「光ファイバー、通信機器・工事、CATV、システムインテグレーション関連テーマ」シンクレイヤ(1724)

今回は、建設業から【光ファイバー】【通信機器】【CATV】【通信工事】【システムインテグレーション】【無線LAN】などの株テーマに関連する、シンクレイヤ株式会社(1724)を取り上げます。
Key Points
- 情報ネットワークを通じた包括的なシステムインテグレーション力と技術力が特長
- 2023年12月期は「増収増益」。すべての利益が二桁の大幅増益へ
- 純資産は6.6%増加し56億8千3百万円。自己資本比率は6.1ポイントUPして53.2%へ
- 2023年12月期の1株当たり配当金額は8円増額して25円配当を実施。配当性向は0.1ポイントUPして26.8%へ
目次
Identity
企業能力 KFS(Key Factor for Success = 重要成功要因)
『情報ネットワークを通した包括的なシステムインテグレーション力と技術力』
現代社会では、4K8K放送による高度なテレビ放送や、急増する通信トラフィックに応じる超高速インターネット・インフラ普及によって、私たちの生活はより便利に、豊かに変化しています。

1962年設立のシンクレイヤは、ケーブルテレビをはじめとする放送通信事業者のソリューションプロバイダとして、各事業者の要望に応じた最適なシステムの提案と構築を目的としたシステムインテグレーション事業を主力に展開しています。
デジタル化の波を受け、放送と通信が融合される時代、そのどちらの技術にも多くのノウハウと実績を持つ同社は、その最先端を走り続けるリーディングカンパニーとして期待が高まっています。新たなネットワークを支えるため、斬新なシステムと機器を自社開発できるだけでなく、国内外を問わず多くのベンダーと連携し、包括的なシステムインテグレーション力を持つ企業グループです。

シンクレイヤが持つ独自性は、①開発から設計・生産・販売まで手掛ける創造力、②放送・通信システムの両方に強い提案力、③最先端技術を結集させるインテグレーション力、④徹底したこだわりが生む品質力の4点が挙げられます。

Performance:全体業績
経営環境と市場動向
2023年の放送通信業界では、4K/8K放送やICTを活用して人々の暮らしをより良い方向へ変革する「地域DX」への各種取り組みが開始されています。同社においても、これらの動きに合わせ継続してローカル5G実証実験へ参画し、AR(拡張現実)を活用した地域イベント支援などの新領域への取り組みを開始しました。

総務省「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計結果(2023年5月分)」によると、高い水準のトラヒック増加が継続しています。また「ブロードバンド回線事業者の加入件数調査(㈱MM総研)」においては、2023年9月末時点の光回線サービス契約数は約3,995万件(半年で約42万件の増加)でした。
需要の一巡もあり純増数の減少が続いていますが、高速大容量の10Gbpsサービスや宅内通信環境を最適化するメッシュWi-Fiの普及などによる高品質化もさらに進むと見込まれます。
2023年12月期決算の概要
P/L
『2023年12月期は「増収増益」。すべての利益が二桁の大幅増益へ』
こうした中、同社では課題解決に対するニーズに対応すべく各種機器の販売、工事、保守サービス等の受注活動を展開した結果、売上高は前期比4.8%増となり、今期着工の大型工事案件の進捗に基づく売上高の計上、新たに取り扱いを開始した伝送装置の販売が寄与しました。
また利益面では、機器販売において採算性が回復したことに伴い、営業利益は31.8%増、経常利益は34.3%増、最終利益は47.1%増と二桁増益を達成しています。また、2024年12月期通期見込においても、引き続き「増収増益」を見込んでいます。
B/S
『純資産は6.6%増加し56億8千3百万円。自己資本比率は6.1ポイントUPして53.2%へ』

総資産は、主に現預金、および商品・製品の減少により、前年同期比マイナス5.7%で106億8千6百万円でした。純資産は、主に利益剰余金の増加に伴い、6.6%増加し56億8千3百万円となりました。この結果、自己資本比率は6.1ポイントUPして53.2%へと推移しています。
株主還元
『2023年12月期は8円増額して25円配当を実施。配当性向は0.1ポイントUPして26.8%へ』

株主還元については、2023年12月期の一株当たり配当金額は、前年同期比8円増額して25円を実施、配当性向は26.7%から26.8%へと推移しています。なお、2024年12月期ではさらに1円増配して年間配当金額26円を見込んでいます。
Performance:部門別状況
同社の事業部門は2つです。放送通信事業者向け施設の構築にあたり、システムの設計、施工、保守管理等を行う「トータル・インテグレーション部門」と、システム機器の開発/設計/製造並びに購入、販売を行う「機器インテグレーション部門」です。
「トータル・インテグレーション部門」においては、前期及び当期に受注した大型のFTTH工事案件の進捗に基づく売上高の計上に伴い、売上高は前期比12.2%増となりました。利益面では、増収に加え第2四半期までに計上した保守案件に対する費用先行投入が期末にかけて解消したため、売上総利益は前期に比して増加しました。また、受注高は6.0%減少、受注残高は16.4%増加となっています。

「機器インテグレーション部門」においては、放送通信事業者における在庫調整、半導体等の長納期化に起因する通信用光端末の供給不足により各種光端末の販売数が減少し、売上高は前期比0.9%減となりました。利益面では、製商品販売価格の見直し、自社製品の原価低減活動を実施し、売上総利益は前期に比して増加しました。なお、受注高は6.7%減少、受注残高は15.3%減少となりました。

ESG Elements:環境・社会・ガバナンス
同社は、社名をシンクレイヤ株式会社に2002年7月に変更しました。ネットワークのあらゆるレイヤ(階層)とシンクロナイズ(同期)すること。異なる市場、異なるビジネスを次々にシンクロナイズさせることで、新しい価値を創造すること。そして時代と、技術と、人の思いが、自然にシンクロナイズできる社会を目指す企業として、シンクレイヤは生まれました。

またSDGsへの賛同も表明しており、「つなぐネットワーク、つくるミライ」というパーパスに基づき、情報ネットワークを通して人々の暮らしと地球環境がシンクロナイズする社会の実現により、自社の持続的成長を目指して、具体的な5つの重点目標と取組方針を定めています。

なお、企業姿勢を表すESG情報関連では、社外役員比率は8名中2名と25%、女性役員は1名であり、同社のガバナンス体制における一層の透明性と多様性に期待したいところです。
Plan 中期経営計画
同社では現在、中期経営計画「PLAN2026」を策定し、テーマとして「未来を切り拓く~継続成長のための3つの柱~」(「①既存分野技術、既存顧客のさらなる深耕」、「②持続的な成長に向けた新領域の探索」、「③組織・人事の改革、デジタル活用」)を掲げています。
①「既存分野技術、既存顧客のさらなる深耕」では、技術開発拠点「SYNC Labo」を活用した提供領域の拡大により、地域DXへの課題にアプローチします。
②「持続的成長に向けた新領域の探索」では、地域DXに貢献する分野の中から、既存事業との親和性と成長性を考慮して選択し、新領域では顧客との積極的な共創を促進し、ニーズを捉えた事業構築を目指します。
③「組織・人事の改革、デジタル活用」では、企業のDX部門におけるデータ基盤の業務フロー構築、デジタルスキル支援を行います。
なお、目標KPIは、2026年12月期において「売上高133億円」「営業利益8.7億円」「経常利益8.8億円」「ROE9.0%」の達成に向けて取り組んでいます。

Out Look まとめ
シンクレイヤ(1724)の成功要因は、「つなぐネットワーク、つくるミライ」というパーパス(存在意義)をベースとした「情報ネットワークを通して包括的に行えるシステムインテグレーション力と技術力」です。
今後、ますます社会課題が高度化・複雑化していく中で、同社の優位性を加速させる成長実現に向けた取り組みは「◎」です。
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