生命保険が必要なのは「子だくさんの低所得者だけ」橘玲氏が語る保険の真実

橘玲
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「保険に入っておいたほうがいいのだろうか」とは、多くの日本人が抱く疑問だろう。しかしベストセラー作家の橘玲氏は、多くの日本人にとって、保険は必要ないと話す。「保険が必要な人」と「不要な人」の違いや、気を付けるべき金融機関などによる営業トークについて伝授する。全3回中の2回目。

※本稿は『難しいことはわかりませんが、1億円貯める方法を教えてください! 普通の会社員が「億り人」になって自由に生きる超現実的ルート』(文響社)から抜粋、再構成したものです。

第1回:株式投資に時間をかけるのは「無駄」?橘玲が語る資産形成の“正しい戦略”とは

第3回:「不動産投資よりもインデックス投資が優れている」橘玲氏がその理由を大公開

目次

ほとんどの日本人はすでに手厚い保険に入っている

橘:医療保険と、生命保険に入る必要があるか考えてみましょう。 

大橋:はい。お願いします……。 

橘:医療保険についてですが、まず、大橋さんも含めてほとんどの国民が、すでに手厚い保障の保険に入っていることを理解したほうがいいでしょう。 

大橋:僕も保険に入っているんですか……? 

橘:はい。それは国が運営する健康保険(自営業は国民健康保険)です。 

大橋:それって給料から毎月、引かれるやつですよね。病院に行ったときに3割の支払いで済むのはわかりますけど、大きい病気になったら困るじゃないですか。

橘:高額療養費制度によって、もし、長期入院や手術などで治療費がかさんでも、患者の自己負担は一定額に抑えられるようになっています。仮に100万円の手術を受けても1か月当たり約9万円(※年収が約600万円の場合の概算)、70歳以上は毎月4万4000円が自己負担の上限です。 

 アメリカでは医療費による自己破産が社会問題になっていますが、日本では保険対象外の先進医療でもない限り病院への支払いを心配する必要はないのです。 

 高額療養費制度………… ひと月にかかった医療費が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される

医療保険が必要な人の条件とは

大橋:医療費を負担してくれても、長い期間、働けなくなったら不安じゃないですか。 

橘:そのとおりです。医療保険が必要なのは、医療費を賄うためではなく、入院によって収入がなくなり、家計の維持が難しくなる場合です。

 逆に言えば、すでに十分な資産形成をしている場合や、配偶者に収入がある場合など、入院しても家計が維持できる人に医療保険は不要です。

大橋:働いている人で、長期入院したときにお金がなくなる人が対象ってことですか? 

橘:そうです。そのため年金受給者になったら、医療保険は必要ありません。なぜなら、年金は健康状態にかかわらず毎月定額が支払われるのですから、医療保険でさらに所得を補償するのは無駄です。 

 そもそも、病気やケガでの入院期間というのはそんなに長くありません。 医療の高度化と長期入院の診療報酬引き下げの影響で、入院日数の平均は1990年の38.4日が2020年代には15日程度まで短期化しています。

 がんや心疾患でも16~22日で、入院日数が1か月を超えるような病気は脳血管疾患(約80日)や精神疾患(約300日)などごく限られています。 

大橋:入院期間が1か月程度だったら、有給を使えばなんとかなりますしね……。入院している間だけなんとかなれば、保険はいらないってことですか……。

橘:そういうことです。 


まとめ 
・私たちが加入している健康保険は、高額療養費制度によって自己負担額も一定に抑えられる。 
・医療保険が必要となるのは、入院による収入減で家計維持が難しくなる場合。 
・すでに資産がある人や配偶者に収入がある家庭では不要。また、年金受給者は毎月安定した収入があるため加入の必要性が低い。

生命保険に入るのは「遺された家族が路頭に迷う場合」

大橋:でも先生。自分が死んだら、残された家族が路頭に迷う人もいるかと思います。そういう人は生命保険に入ってもいいのでしょうか? 

橘:大橋さんの言うとおり、生命保険が必要になるのは自分が死亡した場合、残された家族が生活できなくなるときです。

 ということは、独身や子どものいない夫婦はもちろん、子どもが成人していたり、大きな資産があったり、両親や他の親族が残された家族の面倒を見てくれる場合などは、死亡保険に加入する必要はありません。また、住宅ローンを組んだ人も不要です。 

 住宅ローンを組むと、強制的に死亡保険(団信)に加入させられます。本人が死亡するとローンの残債が保険金で相殺されるので、遺族の生活費は持ち家の売却で賄うことができるからです。 

生命保険が不要な人 
・すでにある程度の資産がある人 
・独身の人(扶養する家族がいない人) 
・両親や他の人が遺族の面倒を見てくれる人 
・住宅ローンを組んでいる人

橘:つまり、子どものいる若い夫婦など資産形成がまだ十分でないために一家の稼ぎ手である夫の死亡による経済的なリスクが大きく、保険金という宝くじの賞金以外に家族の生活を守る手段がない。そのような人が対象ということです。 

 はっきり言えば、生命保険は子だくさんの低所得者だけが必要だと思います。 

大橋:……。 

橘:そもそも、日本のようなゆたかな国では、両親に不幸があっても祖父母やきょうだい、親戚が面倒を見るでしょうから、幼い子どもが路頭に迷うようなことはほとんどありません。国民年金や厚生年金から遺族年金も支給されるので、冷静に考えれば必要な保障額は思ったよりずっと少ないはずです。

 ネットの保険会社で掛け捨て型に入り、NISAとインデックスファンドである程度の資産形成ができたり、子どもが大きくなって、それほどお金が必要ではなくなったりしたら解約すればいいでしょう。 

まとめ
・生命保険は、自分が死んだときに家族の生活が維持できない場合にのみ必要。資産が十分ある人、団信付き住宅ローンに加入している人には不要。 
・保障額は遺族年金や親族のサポートを含めて考えると多くは必要ない。

金融機関の営業トークは信じるな

橘:ここで、お伝えしたいのは、み〇ほ銀行、三〇〇FJ銀行、明〇〇田生命のような清廉潔白なイメージがある大手の銀行や保険会社でも、熱心に営業する金融商品の中には、きわめてリスクの高いものがあり、それらが平気で売られているということです。

 つまり、金融リテラシーが低いと、大橋さんのお金は減っていくということです。

大橋:「金融リテラシー」ってよく聞きますが、どういった能力なのでしょうか。 

橘:リテラシーとは「読み書き能力」のことですから、金融リテラシーとは「金融市場の読み書き能力」のことです。

  金融リテラシーの高い人は金融市場を使って上手にお金を増やしていき、その反対に金融リテラシーが低いと、あちこちでぼったくられてお金が減っていきます。最初にお伝えしたとおり、現代は知識社会で「バカはお金持ちになれない」のです。 

大橋:……。その金融リテラシーとやらは、どうやって高めたらいいんでしょう? 

橘:相手の立場になってみることだと思います。 例えば、街中で「ほ〇んの窓口」を見かけたとします。そのときに金融リテラシーの高い人は、「店舗の地代やスタッフの人件費はどこから出ているのだろう?」と考えます。

  他にも、金融商品の「金利を上乗せしてくれる」や「何歳でも保険に入れる」という謳い文句を見たときに、コストがどうなっているかをまず考えるのです。 

大橋:相手がどうやって儲けているか考えるってことですね。 

橘:そうです。もうひとつ損をしないための簡単なコツは全ての営業を無視することです。なぜなら、本当に儲かる投資機会があったなら、見ず知らずの大橋さんに教えたりせず、自分で投資するはずです。

 不動産にせよ、保険や株式、先物にせよ、「儲かりますよ」という営業はすべてこの矛盾を説明することができません。 この原則を頭に叩き込んでおけば、取り返しがつかないような最悪の事態を避けることができると思います。

まとめ
・大手の金融機関でも損しやすい商品を売っているため、相手の儲けの仕組みを正しく見抜く知識(金融リテラシー)を持つことが大切。
・ 金融商品に関するすべての営業は無視すること。

『難しいことはわかりませんが、1億円貯める方法を教えてください! 普通の会社員が「億り人」になって自由に生きる超現実的ルート』(文響社)

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この記事の著者
橘玲

作家。早稲田大学卒業。2002年、国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。同年、「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部を超えるベストセラーに。06年『永遠の旅行者』が第19回山本周五郎賞候補。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で2017新書大賞受賞。著書に『「読まなくてもいい本」の読書案内』(ちくま文庫)、『テクノ・リバタリアン──世界を変える唯一の思想』(文春新書)、『スピリチャルズ「わたし」の謎』(幻冬舎文庫)、『HACK(ハック)』(幻冬舎)など多数。

大橋弘祐(おおはし・こうすけ)
作家・編集者。立教大学理学部卒業後、大手通信会社の広報、マーケティング職を経て現職に転身。初小説『サバイバル・ウェディング』(文響社)が日本テレビの地上波ゴールデンタイムでテレビドラマ化。『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』(文響社、山崎元との共著)など「難しいことはわかりませんがシリーズ」が70万部を超えるベストセラーになる。『漫画 バビロン大富豪の教え』の企画・脚本も手掛ける。

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