それでも「米国株」を選ぶべき理由…「アメリカにだけ投資しておけば、それで十分」
米国株の積立投資を勧める株式会社GCIアセット・マネジメント、エグゼクティブ・マネジャーの太田創さん。太田さんによると、米国株には日本株にはない “強さの秘密” があると言う。米国株がこれまで度重なる危機を乗り越え、今後も世界最強でいられる理由とは――。全4回中の3回目。
※本稿は太田創著『毎月3万円で3000万円の「プライベート年金」をつくる米国つみたて投資』(かんき出版)の一部を抜粋・再編集したものです。
第1回:「2000万円問題」の大嘘…ゆとりある老後のために必要な「本当の金額」と「正しい計算方法」
第2回:「積み立て投資」だけで100億円の富を築いた日本人男性が、ドイツで学んだ「貯財術」の極意
第4回:恐怖のドル円150円にインフレ地獄…逆風に打ち勝つ「米国積立投資、8つの鉄則」
全世界を席巻する “若い” 米国株
投資信託の中から、何を選ぶべきでしょうか。それは30年間、ひたすら積み立てていける「米国株式」を対象とした投資信託です。将来の成長性を考えたとき、私は日本株よりも米国株の方が、成長余地が大きいと考えています。理由はいろいろありますが、根本的なところで言うと、米国経済は日本経済に比べて「若い」ということです。
ここで言う「若い」とは、年数のことを指しているのではありません。社会を構成する人口の質です。日本の人口はすでに減少傾向をたどっていますが、米国は今も年1%ずつ増えています。米国の場合、長年にわたって移民を受け入れてきた国なので、それが有効に働いています。2015年の人口ピークを比較すると、日本は69歳で、米国は24歳です。
人口ピラミッドの予想でも、日本は後期高齢者の層が非常に分厚い一方、0歳から30代、40代の層が薄くなり、いわゆる「つぼ型」になっていますが、米国のそれは、20歳未満の人口がやや少ないものの、それでも理想形と言われる「つり鐘型」を何とか維持しています。この違いは非常に大きいです。
つまり、日本企業は外需頼みで伸びる余地はありますが、全体的に見れば、人口減少による経済力の低下によって、企業経営は非常に難しいかじ取りを求められるでしょう。株価は未来を織り込んで動きますから、このように将来見通しが厳しい国の株価は、頭を抑えつけられて、上昇しにくくなります。
「米国の強さ」のもうひとつは、間違いなく経済力です。これまた世界最強の軍事力、政治力に支えられ、米国は世界のリーダーとして比類なき強さを維持しているわけですが、その経済力の強さを象徴するのが、株式市場の規模です。世界の主要市場の株式時価総額の4割以上が米国株です。つまり米国の株式市場に投資すれば、世界の株式市場の半分に投資しているのと同じことになるのです。
米国を代表する株価インデックスに「ニューヨーク・ダウ工業株30種平均」があります。ニューヨーク・ダウの算出が始まったのは1896年のことですから、かれこれ120年以上の歴史を持つのですが、この間、ずっと過去最高値を更新し続けています。
たとえば1987年10月19日は「ブラックマンデー」と呼ばれる暴落で、ニューヨーク・ダウは前週末比で508ドルの下げとなりました。これは率にして22.6%の下落。この日の下落率は、過去の下げ率と比較しても、ダントツです。同様に、リーマン・ショック時の2008年10月15日がマイナス7.9%であり、1997年10月27日のアジア通貨危機がマイナス7.2%など、幾度となくニューヨーク・ダウは大きな下げに見舞われています。しかし、その度に米国の株価は力強く暴落前の株価水準を奪還し、さらに大きく上昇しました。
対して、日本の株式市場はどうだったのかというと、2013年以降はアベノミクスによって上昇へと転じましたが、それでも日経平均株価は、1989年12月につけた3万8915円(終値)を抜けないまま、現在に至っています。バブル崩壊から30年が経過しても日経平均株価は、バブルピーク時より下の水準にあるのです。
FRBが固執する “株価の維持”
どうして米国の株式市場はこうも強いのか? その理由の一つが、米国の中央銀行であるFRB(連邦準備理事会)や企業が、株価を維持させるのに必死だからです。米国という国は、資本主義の総本山であるのはもちろんですが、その資本主義の実体は「株式資本主義」です。つまり、企業経営にしても中央銀行の金融政策にしても、あるいは政治家までもが、株価を上げることを最終目標にしているのです。
その理由は、個人金融資産にあると私は考えます。2018年8月に発表された「資金循環の日米欧比較」によると、日本の個人金融資産に占める現預金の比率が52.5%であるのに対し、米国のそれは13.1%に過ぎません。また株式と投資信託を合わせた比率は、日本が14.9%であるのに対し、米国は48%。これはつまり、米国において株価の上昇は、米国に住んでいる人たちの「幸せ」に直結することを意味します。
だから、中央銀行も企業も、そして政治家も、株価の維持・上昇に必死にならざるを得ないのです。これは、実際に株式市場に参加している投資家にとっては、何よりの安心材料といえるでしょう。たとえ暴落しても、時間が経過すれば回復するという事実は、特に長期の資産形成を行う人たちにとって、株式を長く持ち続けるための強力な拠り所になります。
さらに言えば、金融マーケットのグローバル化が加速するなかで、米国株式市場は、その強力な存在感によって、他の国・地域の株式市場のけん引役になっています。つまり、米国の株価が上昇すると、米国の株式市場に投資している投資家が儲かり、より高いリスクが取れるようになるため、欧州や新興国、あるいは日本への投資を増やす動きが、このところ顕著に見られます。
結果、米国の株高が、他の国々の株高にも波及していきます。もちろん、米国の株価が下落すれば、それとは逆の現象が生じます。良しにつけ悪しきにつけ、米国の株価動向が世界の株式市場に強い影響を及ぼすようになったのです。そう考えると、敢えて世界中の株式市場に分散投資する意味が、どのくらいあるのかという疑問が浮かび上がってきます。
いまや米国株式市場の存在感が圧倒的な水準にまで高まり、そこで取引している投資家が、米国の株高、株安に応じて、グローバルにポートフォリオのリスク調整を行うようになりました。実体経済面でも、国境の壁がどんどん下がっています。
日米株式のリターンには8%もの差
米国の株式市場に投資した方がよいことを、数字で説明してみましょう。1989年12月から2018年12月までの各月に、米国株と日本株にそれぞれ投資して、1年間保有した場合の騰落(値上がりまたは値下がりの)率を計算してみます。つまり、1988年12月から1989年12月までの1年間、1989年1月から1990年1月までの1年間、1990年2月から1991年2月までの1年間…というように、運用期間を1カ月ずつずらしていき、「1年間の株価の騰落率」を計算します。
ここでは、米国株については円建てのS&P500指数、日本株については日経平均株価を参考指標として用いました。29年×12月+1カ月ということで、全部で349本分のサンプルがあります。その349本のうち、S&P500指数では240本がプラスリターンを出しています。一方、日経平均株価は、349本のサンプル中176本がプラスリターンでした。
次に、S&P500と日経平均の各月を基準とした過去1年間の騰落率を平均した数字を見ると、 S&P500指数指数がプラス9.5%で、日経平均株価がプラス1.5%でした。ちなみにS&P500指数指数は円換算した数字なので、この間に生じた円高、円安も込みにしたリターンです。この間には1ドル=70円台を付ける急激な円高局面がありました。そうであるにもかかわらず、円ベースで9.5%という高いプラスのリターンを平均であげているのが、米国株式の凄いところです。
確かにリーマン・ショックの時のように、とんでもなくマイナスのリターンになることはあっても、それをしっかり取り戻しているので、このようなリターンが実現するのです。その根拠は、前述したように株式資本主義の考え方が、一企業経営者から政治家に至るまで徹底的に認識されていることと、新しい企業がグローバルに活躍し、人口も増え続けているという米国経済のファンダメンタルズ(基礎力)の強さによるものです。
30年間の積立で3000万円を達成させる目標を掲げれば、年平均1.5%のリターンでは、月々の積立金額が6万5614円必要であるのに対して、年平均9.5%で運用出来れば、月々の積立金額は何と1万5252円で済んでしまいます(税金や各手数料を除く)。もちろん、これは過去の実績による数字であり、将来を保証したものではありませんが、米国経済が極端に劣化しない限り、ここから大きく外れるような数字にはならないと考えています。
いかがですか。何に投資すればよいのか、段々と見えてきたのではないでしょうか。目標を達成するための投資先は、米国株以外に考えられないのです。