【BIG NEWS】海外子会社がNASDAQ上場!Abalance(3856)

再生可能エネルギー市場の太陽光パネル事業で、国内では他社に無い一気通貫型サービスを実現。さらに今後は米国進出を加速させ子会社をNASDAQ上場後、工場設立へ。
目次
Abalanceとは?

Abalance株式会社(3856:東証スタンダード)は、連結子会社40社、関連会社5社により構成されるAbalanceグループの持株会社としてグループ各社の経営指導・管理を行い、グループ各社で4つの事業(①太陽光パネル製造事業、②グリーンエネルギー事業、③IT事業、④光触媒事業)を担っています。主力事業は、太陽光パネル製造事業(売上高構成比率96.1%、その他及び調整額前営業利益構成比92.1%)とグリーンエネルギー事業(同3.7%、同7.8%)です。
同社は、2000年4月にナレッジマネジメントソフトの開発・運営を行うIT企業として設立され、2011年11月に株式交換により太陽光発電システムの企画・販売・施工を手掛けるWWB株式会社を完全子会社化しました。さらに2020年12月には、ベトナム太陽光パネル製造株式会社(VSUN)を連結子会社化し、グループ内に太陽光のパネル製造会社を加えることで、太陽光パネルの製造、発電所の企画から保守・運営・リサイクル、売買まで行う一気通貫体制を構築しています。
太陽光パネル製造事業

太陽光パネル製造事業を担うVSUN社は、ベトナム国内に4つのパネル製造工場を持ち年間製造能力は5GWを誇っています。また、セル工場(年間製造能力4GW)が2023年10月に竣工し、ウエハ工場(年間製造能力4GW)も2024年4月より稼働している状況です。原材料を欧米やアジアから仕入れ、ベトナム工場で「ウエハ→セル→パネル」を一貫製造し、在外支店や直販を通じて、主に米国や欧州など国外に販売しており、ベトナムにおける大手メーカーの一翼となっています。
グリーンエネルギー事業

グリーンエネルギー事業は、子会社WWB社と株式会社バローズが担っています。収益形態がフロー型とストック型の事業に分かれており、2023年6月期における売上高構成比率はストック型40% vsフロー型60%となっています。ストック型は太陽光発電所の開発やM&Aを通じて取得した発電所を継続保有し、電力会社に電力販売を行う事業です。フロー型は、太陽光発電所の再エネ需要家への売買、発電設備に係る物品の販売、発電所の企画から設計、開発・建設、運用・保守、リサイクルまでの一気通貫型のサービスを直販や代理店を通じて企業や個人に提供するビジネスです。
同社グループでは、安定輸入の確保に向けて、発電所の保有を増やし、ストック型事業の構成比率をいっそう高める計画を打ち出しています。現在保有する発電所は、国内外合わせて110か所を超え、合計の発電量は国内を中心に140MW超となっており、2030年までに国内外保有発電所容量1GW(参考:1GWで原子力発電1基分相当)の目標を掲げています。
今後の見通し
中期経営計画

同社グループでは、2023年9月に新たな中期経営計画(2024年6月期~2026年6月期)を策定しました。それによると、太陽光パネルの年間製造能力を2023年6月期の5GWから2026年6月期には10GWへ、セル工場の年間製造能力を2023年10月下旬の4GWから2026年6月期に10GWまで拡張することを計画しています。
海外戦略

同社グループの太陽光パネルの海外事業は、海外市場における再生可能エネルギー需要の拡大を背景に、Vietnam Sunergy Joint Stock CompanyとVietnam Sunergy Cell Company Limited(Cell Company)の一体的経営により順調に事業基盤を拡大してきました。そうした中、重点市場ある米国において東南アジア4か国(ベトナム、カンボジア、タイ、マレーシア)からの輸入品を対象にしていた24か月間の関税免除が2024年6月6日を持って廃止となり、米国製部品を使った場合の30%税金控除や米国産調達比率が40%を超えた場合に10%の特別控除が受けられるなど、関税の通商政策に加えて米国の太陽光パネル産業の保護・育成を目的とした産業支援策がバイデン政権により打ち出されました。
このように、米国における市場環境が変化することは、同社グループの太陽光パネル製造事業のグローバル展開に大きな影響を及ぼすことが見込まれています。同社グループでは、米国市場への進出についてモジュール及びセル工場を建設準備中。また、米国での環境変化に機動的に対応し競争力の維持を図ることで、通期の連結業績の達成を目指しています。
さらに、今後の投資資金などを確保するため、新たな資金の借入およびセル製造子会社Vietnam Sunergy Cell Company Limited(Cell Company)の完全親会社のToyo Co.、Ltd.を通じた米国のナスダック証券取引所への上場を2024年7月2日に果たしました。今後はToyo Co.、Ltd.を介し米国事業を展開し現地での工場建設や資金調達も行っていく予定です。
業績予想

2024年6月期の通期業績予想では、売上高1,850億円(前年同期比マイナス14.1%)、営業利益206億円(前年同期比60.9%)、経常利益206億円(前年同期比46.7%)、親会社株主に帰属する当期純利益80億円(前年同期比61.1%)を見込んでいます。売上高はグローバル市場における太陽光パネルの競争激化で市場価格の下落が進み、前回予想を下回る結果となっています。一方でセルの内製化など、生産効率の向上が利益率改善に寄与して、すべての利益で前回予想を上回る見込みです。

まとめ
世界の太陽光パネル市場は供給過多の状況にあり、価格競争が厳しくなっていますが、米国内市場に限ると供給が追い付いていない状況です。生産の軸を米国に移すことで、競合相手を主に米国内大手太陽光パネル製造会社に絞る事になります。国際エネルギー機関(IEA)によれば、世界の電力需要は今後も増加を続け、供給電源は太陽光など再可能エネルギーが主力となる見通しであり、今後の同社グループの持続的成長は「米国などグローバル市場展開の成否」次第だと思慮します。