資産7億円の投資家が伝授する、経済シナリオを読む力をつける方法とは

資産7億円超えの投資家で、コンサルティング会社代表やYouTuberとしても活躍する上岡正明氏。多様な顔を持つ上岡氏は、どのように経済情報を仕入れ、分析しているのか。実際のシナリオを基に、「経済を読む力」について考える。全3回中の3回目。
※本稿は上岡正明著『資産7億円の父が子どもに伝えたい 本当のお金持ち入門』(大和書房)から抜粋、再構成したものです。
第1回:お金持ちは自分を「洗脳」できる……資産7億円投資家が語る“脳のリミッターの外し方”
第2回:勝機は“逆境”にあり!資産7億円超えの投資家はなぜリスクが取れるのか
目次
使える「経済ニュース」3項目
株価の上昇・下落には経済の動向が大きく関わっている。そこで、最低限これだけは抑えるべき3つの経済指標を書いておこう。
①日米の金融政策
金利と株価はシーソーのような関係だとよく言われる。金利が下がれば企業は銀行からお金が借りやすくなり、それを設備投資や事業拡大の資金に回せ、その結果として利益も増える。個人はローンを組みやすくなるので消費が増える。
さらに預金の金利は下がるので、貯蓄よりも投資や消費にお金を回す人が増える。その結果、好景気になり、企業業績の好調さが予測され、株価が上昇するのだ。
一方で、金利が上がれば企業はお金を借りにくくなり、事業を縮小。個人もローンが組みにくくなり、消費を控える。
しかし、預金金利は上がるので投資より貯蓄にお金を回すようになる。景気は悪化し、企業業績の低迷が予測され、株価は下落するというわけだ。
特に、世界経済の中心である米国の金融政策は、日本の株価に大きく影響する。国の金利が上がり、株価が下落すると日本株も下落するし、米国の金利が下がり、株価が上がれば、日本株も上昇するということだ。
②米国の雇用統計
働く人の状況は、景気の強さを測る上で最も重要な指標の1つだ。
雇用統計は米国の雇用状況を示す経済指標で毎月第1金曜日に米労働省労働統計局が発表する。雇用者数が市場予想を上回り、失業率が市場予想を下回る時は、景気がいいことを意味し、株価は上がる可能性が高い。
その反対では景気の悪化が予測され、株価は下がる傾向がある。
③米国の消費者物価指数(CPI)
米国の物価の上昇や下落の統計、いわばインフレの動きを示す指標だ。インフレが進みすぎると、金利を引き締める可能性が高まり、株価の重しになることがある。
まずはこの3つを定期的にチェックすることから始めよう。そして、経済動向を知るには信頼できる情報源にいくつか触れることも必要だ。
僕が毎日チェックしているのは次のメディアだ。
新聞:日本経済新聞(朝刊・夕刊・電子版)
テレビ:テレビ東京「ワールドビジネスサテライト(WBS)」
ウェブメディア:News Picks、ブルームバーグ、ロイター、週刊エコノミストオンライン
1つのニュースだけに偏らないで、それぞれのメディアの特徴をわかったうえで、組み合わせて情報を得るようにしている。
多角的に考えるための3つの質問
経済指標やニュースなどから仕入れた情報をもとに経済状況がどう動いていくか、企業業績にどんな影響を及ぼすかを想像して、いくつかのシナリオを描いてみよう。
君たちの大好きなクイズだ。それぞれのシナリオから、業績が伸びると予測できる業態を判断し、投資する企業を絞り込んでいく。
とはいえ、1つのニュースからいくつものシナリオを作るのは、言葉で言うほど簡単ではないと思う。最初に「誰でもできる多角的思考トレーニング」から始めよう。
トレーニングは、 ①「なぜ?」 ②「だから何?」 ③「本当に?」 の3つの質問を自分自身に問いかけ、考えるクセをつけることだ。
たとえば、「A社が画期的な新技術を発表した」というニュースがあったとする。
最初に「なぜ?」を考えよう。「なぜ、このタイミングで新技術を開発し、発表したのか?」を考える。すると、「どんな技術なのか?」「どこが画期的なのか?」などと次々と疑問が湧いてきて、A社への理解が深まっていく。
次に「だから何?」。「A社の業績はどうなるか?」「関係する企業にはどう影響があるか?」など、業界への影響を考える。
最後に「本当に?」。「本当に画期的な技術が開発できたのか?」「このニュースにリスクはないか?」「逆のシナリオは考えられないか?」など、情報を鵜呑みにせずに批判的に考えてみる。
特に、「本当に?」という反対の考えを持つことは重要だ。 これを、僕は「反証の質問」と呼んでいる。
人間の脳は「信じたいものを信じる」ようにできている。多くの人は、自分に都合のいいシナリオしか見ようとしない。
そこで、あえて自分の仮説を否定してみる。「もし、この技術が大失敗するとしたら、何が原因か?」「もし、市場がまったく反応しなかったら、どう動くべきか?」。このように、あえて反対意見を考えるという反証のプロセスを経て、初めて思考は平面的から立体的になる。
投資で勝ち続けるプロは、常に「最悪のシナリオ」もポケットに入れながら、冷静にリスクとリターンを天秤にかけているわけだ。
米大統領の「経済シナリオ」を予想する
では、ニュースからシナリオを作ってみよう。「トランプ氏、半導体への100%関税賦課を表明」、2025年8月7日のブルームバーグのヘッドラインだ。
このニュースの裏側には、政治、経済、社会、選挙、軍事、ライバル国や同盟国との駆け引きなどさまざまな思惑がある。
まず、なぜ「半導体への100%関税」という発言が出たのかを考えてみる。すると、これは単なる経済政策ではなく、政治的なメッセージでもあることがわかる。
記事には「米国に生産を移転すれば除外」ともあった。ここから、「だから何?」「本当に?」を考えてみよう。「移転すれば除外」は国内製造を促進して、国内雇用や産業を保護したいという意図を意味している。
また、半導体技術を巡る米中対立も背景にあり、中国製の半導体を排除し、サプライチェーンから中国を切り離す狙いがあるのかもしれない。さらには選挙対策として、有権者へのアピールも大きな要素だろう。
こうした背景を考慮すると3つのシナリオが描ける。
・シナリオ1/トランプ氏の公約が実行される場合
米国に半導体生産拠点が移転し、米国内の雇用が増加する。すると雇用統計の数字が強くなり、景気がよくなるかもしれない。関税による税収増もあるだろう。結果、米国株の上昇も期待できる。
しかし、関税の影響で、日本から米国への半導体輸出が減少し、日本の関連企業の業績が悪化するだろう。
・シナリオ2/現実的な妥協策がとられた場合
公約はあくまで交渉材料であり、最終的には一部の半導体製品が関税対象から除外される。各国が米国との貿易交渉を強化し、関税の影響を最小限に抑えるための協定が結ばれる。そうなればシナリオ1ほど、日本の半導体関連企業の業績は悪化しないかもしれない。
・シナリオ3/反発が大きい場合
高い関税に反発し、各国の企業が米国市場から撤退したり、他国との貿易を強化したりする。その結果、米国の製品コストが上昇し、結果的に米国経済に悪影響が出る。そうなればダウやS&P500などの株価が下落し、日本の株価にも影響が出るかもしれない。
このように、1つのニュースから複数のシナリオを想像し、その後のニュースで確認することで、予想する力が養われる。反対の意見を考える反証のプロセスを行うことで、情報を立体的に見る視点も養えるはずだ。
