なぜ10代で投資を始めた天才バフェットが60代でやっと資産を爆上げできたのか
「勝ち組投資家は『自分が何を知っているか』より、『自分の行動をどう制御(コントロール)できているか』に目を向けている」と語るのは、脳科学者で投資系YouTuberの上岡正明さん。つい欲望のままに投資をしてしまう、暴落の恐怖に打ち勝てない……そんな人たちがどんなに相場が変わっても勝ち続ける投資家になれる、リスクとリターンのメンタルトレーニングの方法とは――。(第4回/全4回)
※本記事は、上岡正明著『株メンタル: トップ3%投資家の最強ソリューション』(東洋経済新報社)より抜粋・再編集したものです。
第1回:どん底「豆腐メンタル」な私が強い心を手に入れて、資産5億以上稼ぐまで
第2回:株セミナーにくる一流投資家と三流投資家の違い…残念すぎる勘違いとは
第3回:資産5億男の「損切り上手」になれる心のコントロール方法…どんな暴落でも焦らない!
プロの機関投資家にカモられず、個人投資家が勝つ唯一の手段
株が上がり始めると、連日メディアが「バブル後最高値を更新か」「投資をしない人は時代錯誤」などと騒ぎ始めます。あるいは、証券会社の営業マンから「今、投資しないと老後に後悔しますよ」と持たざるリスクを伝えられます。
これらの情報に触れると、「今、株を持たなかったら、他の人と同じようなメリットを享受できない」と捉えてしまうのです。そうした大衆心理に飲み込まれると、もう少し慎重に待って買おうと考えていた投資家でも、あっという間に資金ギリギリまで株を購入してしまいます。
しかし、たいていの場合、そうしたときが相場の山であることが多く、結果、下落と同時に大きく損をしてしまう投資家が続出してしまうのです。
メリット拡張バイアスは、他人に同調してしまうバイアスの1つでもあります。本来であれば個人投資家というのは、機関投資家やニュースメディアと歩調を合わせず、あなた自身の投資タイミングで売買を決めたほうが有利に働きます。
大衆心理に合わせて株を売買しているうちは、株式投資の勝率を上げることは難しいわけです。
一方で、機関投資家というのは、資産家や各国からお金を預かって運用しています。仕事ですので、休むことはできません。日本の一部の保険会社や年金の運用などもそうです。1年間休みましたと言ってしまっては、ベンチマークの比較で見劣りしてしまい、他社に乗り換えられてしまいます。
ただ、個人投資家の場合は関係ありません。そうしたプロのトレーダーの必死さを尻目に、「休むも相場」「下がるまで待機する」という選択が可能なわけです。にもかかわらず、相場につい熱狂してしまい、大衆の動きに追随して損をするのはいつも個人投資家のほうです。
結果として、プロの機関投資家にうまく売り抜かれるなど、行動心理を利用されているわけです。
焦りは禁物。人々が熱狂する最中、冷静になれば一人勝ちできる
つまり本来であれば、他人が儲かっていようが損していようが関係なく、自分が儲かるシナリオができているかが大事なはずです。
個人投資家だからこそ焦らず、自分のタイミングまで相場を待てばいいのです。乗り遅れたなら、後から無理して買い急ぐ必要なんてありません。出遅れたことを素直に認めるべきです。
ただ、こうして冷静に文章として読むと誰もがうんうんと理解できるのですが、いざ「持たざるリスク」と言われると、「儲け損ねてたまるものか!」とつい走り出してしまいます。結局、この繰り返しなんですね、相場というのは。
この行動経済学で特に強調されるのが、「人間が合理性の塊で、常に効率の良いほうを選択するのは誤りだ」ということです。
たしかに、人間というのは、さまざまな感情に支配されています。迷い、葛藤、恐怖、欲望、過信といったメンタルの要素が、非合理的な行動へと誘惑するわけです。
投資家としては、心理的弱点はコインの裏表と同じで、恐ろしさ半分、大きなチャンスにも見えます。
多くの人が迷い、冷静さを失った行動をしている。それを熟知して、先手先手で先回りすることができれば、自分だけが大きく儲かる可能性が高まるわけです。お人好しは株式投資で勝つことはできません。投資とは、本来ビジネスであるべきです。趣味や娯楽ではないのです。
- 人々が恐怖に支配されているときにチャンスをうかがう
- 人々が熱狂に包まれているときに冷静になる
- 人々が判断できないときに、論理的思考で選択肢を増やす
あなたが株メンタルの罠を武器として手に入れたなら、これらの知識は必ず強みになるはずです。
人間本来が持つ心理的弱点を突いて、賢く利益を積み上げた投資家だけが、多くの利益を手に入れることができるのです。では、行動経済学や行動ファイナンスの知見を活かして、勝てる投資家に成長するにはどうすればいいのか。
情報に惑わされない。相場の荒波にもまれて稼ぐ投資家こそがプロ
投資を始めるにあたって、多くの人は自分には投資の知識がないので、まずプロの投資家やテクニカルアナリストにアドバイスを求めようと考えます。しかし、その考えそのものが大きな誤りです。
投資のアドバイスのプロ、アナリストをしている方々は、営業や分析のプロなのであって、投資のプロではないからです。
投資で勝とうと思ったら、まず、自分自身が投資のプロにならなければいけません。投資歴23年間の多くの失敗から、これは確実に言えることです。つまり、「自分に目を向ける」という意味です。
しかし、ほとんどの個人投資家はそのことを知りません。その結果、楽に儲かる方法を探したり、投資の助言を行うプロのアドバイザーに頼ったりしてしまいます。
それはなぜなのか? 1つ言えることは、あなたの知性や判断力の問題ではありません。ここまで紹介してきたとおり、投資家の心理は行動経済学で解き明かされています。こうした専門家を信頼して、アドバイスを求めてしまうのも「権威付け効果」に騙(だま)されやすい、という人の心理を表しているわけです。
たとえば、証券会社や銀行の窓口にいる営業マンは、みな名刺に「ファイナンシャル・アドバイザー」と書かれています。
そして、何も知らない個人投資家は名刺を見て、この人は自分とは違うレベルの人なんだ、投資のプロなんだ、と勘違いしてしまいます。ただ、冷静に考えれば相談窓口のカウンターにいる人より、長年相場の荒波にもまれながら稼いでいる、経験豊富な投資家こそがプロのはずです。
天才投資家・バフェットの資産が急増したのは60歳を越えてから
リスクと同じように、想定する勝率も人それぞれです。私の場合は、10回戦って3回負ける、ということを繰り返しています。残りの7回の利益を着実に伸ばすこと、さらに配当を得てそれを再投資することで、複利でどんどん資産が増えていくようにしているわけです。
複利で増えていくといっても、最初の増え方はとても地味なものです。しかし、時間がたつにつれて、その効果は急速に大きくなっていきます。
実際、ウォーレン・バフェットも複利の効果を活用することで、世界有数の億万長者になりました。下記の図は、バフェットの資産の伸びを表したグラフです。一目見て、その資産の動きに驚くことでしょう。
彼は10代から投資を始めていますが、資産が急激に増えて世界有数のビリオネアとしてその名をとどろかすようになったのは60歳を超えてからのことです。それまでは、地道に複利効果によって資産を伸ばしていたことがわかります。
資産は一晩で築けるものではなく、時間と忍耐が必要だというわけです。逆を言えば、忍耐力のない人が投資に参加すると、悲惨な結果が待っています。そういった投資家は感情的な投資判断をしがちなため、上昇相場で高値を掴まされ、下落相場で手放してしまいます。
そして、痛い目に遭った後で、投資なんて二度とごめんだと懲りて退場してしまいます。そうなれば、本来ならば多くの資産を株式投資で築けたかもしれないのに、今後のすべてのチャンスを失ってしまいます。
株式投資の適性があるかどうかは、最初のうちは誰にもわかりません。であれば、時間を味方につけて投資リスクを低減させて長く続けたほうが、チャンスが広がります。
偶然投資をやってみた結果、バブルに乗ることができて億を稼ぐ資産家になった人は数多くいます。そうしたバブルに乗るためにも、バフェットが勧める長期運用は個人投資家が取るべき戦略の王道です。結果として、値上がり益と配当益をどちらも再投資することで、株式投資で大きな資産を作る、という目的が達成されるわけです。
イラスト:ひえじまゆりこ