第十話「丸見えの国家」連載小説「奪われるースパイ天国・日本の敗戦ー」
スパイ防止法がないこの“天国”・日本で、知らない間に国が「奪われる」──。
表向きの歴史やニュースの裏側に潜む、冷酷な国際諜報戦と、個人の運命が国家間の巨大な陰謀に巻き込まれていく壮大な安全保障サスペンス小説、ここに爆誕。
舞台は、女性初の内閣総理大臣・高地きみえが熱狂的な支持を背景に「強い日本」を目指す日本。彼女は長年の懸案である日本人拉致被害者の奪還を決意し、極秘裏に北朝鮮の金正恩総書記との会談に臨む。しかし、その外交交渉の裏側では、すでに北朝鮮の体制に「影」が差し込み、巨大な隣国・中国の思惑が絡み合っていた。
第十話「丸見えの国家」
韓国に本社があるGTL社の日本支社幹部・キムに、山田浩一はこう尋ねたことがある。「私のことをどうしてGTL社に引き抜いたのですか? そもそも、どうやって私のことを知ったんですかね?」。キムは一笑して、こう答えた。「日本は優秀な研究者、技術者が企業にも大学にも沢山いる。大きな会社だけでなく、小さなところにも溢れている。しかも、どこに、どんな人がいるのかまで発表している珍しい国家だ」。浩一は首を傾げた。
「発表? そんなことを日本はしていませんがね」。キムはまた笑っている。「いやいや、日本は自然に自分たちの手の内を明かしている。こんなバカな国は日本くらいしか知らない」。少しムッとした浩一は、その続きを求めた。すると、キムは「山田さんは省庁の公式サイトをちゃんと見ていますか?」と逆質問してくる。バカにされているのは面白くなかったが、浩一は見たことがなかった。