このままでは破綻してしまう!「史上最悪の借金国」になってしまったアメリカの危険すぎる末路

大村大次郎
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 世界最大の軍事大国であり経済大国でもあるアメリカ。二度の世界大戦を機に、世界の覇権国家として君臨し続けているが、2022年度の財政赤字が1兆3770億ドルに上るなど、厳しい財政状況に直面している。経営コンサルタントの大村大次郎さんが「世界最悪の経済状況」と断言するアメリカの経済は、どのように形づくられてきたのか――。全4回中の2回目。 

※本稿は大村大次郎著『お金で読み解く地政学』(彩図社)から抜粋・編集したものです。 

第1回:サムスンはどうやって日本企業から技術を盗み取ったのか…土日にソウルで開かれた謎の「講義」
第3回:スリランカが陥った中国の罠…債務返済不能の港をチャイナが租借 習近平が進める静かなる侵略
第4回:ロシアへの経済制裁がうまくいかなかった理由…「年金は日本以上」プーチンが作り上げた盤石な経済

アメリカが「世界の銀行」に君臨するまで

 アメリカの強みは、何と言っても国土の広さと資源の豊富さです。アメリカは世界で3番目に広い国土を持っています。このアメリカの広い国土は農業にも適している上、金脈、油田、鉱山とあらゆる資源の宝庫でもあり、アメリカという国は、西洋の科学力と、大陸の豊饒(ほうじょう)さを併せ持っているというわけです。強国にならないはずはないのです。 

 アメリカが世界の経済大国にのし上がったのは、第一次世界大戦のときです。当時、ヨーロッパ諸国から見れば、まだ「新興国」という扱いを受けていたアメリカですが、第一次世界大戦後、この構図は大きく書き換えられました。

 戦争により生産力が下がったヨーロッパ諸国は、アメリカに大量の軍需物資を発注しました。戦地から遠く離れていたアメリカは、戦争被害をまったく受けなかったため、莫大な戦争特需を受けることになりました。しかも当時のアメリカは、世界最大の石油大国でもありました。 

 そしてアメリカは第二次世界大戦後に世界の超大国となります。アメリカは、第二次世界大戦でも国土が戦災を受けませんでした。そして、第一次世界大戦のときと同様に、連合国側に大量に軍需物資を売りつけ、世界の金の7割を保持するまでになったのです。 

 その一方で、世界大恐慌から第二次世界大戦に至る世界経済の混乱は、アメリカにとっても、痛い教訓となりました。世界大恐慌の後、イギリス、フランスがブロック経済を敷いたため、世界市場の大半が閉ざされました。そのためアメリカの大量の農産物や工業製品は行き場を失うことになったのです。それは、アメリカ経済を脅かすものでした。 

 そのためアメリカは戦後世界の経済覇権を握り、アメリカを中心とした自由貿易圏を世界中に広げようと動き出しました。第二次世界大戦の終盤の1944年、アメリカのブレトン・ウッズで戦後の国際経済の新しい枠組みがつくられる会議が開催されました。かの有名なブレトン・ウッズ会議です。 

 アメリカはこの会議において、「ドルを金と兌換させ、ドルを世界の基軸通貨とする」ということを強行に主張しました。アメリカは、保有している大量の金を背景に、ドルと金の兌換に応じる。ドルはその信用を背景にして、世界貿易の基軸通貨となる、ということです。 

 ドルを世界貿易の基軸通貨とするならば、世界中の国が、貿易に際してドルを調達しなければならず、必然的にアメリカは「世界の銀行」としての地位に君臨することになります。 

貿易収支赤字でもドルが買われる  

 アメリカは世界経済の覇権を握った途端に、大きな難題に直面することになります。東西冷戦が始まったのです。この東西冷戦は、アメリカに莫大な出費を強いるものでした。まず、対ソ連の軍備です。アメリカは、1950年代には国家予算の70%近くを軍事費が占めていた時期もあり、冷戦期間を通じて30%前後の軍事費を払い続けてきました。 

 そして東西冷戦は、アメリカに軍事費以外にも多大な出費を強いました。冷戦中、世界のどこかで紛争が起きたとき、紛争当事国は、西側か東側に支援を求めるのが常でした。アラブしかり、アフリカしかり、アジアしかり、南米しかりです。 

 アメリカやソ連としては、求められれば応じざるを得ません。もし支援をしなければ、相手陣営についてしまうかもしれないし、相手陣営が推す勢力が政権を握ってしまうかもしれないからです。世界各国を自由主義陣営に取り込み、陣営を強化するためには、どうしてもお金が必要だったのです。 

 そして途上国たちもしたたかでした。そういうアメリカとソ連の弱みにつけこみ、最大限に支援を引き出そうとしてきたのです。東西冷戦というと、アメリカとソ連の二大勢力が、力ずくで他の国々を抑え込んでいたというイメージがありますが、それは一面的なものです。その一方で、アメリカ、ソ連は世界中の国に気を使い、支援の手を差し伸べていたのです。もちろん、それは両国の経済を悪化させることになりました。 

 そしてアメリカ経済をさらに苦しめる現象が起きてきました。1950年代後半から西側のヨーロッパ諸国(特に西ドイツ)、日本が経済復興してきて、競争力のある工業製品をつくるようになったのです。アメリカの輸出力は大きく鈍り、1971年には貿易収支で赤字に転落することが確実になりました。 

 これは、アメリカの経済大国の地位を危うくするとともに、アメリカの「世界の銀行」としての地位も脅かすことになりました。アメリカの貿易赤字が膨らむと、ドルの信用が落ちていきます。そのため、ドルを保有する国々は、なるべく早く金に換えておこうとします。そうなると、ますますドルが金に交換されるようになり、アメリカの保有している金は、急激に減っていくことになります。 

 1960年代後半から急激な勢いで、アメリカから金が流出していきました。このまま流出が続けば、アメリカの金が枯渇してしまうということで、1971年、アメリカのニクソン大統領は、これ以上の貿易赤字を出さないために、輸入品に対して課徴金を課しました。それも功を奏せず、ついにその年、ニクソン大統領は、アメリカ・ドルと金の交換停止を発表しました。これがいわゆるニクソン・ショックです。 

 ニクソン・ショックにより、アメリカのドルと金の兌換は停止し、アメリカの信用は一気に落ちました。しかし、その一方で、アメリカは、新しい強大なマネー・パワーを獲得しました。というのも、ニクソン・ショックにより、アメリカは「ドルと金を交換しなければならない」という義務から解放されました。 

 しかも、ドルと金の交換を停止した後も、ドルは相変わらず世界経済の基軸通貨であり続けました。ドルが金と交換できなくなったからといって、すぐにそれに代わる通貨があるわけではなかったからです。 

 「ドルは金と交換できなくなったのに、世界の基軸通貨の地位を保持している」というこの事実が、アメリカに強大なマネー・パワーを与えることになったのです。世界中の国は、貿易の決済のためにドルを欲しがります。放っておいてもアメリカのドルは、世界中の国からどんどん買われるのです。 

 その結果、アメリカは慢性的な経常収支の赤字を記録するようになりました。1985年にはアメリカはついに債務国に転落しました。そして、東西冷戦が終わった後には、さらにその傾向に拍車がかかりました。 

世界最悪の借金国アメリカはいつか破綻する

 アメリカは、財政赤字、経常収支の赤字が続いているのに、アメリカ・ドルが基軸通貨であるために、経済大国であり続けているのです。が、アメリカの借金はあまりにも増えすぎて、さすがにヤバいという状態になってしまっているのです。普通の国であれば、とっくに財政破綻してしまうような状態なのです。 そういう国の通貨がいまだに基軸通貨であることが不思議なほどなのです。 

 アメリカ経済がどれほどヤバいのか、具体的な数字を挙げて説明しましょう。連邦政府の公的債務残高は現在約30兆ドルです。日本円にして約4050兆円です(1ドル135円で計算)。

 近年、ギリシャの財政危機が話題になりました。ギリシャが事実上の債務不履行に陥り、それがユーロ全体を揺るがすことになったのです。このときのギリシャの財政赤字の規模は、300億ドルにも満たないのです。なんと現在のアメリカ3%程度なのです。 

 しかもアメリカの場合は、これに対外債務があるのです。現在アメリカは、財政赤字とは別に対外債務が約53兆ドルです。日本円にして、7155兆円ほどです。またアメリカは、対外債権から対外債務を差し引いた対外純資産も約14兆ドルの赤字です。日本円にして1900兆円ほどです。つまり、アメリカは14兆ドル(約1900兆円)を外国から借りているということなのです。この14兆ドルの対外純債務というのは、世界最大です。 

 しかも、アメリカの国際収支(経常収支)はよくなる気配がありません。アメリカの2015年の輸出入額を見てみると、輸出額が1兆5000億ドルちょっとに対して、輸入額が2兆3000億ドル以上もあるのです。輸出額の1.5倍の輸入をしているのです。そしてアメリカはこの状態がかなり長く続いています。 

 こういう状態が続けば、いくら何でも国は破綻してしまうはずです。というより、今のアメリカは、いつ破綻してもおかしくない状態だと言えます。今のアメリカ以上に対外債務を増やした国は、いまだかつてありません。他の国は、アメリカほど借金はできないし、これほど借金が膨れ上がる前に、デフォルトを起こしているはずです。つまり、アメリカは世界最悪の借金国であり、史上最悪の借金国なのです。

大村大次郎著『お金で読み解く地政学』(彩図社)
大村大次郎

経営コンサルタント。1960年生まれ、大阪府出身。元国税調査官として10年間国税庁に勤務した後、経営コンサルタントに。現在はビジネス・税金関係の執筆も行なっている。フジテレビドラマ「マルサ!!」監修。著書に『脱税のススメ』シリーズ、『教養として知っておきたい33の経済理論』(彩図社)、『お金の流れでわかる世界の歴史』(KADOKAWA)等多数。

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