「積み立て投資」だけで100億円の富を築いた日本人男性が、ドイツで学んだ「貯財術」の極意

太田創

 東京農林学校(現東京大学農学部)の林学者、本多静六氏は1800年代後半〜1900年代前半にかけて、株式投資によって100億円もの富を築き上げたことでも知られている。株式会社GCIアセット・マネジメント、エグゼクティブ・マネジャーの太田創さんは、本多氏の成功の裏側には、時代背景の異なる現代でも通じる「投資の基本」の教えが込められていると話す――。全4回中の2回目。 

※本稿は太田創著「毎月3万円で3000万円の『プライベート年金』をつくる米国つみたて投資」(かんき出版)の一部を抜粋・再編集したものです。 

第1回:「2000万円問題」の大嘘…ゆとりある老後のために必要な「本当の金額」と「正しい計算方法」
第3回:それでも「米国株」を選ぶべき理由…「アメリカにだけ投資しておけば、それで十分」
第4回:恐怖のドル円150円にインフレ地獄…逆風に打ち勝つ「米国積立投資、8つの鉄則」

積み立て投資は「長く」「自動に」がポイント 

 積み立て投資では、平均買付単価を下げる「ドルコスト平均効果」を高めていくことを目指しますが、効果を高めるには前提条件があります。できるだけ長く続けることです。始めてから2、3年でやめてしまうと、ほとんど効果が得られません。それこそ10年、20年単位で続けるからこそ、ドルコスト平均効果を最大限に享受できるのです。したがって、長く積み立てられるような「仕組み」をつくることが肝心です。 

 まず、積み立ては取引口座からの自動引き落としが可能な商品にすること。もちろん、自分で毎月買い付けの注文を出していけば、それも積み立て投資になりますが、これだと「今月は買い忘れた」とか「ちょっと財布の中身が厳しいから、来月まとめた資金で買い付けよう」「価格が上がっているから明日にしよう」などしているうちに、いつの間にか積み立てなくなります。 

 自分で注文を出して毎月買い付ける方法は、よほど意思が強くなければ無理であると考えましょう。だからこそ、口座からの自動引き落としがよいのです。これなら半強制的に自分の口座から積立資金が引き落とされますから、ストレスなく積み立てを続けることができます。 

 米国株式に投資しても、確かにお金が減ることはあります。たとえば2008年に起こったリーマン・ショックの時には、持っている銘柄によっては、あっという間に半分、3分の1くらいになったケースもありました。ニューヨーク・ダウも、2008年5月時点では1万2500ドル近辺で推移していましたが、リーマン・ブラザーズの破たん後、2009年3月時点では、6500ドル近辺まで下がりました。10カ月間で約半値になったということです。 

 これはもう仕方がありません。株式のような価格変動商品に投資する場合、自分の買値を下回るような下げがしばしば起こることは、織り込んでおく必要があります。ただ、リスクをゼロにすることができないまでも、コントロールすることは可能です。それは「長期積み立て投資」を実践することによって実現します。長期積み立て投資とは、それこそ20年、30年という長い時間をかけて資産を積み上げていくことを意味します。米国株式は長期間、保有することによって、収益がプラスになる可能性が高まります。 

 それは、ニューヨーク・ダウが、算出を開始して100年以上が経過しているにもかかわらず、幾度となく調整局面を経て、いまだに過去最高値を更新し続けていることからも、お分かりいただけるでしょう。今後も、米国経済は長期的に成長するという前提条件が崩れない限り、長期的なスタンスで米国株式市場に投資すれば、報われる可能性が高いと考えられます。 

 毎月一定金額で同じものを買い続ける「定時定額購入」を行えば、価格が下落した時は数量を多く、価格が上昇した時は数量を少なく買うことになるため、買付単価を平均化できます。これによって、価格変動リスクをある程度、コントロールできます。投資には、確かに元本を割ってしまうリスクがつきものですが、少しずつ、長期にわたってコツコツ積み立てていけば案外、大けがをせずに済みます。 

「4分の1貯蓄」で巨額の富を築いた本多静六 

 本多静六という人物をご存じでしょうか。1866年生まれで、慶応、明治、大正、昭和という4つの時代を生きた方ですが、「公園の父」と言われています。日比谷公園の設計は彼の手によるものです。職業は大学教授なのですが、その生涯を通じて100億円という巨額の富を築き上げました。どうやら、ドイツ留学時代に師事した先生から、蓄財の方法を学んだようです。方法は実にシンプルで、その根底にあったのが「つみたて」なのです。 

 彼は稼ぎの4分の1を貯蓄に回しました。もし純粋な手取りが20万円だったら、5万円を貯蓄する計算です。そして、貯まったお金を、景気が悪くなって株価や不動産価格が安くなった時、思い切ってそれらに投資することを、長期にわたって繰り返したのです。当時の日本は、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで欧米列強と肩を並べ、成長する新興国でしたから、不動産にしても株式にしても、かなり高いリターンが得られたのだと思います。 

 「当時だから100億円もの個人資産を築くことができたのだ」と言われれば、それはその通りなのですが、ものは考えようです。日本の成長が今後期待できないと思うなら、他の成長する国や地域の株式市場に投資すればよいのです。長期の積み立て投資と、長期で成長が期待できる投資対象を選択できれば、100億円は無理だとしても、人生を全うするまで経済的に困らない程度の資産は築けるはず。 

 実は、本気で積み立て投資に取り組めば、3000万円なんて単なる通過点であって、1億円も夢ではないのです。たとえば前出の本多静六のように、収入の4分の1を貯蓄に回したとしましょう。20代のうちは手取り20万円程度で厳しいかもしれませんが、30代、40代、50代にもなれば、徐々に手取り収入が増えていきます。 

 65歳になるまでの生涯収入を2億2100万円だとすると、40年が480カ月なので、単純に割ると平均月収は46万416円になります。仮に46万円にしておきましょう。平均リターンは年5%と想定し、40年間その4分の1、つまり11万5000円を毎月積み立て投資に回したら、どうなるでしょうか。 

 これが驚くなかれ、1億7622万円にもなってしまうのです。ちなみに1億円を目標額に設定して、年平均リターンを5%にした場合、月々の積立額はいくらになるのかを計算すると、6万5259円になります。かなり現実的な数字だと思いませんか。 

 ただ、それを実現するためには、2つの点に留意する必要があります。第一の留意点は、積立額。25歳から積み立て投資をするとして、最初は収入が少なくて厳しいから毎月2万円の積み立てにするのがよいでしょう。大事なのは、ずっと2万円で通すのではなく、収入が増えたら、それに連動させて積立の額も増やしていくこと。 

 もうひとつの留意点は運用利回りです。何で積み立て投資をするかによって、「40年で1億円」を達成させる確率が変わっていきます。少なくとも、定期預金では「絶対に不可能」であることはご理解ください。 

「お金がないから投資できない」は大きな誤り 

 「投資を始めたいけれども、手元に余裕資金がないから、ある程度お金が貯まったら始めます」このようにおっしゃる方は、結構大勢いらっしゃいます。でも、そのようにおっしゃる方は、きっと100万円、200万円のお金ができたとしても、結局のところ投資をせずに終わるようです。「手元に余裕資金がない」というのは、本当は投資をしたくないのが本音だったりするからです。 

 むしろ、私はお金がない人ほど投資をするべきだと考えます。年齢が若いうちはなおさらです。月1万円でも良いので、とにかく何とかしてそのお金を捻出して、投資に回すべきです。「1万円で何ができるというんだ?」と思っている人もいるでしょう。大丈夫です。1万円もあれば十分、投資できます。そのための積み立て投資なのです。 

 1万円をどうやって捻出するか。恐らく多くの人は、毎月のお給料から衣食住に必要な生活費、電気・ガス料金、携帯電話などの通信費、自分のお小遣い、ローンやクレジット料金の返済、といったさまざまな支払いを行い、残ったお金で積み立て投資をしようと考えていませんか。これ、大きな間違いです。 

 この発想だと、いつまで経っても積み立てることができません。大事なことは、まず月々の積立額を決め、それは最初からなかったものとして、月々の生活設計を立てることです。たとえば、給料が手取り15万円で、毎月2万円を積み立てようとするならば、まず15万円から2万円を差し引き、残った13万円で生活するのです。 

 米国株式を積み立てていく上では、iDeCoや企業型確定拠出年金を真っ先にお勧めしますが、それは両方とも半強制的に月々の掛け金が積み上がっていくからです。人は不思議なもので、最初からないものとしておけば、大体において、残ったお金で生活するものなのです。その意味では、積み立てるお金を給料から自動的に差し引いてしまうのが、着実に資金を積み立てられる一番の方法だと思います。

太田創著「毎月3万円で3000万円の『プライベート年金』をつくる米国つみたて投資」
この記事の著者
太田創

株式会社GCIアセット・マネジメント エグゼクティブ・マネジャー。関西学院大学卒。1985年、三菱銀行(当時)入行。1988年より約10年間、英国およびブラジルで資金為替・デリバティブ等の運用、投資信託の管理業務に携わる。その後、2000年から2015年までシティグループ(米)、UBS(スイス)、フィデリティ(米)において投資信託のマーケティング・商品企画を統括。2015年にGCIアセット・マネジメントに移籍。投資信託をはじめとする金融商品のほか、海外での資金ディーラーとしての豊富な経験を活かし、市況や金融市場に関する幅広い著述、寄稿、講演を数多く手がける。著書に『ETF投資入門』(日経BP社)等。

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