世界の「人手不足」がチャンス? FA・産業機械のプロ サンワテクノス株式会社(8137)

 独自の観点で注目企業の価値を分析するMINKABU企業分析。今回は、2025年3月期決算をベースに、サンワテクノス株式会社(8137)を分析します。

目次

サンワテクノスってどんな会社?

 1949年に創業したサンワテクノス株式会社(以下、サンワテクノス)は、東京証券取引所プライム市場に上場する“独立系技術商社”です。

 技術商社の特徴は、仕入れた商品を単体で販売するだけではなく、顧客の課題を聞き、商品に適切な技術をプラスして提供できることです。同社はさらに、特定のメーカーに縛られない“独立した商社”という立場で、エレクトロニクス機器、つまり産業用の電子・電気機器やロボット関連製品を幅広く取り扱うことで、クライアントからの信頼を獲得しています。

 5月には、ROE10%超とDOE4%以上を掲げる中期経営計画や株主優待制度の拡充を発表。資本効率と株主還元の両立を積極的に目指す注目企業です。

「人手不足」を背景とする需要増を追い風に、ものづくりの現場を支援

 サンワテクノスの成長を支えているのが

・幅広いメーカーと取引し顧客に最適な製品を提案する「代理店事業」

・国内30拠点、海外39拠点の幅広いネットワークで顧客を支援する「グローバルSCMソリューション事業」

・最先端システムなどの設計から保守までを一貫して支援する「エンジニアリング事業」

の三つのビジネスです。

 こういった技術商社としてのサービス展開を、特に日本企業が世界的に強みを持つ半導体製造装置とファクトリーオートメーション(FA)の領域で発揮しています。

 

 世界の労働環境に目を向けると、各地で人手不足が深刻化し、製造現場ではロボットを使って「自動化・省人化」を進める動きが加速しています。この流れを追い風とし、今後の成長に繋げられるかが、同社の将来性を見極めるポイントとなりそうです。

特定のメーカーに属さない”独立系”という強み

 では、サンワテクノスの成長につながる「強み」は何かを見ていきましょう。

 まずは、特定メーカーの系列にない独立系商社であることです。制約に縛られないからこそ、2000社以上の仕入れ先から、顧客の事情に合わせて製品を組み合わせ、提供することを可能としています。

 そして、創業75年の歴史の中で培った強固な取引関係と情報収集力。仕入れ先でもあり顧客でもあるという「双方向取引」を重ねるなかで、現場のニーズや各分野の最先端情報が同社に集約されています。

 第三の強みとしてあげられるのは、国内30・海外39、計69拠点のグローバルな機動力です。

 海外に生産工場を設置するなどグローバル展開を進める企業が増えるなか、世界に広がる拠点機能とネットワークを活用して、現地法人が納期交渉や物流管理を担うことで、国境をまたぐサービス展開を実現しています。

4つの独自視点で決算データをチェック

 ここからは、2025年3月期3Q決算をベースとしたサンワテクノスの企業価値を分析していきましょう。チェックするポイントは、株式、業績、志向、ESGの4つです。

■動画でチェック

株式:時価総額は個人投資家注目レベル、優待拡充で株主還元を強化

 2025年5月19日現在の時価総額は368億円強で、これは個人や中小型株ファンドがターゲットとする規模(200億~500億円)といえます。

 PERは14.26倍と10倍を超えており評価できる一方、PBRは1倍以下の0.75倍と、業界的にも割安感がある水準といえます。

 配当に関して2025年3月期は、2024年3月期の95円から120円へと増配。“高配当銘柄”に分類される水準を維持しています。また、「株主還元」の指標を前期より、利益変動に左右されにくいDOE(株主資本配当率)へと変更し、毎年の配当金はDOE4%以上を目途とする方針としています。

 また、2026年3月期からは、毎年3月末現在の株主を対象に実施してきた優待制度を拡充する予定。保有株式数に応じて受け取れる優待品(QUOカード)の内容がアップグレードされ、長期保有株主(※)への還元も強化されます。

 中期経営計画で掲げるROE10%超と合わせ、株主優待の拡充とDOE4%以上の配当の両輪で還元拡大を図る構えです。

業績:市況低迷の影響を受け「減収減益」も、長期トレンドでは伸長傾向

 25年3月期の売上高は1,395億円と、前年同期比16.0%の減収となっています。背景には、2021〜22年にかけてのサプライチェーン混乱を受け、先行して部材を確保した結果、客先に部材が滞留し調整が続いていたことがあげられます。こうした一時的な在庫調整の影響はあったものの、市場は底を打ったとみられ、現在は回復基調にあります。

 利益はすべてで「減益」となりましたが、長期トレンドで見ると営業利益も伸長傾向にあります。市場動向を含めて、今後は受注回復の効果に注目できるでしょう。

 自己資本比率は+4.2ポイントで52.8%となるなど、BSは改善傾向が見られます。一方で、経営の効率性を示すROEは、前期比-5.8ポイントの5.0%と低調。中期経営   計画では、ROE10%超という資本効率目標を新たに掲げており、より資本コストを意識した経営に転換していくことで、さらなる改善に繋げる姿勢を打ち出しています。

志向:中期経営計画で資本効率と株主還元の両立を目指す

 サンワテクノスは2025年5月に中期経営計画を発表し、2025〜27年度の3年間で、営業利益80億円超、ROE10.0%超、PBR1.0倍超を目指すと打ち出しました。

 市場環境の変化に沿って事業を再編。DX投資で事業の効率化や提案力の底上げ、さらに人材育成を発展させ、組織力の強化を目指すとしています。

 収益強化の中心になるのは商品・顧客セグメント・エリアの3軸で展開する成長戦略です。メーカーとの連携を深め、顧客の高度なニーズに応える提供力を向上(商品)。セグメントごとに戦略的なリソース投入を行い(顧客)、国内の顧客基盤を守りつつ、アジア・欧米での展開を加速(エリア)することで、稼ぐ力と市場評価の両方を底上げする道筋を描いています。

ESG:積極的な企業姿勢で外部からも高評価

 サンワテクノスは気候変動に対するTCFD提言への賛同を表明しているほか、脱炭素社会へのアプローチとして環境にやさしい商品の販売を通じたCO2排出量の削減を掲げるなど、サステナブル経営に積極的な姿勢が見られます。

 また、健康経営優良法人に5年連続で認定、「日経SDGs経営調査」にも3年連続で星3に認定されているなど外部からも評価されており、管理職における女性比率も11.2%と人的資本の充実という観点でも魅力的です。

 一方、社外役員は10名中4名で40%、また女性役員は2名で20%であり、グローバルでビジネス展開する企業としては、この割合をどう改善していくかがポイントになりそうです。

まとめ

 独立系技術商社としての強みを活かしながら、国内外の製造現場を支えるサンワテクノス。2025年3月期は市況低迷の影響で減収減益となったものの、市場は回復の兆しを見せつつあります。半導体やFAといった日本企業の強みを活かせる成長領域で、日本そしてグローバルの舞台でどこまで販売を伸ばし、ROE向上を実現できるかが今後の注目点となりそうです。

    この記事はいかがでしたか?
    感想を一言!

みんかぶnote

IR(独自企業分析)カテゴリーの最新記事

その他金融商品・関連サイト

ご注意

【ご注意】『みんかぶ』における「買い」「売り」の情報はあくまでも投稿者の個人的見解によるものであり、情報の真偽、株式の評価に関する正確性・信頼性等については一切保証されておりません。 また、東京証券取引所、名古屋証券取引所、China Investment Information Services、NASDAQ OMX、CME Group Inc.、東京商品取引所、堂島取引所、 S&P Global、S&P Dow Jones Indices、Hang Seng Indexes、bitFlyer 、NTTデータエービック、ICE Data Services等から情報の提供を受けています。 日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。 『みんかぶ』に掲載されている情報は、投資判断の参考として投資一般に関する情報提供を目的とするものであり、投資の勧誘を目的とするものではありません。 これらの情報には将来的な業績や出来事に関する予想が含まれていることがありますが、それらの記述はあくまで予想であり、その内容の正確性、信頼性等を保証するものではありません。 これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、投稿者及び情報提供者は一切の責任を負いません。 投資に関するすべての決定は、利用者ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。 個別の投稿が金融商品取引法等に違反しているとご判断される場合には「証券取引等監視委員会への情報提供」から、同委員会へ情報の提供を行ってください。 また、『みんかぶ』において公開されている情報につきましては、営業に利用することはもちろん、第三者へ提供する目的で情報を転用、複製、販売、加工、再利用及び再配信することを固く禁じます。

みんなの売買予想、予想株価がわかる資産形成のための情報メディアです。株価・チャート・ニュース・株主優待・IPO情報等の企業情報に加えSNS機能も提供しています。『証券アナリストの予想』『株価診断』『個人投資家の売買予想』これらを総合的に算出した目標株価を掲載。SNS機能では『ブログ』や『掲示板』で個人投資家同士の意見交換や情報収集をしてみるのもオススメです!

関連リンク
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.