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米トランプ政権のイラン攻撃に習近平がビビりまくる理由…イラン戦争が習近平政権に与えた大打撃

(c) AdobeStock

 イラン情勢は混迷を極めている。4月7日に2週間の停戦合意に至った米国とイランであったが、その後の停戦合意に至るかは不透明だ。そんな中、ひそかにこの状況に打撃を受けているのが、中国・習近平政権だ。中国の政治経済に詳しいエコノミスト・柯隆氏が厳しすぎる中国の今後を分析するーー。

 みんかぶプレミアム特集「トランプ、習近平、高市の本音」第1回。

目次

イラン攻撃の正当性をめぐる議論は、既存の国際秩序と国連のあり方を含めて包括的に検討する必要がある

 アメリカとイスラエルによるイラン攻撃は、世界の石油供給のサプライチェーンを大きく揺るがした。おそらくトランプ大統領自身も、原油価格がここまで高騰するとは想定していなかったのかもしれない。なぜならば、アメリカの石油需要はほとんど外国に依存していないからである。しかし、アメリカが石油をほぼ自給しているとはいえ、石油価格は国際市況によって決まるため、国内のガソリンなどの石油製品の価格も国際市況に連動して大きく上昇している。

 そもそも、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃については、国際法上さまざまな議論を呼んでいる。建前としては、イランが国連決議に違反して核開発を続けていることが攻撃の理由とされている。しかし、アメリカとイスラエルが国連の明確な付託を受けずに、一方的にイランを攻撃する正当性が十分に証明されているとは言い難い。

 むろん、国連憲章に照らしてみれば、ハメネイ政権が自国民を抑圧・迫害しているとの指摘があるのも事実である。それにもかかわらず、国連が有効な対応を取れていないこと自体が問題である。さらに、イランが地域の武装勢力を支援していることも広く指摘されており、その状況下で核開発問題を放置することの危険性も否定できない。したがって、今回のイラン攻撃の正当性をめぐる議論は、単なる是非を超えて、既存の国際秩序と国連のあり方を含めて包括的に検討する必要がある。

早く戦争を終わらせたいトランプと、長期化させたいイラン

 トランプ大統領がイラン攻撃を決断した背景には、中東地域における石油利権や影響力を確保しようとする意図があったと考えられる。しかし、その誤算となったのがホルムズ海峡をめぐる危機である。すなわち、最高指導者ハメネイ師が殺害されたと報じられているものの、イラン政権自体は崩壊していない。むしろ、イランはホルムズ海峡を封鎖することで、トランプ政権に対して強い圧力をかけている。

 トランプ大統領にとっては中間選挙の日程がすでに視野に入っており、政治的な時間制約が存在する。一方で、イラン側にとっては戦闘を長期化させること自体が戦略的に意味を持つ。この非対称な時間感覚こそが、今回の戦争の構造的特徴である。

トランプ政権が抱える2つの構造的弱点

 とりわけ、トランプ大統領は今回のイラン攻撃が短期間で終わると明言していた。仮に本当にそのように認識していたとすれば、戦況判断において重大な誤算があったことになる。確かに、アメリカとイスラエルの軍事力はイランを大きく上回っていると考えられるが、それでもイランの軍事施設や抵抗勢力を短期間で完全に無力化できると見るのは楽観的に過ぎた可能性がある。

 さらに、トランプ大統領側が同盟国から十分な支持を得られていない点も問題であろう。トランプ政権はイラン攻撃に際して、NATOなどの多国間枠組みを十分に活用していない。むしろ、トランプ政権は一貫して二国間交渉を重視し、多国間協調を軽視してきた。2025年には、ヨーロッパ諸国を含む広範な国々に対して相互関税を発動するなど、一方的な措置を取っている。こうした政策は欧州との関係を悪化させ、結果として今回の軍事行動に対する支持基盤を弱める要因となっている。

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この記事の著者
柯隆

柯隆(か・りゅう) 1963年中国・南京生まれ。88年来日、94年名古屋大学大学院、経済学修士号取得。長銀総研、富士通総研を経て、2008年東京財団政策研究所主席研究員に。中国政治、社会関連の著書多数。「『中国「強国復権」の条件』(慶応義塾大学出版会)が第13回樫山純三賞を受賞、近著は『ネオ・チャイナリスク研究』(2021年、慶応大学出版会)。日本と中国双方の政治、経済に精通したオピニオンに定評。

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