があります。1つめは、銘柄や商品の分散。「卵は1つのカゴに盛るな」。これは、投資の世界で有名な格言です。持っている卵を1つのカゴに全部盛ってしまうと、そのカゴを落としたときに全部が割れてしまいますよね。けれど、いくつかのカゴに分けて盛っておけば、もしカゴを1つ落としても、他のカゴに盛られた卵は割れずにすむ、という意味です。
投資も同じで、1つの銘柄に集中してしまうと、その会社が倒産したり、何か不祥事を起こしたりすれば、株価は急落し、大きな損失を被ってしまいます。でも、いくつかの銘柄へ分散しておけば、仮にある会社の株価が急落しても、大きな影響を受けずにすむもの。分散することによって、リスクを下げることができるんです。
ただし、分散することは大事なんですが、リスク回避のためとはいえ、分散しすぎてもいけません。なぜなら、分散しすぎてしまうと、個別要因による株価上昇の影響も受けにくくなってしまうから。ある会社が有望な新製品を発表するなど、何か良いニュースが出て大きく株価が上昇しても、分散しすぎていると、受ける恩恵も少なくなってしまうのです。
続いて2つめは、時間の分散です。その前にまず、「ドルコスト平均法」について説明します。ドルコスト平均法……なんだかカッコいい名前ですね。これは、価格が変動する商品に対して、常に同じ金額を、定期的に購入する方法のこと。一言でいえば、「毎月○万円分を購入する」という買い方ですね。
日本語では「定額購入法」と呼ばれています。毎月給与収入を得ている会社員でしたら、最もやりやすい投資の手法といえます。なぜなら、毎月の給与からたとえば1万円を投資に回すというふうにしておけばいいですからね。ドルコスト平均法は、株を一度に一気にではなく、定期的に買うこと。これによって、時間が分散されます。すると、株価が大きく乱高下したとしても、リスクを軽減できるわけです。
具体的にわかりやすく解説しますね。たとえば、毎月1万円分の株を購入するとしましょう。株価が1000円なら、10株を購入することができますね。株価が2000円に上がれば5株、逆に500円に下がれば20株の購入となります。つまり、購入株数を決めておくのではなくて、購入金額を決めておくことによって、株価が安いときには多く買えて、株価が高いときには少なく買うことになります。株価の上下というのは、金融のプロでも予想が難しいもの。なので、時間の観点から分散をすることで、株価乱高下時のリスクを下げることができるというわけです。
