「スポーツ用品、靴、自動車部材テーマ」モリト

今回は、「スポーツ用品」「靴」「自動車部材・部品」「アウトドア」「専門商社」などの株テーマに関連する、モリト株式会社(9837)を分析します。
Key Points:
- 2022年11月期は「増収増益」。売上高および経常利益は過去最高を達成!さらに2023年11月期の見通しも「増収増益」を見込む。
- 株主還元においては、年間配当金額が26円から32円へと推移。2023年11月期にはさらに増配の54円を目指す。
- アパレル・プロダクト・輸送関連の3つの事業を柱に、パーツにおける各業界分野でシェア率の高い商品多数。さらに、メーカー機能を併せ持つ商社として世界各地に17拠点展開、まさに「グルーバル ニッチ トップ」が魅力。
目次
Identity
企業能力 KFS(Key Factor for Success =重要成功要因)
「グローバル ニッチ トップ」
モリトは、靴・衣類に紐を通す穴に取り付ける金具の「ハトメ」をはじめ、ホック、マジックテープなどの服飾およびフットウエアなどの付属品。また、自動車の内装品等の企画・開発から製造に加え、卸・流通までを一貫して手掛ける専門商社です。
1908年(明治41年)創業 という100 年を超す歴史の中で培われた「信頼性」、「トップシェア」、そして「グローバルネットワーク」を強みに、ニッチな市場において確かな存在感を発揮しています。2019年6月に持株会社体制へと移行。現在は国内 8社、海外14社の合計22社の連結子会社を持っています。2022年6月には一層の飛躍を目指して、子会社を株式分割し、事業領域別に3つの事業会社とすると同時に、コーポレートブランドの刷新を行いました。同社(の存在感)は「グローバル ニッチ トップ」がポイントです。
Performance:全体業績
経営環境
2022年11月期の経営環境は、ウィズコロナの新たな段階への移行が進み、経済活動に持ち直しの動きが見られたものの、ウクライナ情勢等による原油価格の上昇に伴う原材料費の高騰、世界的な金融引き締めによる為替の変動といった様々なリスクが重なり、依然として先行きが不透明な状況が続いています。
主にアパレル関連、プロダクト関連、輸送関連の事業を行う同社グループにおいては、主力商品の原材料の価格高騰や調達難、半導体不足による自動車メーカーの減産や生産停止、海上輸送の遅れや運送費の高騰といった利益を押し下げる要因が多い状況でした。しかし一方で、流行に左右されないメディカルウェア、作業服関連、ヨガやフィッシングなどスポーツ関連商品や医療機器関連商品をはじめとする機能性に優れた付属品や製品が好調に推移。また、サステナブルな社会の実現を目指したモリトグループの取り組み「Rideeco」において、廃漁網や縫製工場から出る「はぎれ」などを活用した環境配慮型の商品の開発・販売を推進し、新規取引の獲得に注力しました。さらに、運送費など経費の見直しを継続して実施し、収益力が大幅に改善されました。
2022年11月期決算の概要
P/L:
売上高および各利益の全てにおいて「増収増益」を達成。売上高および経常利益は過去最高を達成。

P/Lは、「増収増益」です。売上高484億7千8百万円(前年同期比11.1%増)、営業利益21億1千6百万円(前年同期比30.7%増)、経常利益23億4千2百万円(前年同期比27.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益16億7千4百万円(前年同期比19.0%増)となりました。
なお、2022年11月期の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という)等を適用しており、売上高は4億2千7百万円、営業利益は4千6百万円それぞれ減少し、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は6百万円それぞれ増加しています。
■2022年11月期

B/S:
総資産および純資産ともに増加したが、自己資本比率は前年度の73.7%から72.9%と0.8ポイントDOWN!

総資産は、502億7千1百万円と43億3千3百万円増加しました。流動資産は、304億8千1百万円となり35億2千3百万円増加しました。これは主に、商品及び製品が15億6千9百万円増加したこと、受取手形及び売掛金が8億9千2百万円増加したこと、原材料及び貯蔵品が6億8千7百万円増加したこと、電子記録債権が5億6千1百万円増加したこと、現金及び預金が7億3百万円減少したことによります。
固定資産は、197億9千万円となり8億1千万円増加しました。のれんが2億8千万円増加したこと、機械装置及び運搬具が1億6千8百万円増加したこと、無形固定資産のその他に含まれる商標権が1億3千7百万円増加したことによるものです。
流動負債は、93億9百万円となり18億1百万円増加しました。主な要因は、支払手形及び買掛金が10億8千4百万円増加したこと、その他に含まれる有償支給に係る負債が2億5千9百万円増加したこと、その他に含まれる未払費用が1億1千3百万円増加したこと、賞与引当金が1億6百万円増加したこと、1年内返済予定の長期借入金が1億1千4百万円減少したことによります。固定負債は、長期借入金が2億8千万円減少したことにより2億3千7百万円減少し、42億7千8百万円となりました。
純資産は、366億8千4百万円となり27億6千9百万円増加しました。なお、自己資本比率は前年同期の73.7%から72.9%と0.8ポイント減少しています。
C/F:
フリーキャッシュフローは6.3%増加!

2022年11月期におけるフリーキャッシュフローは、前年同期の2,243百万円から715百万円へと推移しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、8億5千万円の収支プラスでした。これは主に、棚卸資産の増加及び法人税等の支払により資金が減少した一方で、税金等調整前当期純利益の獲得及び減価償却費の計上により資金が増加したものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、1億3千5百万円の収支マイナスでした。これは主に、投資有価証券の売却及び有形固定資産の売却により資金が増加した一方で、有形固定資産の取得により資金が減少したものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、19億1千6百万円の収支マイナスでした。これは主に、長期借入金の返済による支出、配当金の支払及び自己株式の取得による支出により資金が減少したものです。
この結果、現金及び現金同等物は6億2千3百万円減少し、期末残高は103億9千6百万円となりました。
株主還元:
2022年11月期の年間配当は1株当たり6円増配して32円を想定。配当性向は51.4%!

当期における同社の利益配分に関する基本方針は、健全な経営基盤や財務体質の強化と収益性の向上とともに、株主への利益還元を経営上の重要課題と認識しており、内部留保金は将来の企業価値を高めるために既存のコア事業の拡大や新規事業・M&A等に備えて充実を図り、長期的成長に向けた投資等に活用する方針です。
2022年11月期の期末配当金は、1株当たり18.5円が想定されています。なお、当期における中間配当金は、1株当たり13.5円で実施しているので、年間配当金は1株当たり32円となる予定です。これは、前年同期の年間配当金26円に対し6円の増配となります。また、次期の配当金については、同社の発表した新たな利益配分に関する基本方針にのっとり、中間配当金は1株当たり27円、期末配当金は1株当たり27円、合わせて年間配当金は1株当たり54円が予定されています。
Performance:セグメント別業績
(日本)
アパレル関連では、欧米向けの作業服・メディカルウェア向け付属品、カジュアルウェア向け付属品、スポーツウェア向け付属品、スポーツシューズ向け付属品の売上高が増加しました。プロダクト関連では、医療機器関連商品、均一価格小売店向け商品、建築現場向け安全関連商品、スノーボード・サーフィン・アウトドア関連商品の売上高が増加しました。輸送関連では、日系自動車メーカー向け自動車内装部品の売上高が増加しました。
その結果、売上高は335億1千6百万円(前年同期比10.9%増)、セグメント利益は16億1千8百万円(前年同期比17.7%増)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は4億2千7百万円、セグメント利益は4千6百万円それぞれ減少しています。
(アジア)
アパレル関連では、中国・香港での欧米向け作業服関連付属品、カジュアルウェア向け付属品、ベトナムでのスポーツシューズ向け付属品の売上高が増加しました。輸送関連では、半導体不足の影響により、中国での日系自動車メーカー向け自動車内装部品の売上高が減少しました。
その結果、売上高は83億4千万円(前年同期比3.5%増)、セグメント利益は6億9千6百万円(前年同期比73.7% 増)となりました。
(欧米)
アパレル関連では、作業服向け付属品、カジュアルウェア向け付属品、高級ダウンウェア向け付属品の売上高が増加しました。輸送関連では、半導体不足の影響により、日系自動車メーカー向け自動車内装部品の売上高が減少しました。
その結果、売上高は66億2千1百万円(前年同期比23.7%増)、セグメント利益は1億4百万円(前年同期比82.7%増)となりました。


ESG Elements:環境・社会・ガバナンス
同社では、SDGsおよびESGを重視したサステナブル経営を推進しています。
Environment(環境):
C.O.R.E.(=Committed to Our Resources and Environment)と称する環境へのコミットを掲げており、特に、海洋プラスチック問題の1つである廃漁網を原材料としたアパレル副資材や雑貨の製造に取り組むことで、サステナブルという社会テーマを牽引しています。

Social(社会):
社会関連データでは「従業員女性比率38.2%」「女性管理職比率6.7%」と女性の活躍を示す指標は平均レベルと思われます。

Governance(ガバナンス):
ガバナンス体制においては、8名中4名と役員の半数を社外取締役が占めています。なお女性役員は8名中2名と平均レベルです。また、コンプライアンス委員会を設置し、法令を遵守した経営の健全性、透明性の確立に努めています。

Plan:第8次中期経営計画「GP2023」(~2026年11月期)
同社は3つの事業で安定した業績を継続中で、戦後2度の石油ショック、世界的な経済危機リーマンショック、そして今般の新型コロナウイルス感染症の影響を含めても赤字に陥ったことがありません。また、様々なアイテムにおいて高い市場シェアを持っています。企画・開発は主に日本で行う一方で、欧州、北米、アジアに製造および販売拠点を有しており、現在はグローバル成長企業を目指して生産拠点、販売網の拡充とグローバル経営を支える内部体制の構築を加速させています。同社が取り扱う品目一つひとつをとれば競合先もありますが、これだけ多彩な品目を扱いながら、その企画・開発から製造・流通、販売までを一貫して手掛けて、売上高400億円を超すというボリュームを実現している企業は世界的にも他に見当たりません。
2026年11月期を最終年度とする第8次中期経営計画では、モリトグループの目指す姿を「小さなパーツで世界を変え続けるグルーバル ニッチ トップ企業」を掲げ、具体的な戦略に落とし込んでいます。KPIとして売上高500億円、営業利益25億円、売上高営業利益率5%を掲げています。
また、株主還元については、安定的かつ継続配当の実現を指針としており、親会社株主に帰属する当期純利益に対する「配当性向は50%以上を基準」、「連結自己資本配当率(=DOE)の目標は4%」としています。


Out Look:まとめ
「無くてはならない付属品」、「ニッチトップ」、「安定した収益」、「実質無借金経営」、「SDGsへの対応」、「配当性向50%以上」など、モリトには、グローバル市場で十分に戦える競争優位性があります。「グローバル ニッチ トップ」企業を目指すモリトの攻めの考えは「◎」です。
★注目の「スポーツ用品」「靴」「自動車部材・部品」「専門商社」テーマ株
三共生興(8018)
繊維商社の老舗。高級服ブランドを展開。欧米ブランド「DAKS」のライセンス保有。
明和産業(8103)
三菱系商社中堅。化学品・樹脂主力。炭素製品などで高シェア。中国に強み。
クリヤマHD (3355)
ゴム、合成樹脂製品が主力。産業用や建設用中心。尿素SCRセンサー事業も。