やっぱり「S&P500」か、それとも「オルカン」か…米株投資のレイチェルが出した答えとは

 投資信託を始めたくても知識がなく、「何から始めればいいのかわからない」と考える人も多い。そこで、自身のTwitterやnoteで投資の情報を発信しているレイチェルさんが、投資信託への向き合い方や最初に買うべき1本の考え方を伝授する――。全4回中の2回目。 

投資信託はリスクを抑えられる

 「投資信託」とは、いろいろなお菓子が詰め合わせで入っているバラエティパックのように、多種多様な企業の株をまとめて購入できる商品のことです。大きなメリットとして、これを1つ買っておけば、リスクを分散してくれるということがあります。個別株の場合、その1社の業績で株価が大きく変動するため、リスクが高いといわれています。たまたま自分が買っていた企業が不祥事を起こしてしまったら、株価は大幅下落。その影響を受け、資産が大きく減ってしまいます。 

 一方、投資信託は、あらかじめ複数に分散されている商品なので、そういったリスクを抑えることができます。分散具合は商品によって違いますが、少なくとも50社程度に分散していて、多ければ3000社ほどに分散している商品もあります。 

 たとえば、1000社に分散している投資信託であれば、その中の1社が何かしらの理由で大きく株価を下げても、残りの999社の株価に変動がないなら、こちらの受ける影響は大きくはなりません。私たちは、儲かることよりも、損をすることの方を大ごとにとらえてしまう性質をもっていますが、これなら安心ですね。 

 「待ってよ。ということは、1社の株価が急激に上がったとしても、大きな利益にならないんじゃ……?」。その通り! もし、その銘柄を個別株で保有していれば大きな利益を得ることができますが、投資信託で分散されていれば、その利益も少なくなってしまいます。リスクを下げる代わりに、期待されるリターンも下がるということです。リスクを抑えた投資信託だからこそ、先を見通しやすくなり、手堅く確実に資産を増やせるのです。 

積立金額 VS 積立期間、お得なのはどっち 

 とはいえ、実際にどれくらいお金持ちになれるのか、ここでひとつ例示をしてみますね。ここでは、楽天証券の「積立かんたんシミュレーション」を使っています。 

 30歳から60歳までの30年間、毎月2万5000円を積み立てたとしましょう(ケース1)。リターンを5%と仮定すると……。それだけで、約2000万円の資産を形成することができます。ちなみに、S&P500の2022年までの直近5年間のリターンは10%を超えています。 

 よく確かめていただきたいのは、積み立てていた元本よりも運用収益の方が大きいという点。2000万円の内訳を見てください。2万5000円を30年間積み立てた額は900万円となり、一方、運用で得た収益が1100万円。もしタンス預金をしていたら900万円にしかなっていないのに、運用したことによって、倍以上の2000万円になったのです。もちろん、あなたが老後にどんな生活を望むかにもよりますが、これで老後資金の目途はある程度立つといえるのではないでしょうか。 

 さて、問題です。「月々の積立金額を増やす」と「積立期間を延ばす」。どちらの方がより効果的に最終金額を増やせると思いますか? 両方のケースを見ていきます。 

 たとえば、金額を2万5000円から3万円に引き上げてみましょう(ケース2)。積立期間は30年、そしてリターンは5%と、先ほどと同じです。これでシミュレーションをすると、最終的な金額は2500万円近くになります(元本は1080万円)。先ほどのケース1と比べて、元本は180万円しか増やしていませんが、最終的な金額は400万円以上増えています。 

 次に、積立期間を延長してシミュレーションしてみましょう(ケース3)。金額は2万5000円のままで、積立期間を30年から5年間延長して、35年にします。リターンは同じく5%です。これでシミュレーションすると、最終的な金額は、なんと2800万円を超えます(元本は1050万円)。 

 ケース1と比較すると、元本は150万円しか増えていないのに、最終的な金額は760万円近く増えているのです。ケース2とケース3で比較をすると、元本は1080万円と1050万円で30万円の違いしかありませんが、期間をそのままで金額を上げたケース2は約2490万円で、金額をそのままに期間を延長したケース3は約2840万円と、300万円以上の差が開きました。 

 元本はほぼ同じなのに、どうしてこれだけの差が生まれたのでしょうか? これもやっぱり複利の力。複利が時間によって、強力に効いてきたのです。複利は時間をかければかけるほど威力を発揮する。このことがわかる良い例ですね。もしあなたが投資を始めようと考えているなら、早いに越したことはありません。一日でも早く始めましょう。投資期間を延ばすことが、最終的な資産形成にとって、大きなプラスになるのです 

 最後に積立金額を増やし、積立期間を延ばすケースをシミュレーションしてみます。金額を月3万円、積立期間を35年に延長します。リターンは同じく5%。これでシミュレーションをすると、最終的な金額は約3408万円となります。月々3万円で、3408万円の超安心資産がつくれるんです。 

「S&P500」か「全世界株式」か 

 投資信託は本当にたくさんの商品があって、ランキングサイトもいくつもあり、初心者は何を買ったらいいのか、いまいちわからないかもしれません。なのでここでは、私がオススメする2種類の投資信託について説明します。 

 それは、「S&P500」か「全世界株式」のどちらかに分散している投資信託です。S&P500に連動する投資信託商品であれば、アメリカの主要企業500社へ投資しているのと同じ効果を期待できるというわけです。そのため、成長性と安全性の両方が期待できます。一方の全世界株式とは、アメリカだけではなく、ヨーロッパや中南米、アジアなどにも分散している投資信託を指します。 

 では、この2種類において、多くの個人投資家から信頼があり、オススメされることが多いシリーズをご紹介します。それが、三菱UFJ国際投信が提供する「eMAXIS Slimシリーズ」です。具体的には2つあり、 

  • 「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」 
  • 「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」 

という商品名。 

 まず「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は、S&P500に連動する投資効果を目指して運用されています。つまり、S&P500と同じ動きを目指すということ。構成銘柄は、マイクロソフト、アップル、アマゾン、アルファベット(グーグルの親会社)、テスラと名だたる企業が並んでいます。 

 続いて「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」です。オール・カントリーを略して「オルカン」の愛称で親しまれています。こちらはアメリカだけでなく、全世界に分散されています。しかし、国別の比率では、アメリカが約59%と最も高い比率です。 

迷ったときの選び方 

 「2つが良いのはわかったけど、とくにどっちがいいの?」このようにお考えのあなた。ぜひ、ご自身で決定してみてください。とはいえ、「自分で考えてね」というだけでは、不親切なので、私なりの考えをお伝えします。私なら「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を選びます。なぜかというと、世界の中でもアメリカの経済成長が一番であり、アメリカ以外に分散しても結局アメリカ以上のパフォーマンスを残すことはできないからです。 

 「オルカン」は、アメリカプラスその他の国という構成になっています。なので、オルカンがこっちよりも高いパフォーマンスを残すとしたら、その他の国のパフォーマンスがアメリカに勝った場合のみです。けれど、世界を見渡してみてどうでしょう? アメリカを凌ぐ国は、私はしばらく現れないと感じます。こういった理由から、私なら「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を選択します。 

 ただし、これはあくまで私の考えです。結局、銘柄選択においては、「どれが正しいか?」よりも、「自分はどう考えるか?」の方が重要なのです。相場の動きは、誰にもわかりません。予想外の事態に見舞われたとき、最終的に心の拠り所になるのは自分自身しかないのです。見ず知らずの誰かがオススメしている銘柄を言われるがままに買い、それで損をしてしまったとしましょう。誰のせいにもできず、なかなか納得もできません。 

 やっぱり自分でしっかりと選択をしてこそ納得ができるというもの。もちろん、他の人の情報も大いに参考にした方がいいのですが、最終的には自分で考えて、決断をするというのが必要になってきます。世界情勢も株式相場も、プロであっても予想を外すことが多いのです。それであればなおのこと、自分で考えて、自分で選択をするしかありません。まずは、どちらの投資信託が自分にとっていいのかを選ぶところから、練習していきましょう。

この記事の著者
レイチェル

京都出身。新卒で総合コンサルティングファームで働く。その後、ITメガベンチャー企業に勤務。2023年4月より大学院生に。2021年にツイッターアカウントを開設し、米国株投資を中心に政治・経済からマネー、社会問題など幅広いテーマを独自の切り口で語り人気を博す。Twitterフォロワーは8万人(2022年8月現在)。1枚画像でアメリカのマーケット状況を伝える「レイチェルタイムズ」を平日毎日ツイートで配信し多くの支持を得ている。(X:@rachelcubmike)

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