AIで仕事を早く終わらせても評価されない。600社超を支援してきた茶圓氏が明かす「AIが定着しない会社」3つの共通点
「配って終わり」——多くの企業のAI導入が、この一言に集約されるという。
前回は、AIを使う人と使わない人の間に開いている断層と、スキルなし会社員が30日で最初の1件を受注するまでの手順を、株式会社デジライズの茶圓将裕氏に聞いた。今回は、600社超を支援する中で見えてきた企業ごとの温度差と、AIを導入しても現場に定着しない理由、さらに新しいAIに振り回されず仕事で成果を出すための「仕事の型」と「環境づくり」について聞く。全3回の第2回。
みんかぶプレミアム連載「AI富裕層への最短ルート」
前のめりな会社・様子見の会社・定着しない会社。600社超を支援して見えた”3つの層”
私は累計600社超・5万人以上の支援をしてきました。そのうえで、企業ごとの温度差を見ると、3つの層に分かれます。
1つ目は、前のめりな会社。共通点がはっきりしていて、だいたい経営者本人が自分で触っています。この層は「研修してください」ではなく、「どこまでAIに任せていいか」を相談してきます。
2つ目は、様子見の会社。理由として挙がるのはセキュリティやガイドラインです。これは企業であれば慎重になるのは理解できますし、業務の棚卸しなどの整理が必要です。ただ、話を聞いていくと、それ以上に多いのが「誰が旗を振るか決まっていない」ケースです。稟議で止まっているのではなく、担当が決まっていないから進んでいない、ということです。
3つ目は、導入したけれど定着しない会社。いま一番相談が多いのが、このフェーズです。
飲食や建設のように現場が中心の業務では、そもそもAIを使う機会が限られます。だから現場中心の会社に研修に行くときは、管理部門などパソコンを使う人たち向けが基本になります。個人がAIを使いたいと思っても、上層部の承認や予算がないと導入できない、という相談も本当に多いです。
大企業になるほど、従業員数に応じた利用料負担やセキュリティの観点から慎重になる傾向があります。逆に、打ち合わせが終わったらそのまま議事録を作り、相手への返信メールを下書きし、Slackに共有するところまで一気通貫でつなげているのは、AI・ITに強い中小企業やスタートアップに多い印象です。
600社超を支援して見えた「AIが進む会社、止まる会社」の差
ではなぜ、AI導入は定着しないのでしょうか?
定着しない理由は、以下の3点が多いです。1つ目は、AIツールは配ったが「自分の仕事のどこで使うか」を決めていない従業員が多く、配って終わりになってしまっていること。2つ目は、AIを使いこなせる人が、そのノウハウを他の人に共有していないこと。3つ目は、AIを使って仕事を早く終わらせたとしても、評価されないこと。早く終わらせた人に仕事が増えるだけなら、誰も速くしません。
「評価されない」問題は、想像以上によくあります。AIで仕事が早く終わっても、結局は次の仕事が回ってくるだけという現場を目にします。理想は、AIの活用で業務の件数やプロジェクト数が増えたことをちゃんと評価し、報酬に連動させることです。
ただ、人事評価はある程度の仕組みを作ること自体はできても、きちんと運用し続けるのは大変です。将来的には人事評価を変更すべきと分かっていても、現時点で実現できている例はまだ多くない、というのが実感です。
こうした理由から私は、全社一斉の研修より、部署ごとに実際の業務課題を持ち込んでもらって、その場でAIを使った解決策を一緒に作る形をおすすめしています。