和解金9000万円報道に「口止め料にしては高すぎる」の声…「中居正広トラブル解決金」弁護士の指摘「報じられない闇」全部暴く

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 X子さんがタレントの中居正広氏から性加害を受けたとされる事件について、複数の報道やフジテレビの記者会見から事件の全貌を整理する。本件は中居正広氏が主催したとされる飲み会が発端となり、2023年6月に発生した。

 文春報道(1月22日)によれば、事件発生前、X子さんは複数回にわたり中居正広氏の関係者であるA氏の誘いで飲み会に参加していた。A氏から「仕事につながる」と説得され、信頼して飲み会への参加を続けた。

 2023年6月の飲み会では中居正広氏の自宅を訪問。この場でX子さんが意に反する性的行為を受けたとされる。事件後、X子さんは「自分が汚れてしまった」「これまでの自分ではなくなってしまった」と述べ、精神的苦痛を強く訴えた。

 さらに、事件後にフジテレビの港浩一元社長がこの問題を認識していたことが明らかになった。フジテレビの対応が疑問視されている理由の一つが、港元社長が事件を把握していながら中居正広氏をテレビ番組に起用し続けた点である。

 X子さんは「トラブルが公にならなければ加害者はそのまま活動を続けるのか」と深い絶望感を表明している。フジテレビは、X子さんが社員であったかどうかや、社員が事件に関与していたのかについては明言を避けている。事件の調査については外部の弁護士を交えた調査委員会に委ねるとしており、詳細な説明は今後の発表を待つ必要がある状況である。

 一方、中居正広氏は事件について、双方の代理人を通じた示談が成立し、解決しているとコメントを発表した。しかし、示談成立後も、影響が広がり続け、1月23日には、中居氏は自身のファンクラブのサイトで芸能活動を引退すると発表した。

 フジテレビの港元社長は会見で視聴者や関係者に謝罪するとともに、対応の適切性について調査結果を見守る意向を示した。

 事件を通じて浮き彫りとなったのは、被害者のプライバシーと人権の保護、加害者の社会的責任、そして企業としてのフジテレビのガバナンス問題である。フジテレビが今後どのような改善策を打ち出し、視聴者や関係者からの信頼を回復するのかが注目されている。中小企業を中心に数多くの顧問先を抱えコンプライアンス案件などについてもアドバイスする城南中央法律事務所(東京都大田区)の野澤隆弁護士に、本件の見解を伺った。(聞き手は、小倉健一)

目次

民事上、賠償責任が発生するような事実があったのか?

――これまでの一連の報道に接して疑問を感じる点がいくつか存在します。中居正広氏は発表した文書において「このトラブルにおいて、一部報道にあるような手を上げる等の暴力は一切ございません」と明確に表明しており、現時点ではその表明を否定するような具体的な事実は示されていません。他方で、女性との間で金銭的なやり取りがあったとされる報道が複数見受けられ、特に9000万円という金額が取り沙汰されています(この金額を否定する報道もあり)。事実関係が不明な部分も多いのですが、その背景についてどう評価しますか。

(野澤隆弁護士)

 現在までに明らかになっている報道に基づき判断した場合、関係者がこの問題にどのように対応したかはさておき、暴力団や反社会的勢力が組織的に関わっている事件ではなかったと考えられます。これまでの報道では、薬物の使用や強制的なわいせつ行為といった問題が取り沙汰されていますが、本人の飲酒量が多かったという報道は数多く見られるものの、尿検査の実施や自宅が捜索されたなどといった事実は確認されておりません。そのため、少なくとも薬物の使用に関しては可能性が低い状況だといえます。

 性犯罪や性問題に関しては、一般的な常識や感情論とは別に、法的観点から整理する必要があります。法律上は、民事と刑事の問題が明確に区別されます。民事では、金銭の支払いによる解決が主となるのに対し、刑事では警察や裁判所が関わり、犯罪行為として裁かれます。今回のケースでは、大きな金銭が動いたとされる報道内容から、民事上の賠償責任が発生するような事実があった可能性が高いと推測されます。現段階では、刑事事件に発展するような重大な犯罪行為があったことを示す報道は出ていません。とはいえ、大きな金銭が動いていますので、関係者間で金銭以外の各種事項につき守秘義務とは別に一定の明示的または黙示的な合意があったことが考えられます。

――民事と刑事に区別とのことですが、もう少し具体的にご説明ください。

(野澤隆弁護士)

 まず刑事について説明します。相手女性が積極的に関与する姿勢を既に控えており、さらに示談も成立している状況です。そのため、本来は性犯罪として処罰が適用される可能性があったとしても、刑事事件としては嫌疑不十分や証拠不十分、あるいは起訴猶予相当と判断が下される可能性が高いと考えられます。

「仮に約9000万円もの金銭が動いたとすれば…」

 世間の注目が集まるかどうかとは無関係に、「犯罪が実際に発生したかどうかが疑わしい」とする嫌疑不十分や証拠不十分の場合と、「犯罪が発生したが示談を考慮して処罰には至らない」とする起訴猶予の場合、刑事上の処分が結局なかった点では共通しています。ただし、中居正広氏が将来的に同様の問題を再び起こした場合、量刑において影響を与える可能性は否定できません。

 次に民事について説明します。報道されているような仮に約9000万円もの金銭が動いたとすれば、何らかの賠償責任を事実上認めた上で支払いを行ったと推測するのが一般的です。民事裁判になった場合、故意や過失に基づく不法行為を前提として裁判官が和解を勧めるケースであった可能性が高いと考えます。

 相手女性の年収や治療の回数、休業した期間、後遺症の有無などが具体的に報じられていないため、断定的な判断をすることは難しいですが、過失でも認められる休業損害や逸失利益といった経済的な損害とは別に、精神的な慰謝料だけで数千万円ものお金を支払った故意のケースと判断せざるを得ないでしょう。

 数千万円単位の慰謝料を支払うケースは、非常に悪質な長期間の性的被害や死亡事故などの場合に限られることが多いです。日本では重大な性犯罪でも、1回の事件では精神的な慰謝料の上限は1000万から2000万円程度が一般的です。

 そのため「民事上の賠償責任が本来なかったにもかかわらず、口止め料として9000万円を支払った」という説明は通らない可能性が高く、中居正広氏が芸能界における大物であり、非常に高額な資産を持っていたとしても、過失の際の口止め料としてこのような巨額の支払いを合理的に根拠付けることは困難です。

仮に無理やり根拠付けるとなれば、芸能事務所やテレビ局といった大きな組織の体面を保つための特殊対応金といったところですが、さすがにそこまでの事実は出ておらず、結局、個人的な故意による不法行為に基づき民事上の損害賠償債務が少なくとも発生した事件であったと推測します。

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