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原発は石油火力より99.7%死亡者数が少ない…暴騰するエネルギー価格にやるべきことは1つだ

 中東情勢の緊迫化によりエネルギー供給が脅かされる現代の日本。この深刻な危機を乗り越えるヒントは、感情論によって隠されてきた「原子力発電」の客観的データにあった。はたして、真に人命を守るエネルギー選択とはどのようなものなのか。経済誌『プレジデント』元編集長で作家の小倉健一氏が、科学的データに基づく「安全性の真実」を紐解き、これからの日本が取るべき合理的な道筋を語る。

 みんかぶプレミアム連載「小倉健一の新保守宣言」

目次

エネルギー自給率15.3%の日本が抱える地政学リスク

 中東の空を軍事用の無人機が飛び交い、夜の闇をミサイルの閃光が断続的に切り裂いている。2026年現在のイラン情勢の緊迫化は、決して遠い異国の出来事ではない。ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ細く急な海峡を、数十万トンもの原油を積んだ巨大なタンカーが毎日静かに通り抜けている。タンカーの深く重い腹に蓄えられた黒い液体がもし海峡を渡れず滞れば、数千キロメートル離れた島国の経済は瞬く間に血液を失い、機能停止に陥る。

 日本社会は、一次エネルギー供給の80パーセント以上を海外からの化石燃料に依存して成り立っている。エネルギー自給率はわずか15.3パーセントに過ぎない。世界の火薬庫と恐れられる地域の不安定な情勢に、私たちの生命線は完全に握り潰されそうな状態にある。

 どのようなエネルギーを選択するにしても、常に何らかの代償やリスクを伴う。無傷で無限に手に入る魔法の力など、現実の世界には存在しない。複雑な社会を動かし続けるためには、複数のリスクを冷静に比較考量し、最も人的被害の少ない合理的な方法を選ぶ必要がある。

 しかし、原子力発電に強硬に反対する声は、放射線という一つの目立つ恐怖に目を奪われるあまり、より広範で巨大な犠牲を日常的に生み出している事実を見落としている。原子力発電所を停止させれば、失われた膨大な電力を補うために、化石燃料をひたすら燃やし続けるしかない。石炭や石油を燃やせば、発電所の煙突から大量の大気汚染物質が容赦なく放出される。微小な粒子や有毒なガスは人々の肺に侵入し、呼吸器疾患や心血管疾患を引き起こし、毎日静かに、しかし確実に人々の命を奪い続けている。

「原発は石油より99.7%安全」統計が語るエネルギーの実態

 感情を排したデータは、残酷なまでに明白な事実を示している。エネルギー源ごとの安全性や人的被害を比較検討した論文『私たちの世界におけるデータ:最も安全でクリーンなエネルギー源は何か?』(著者アニル・マルカンディヤ、ポール・ウィルキンソン他、発表年2007年、2020年更新)は、客観的な数値に基づいて次のように結論づけている。

「例えば原子力エネルギーは、褐炭より99.9%少ない死亡、炭鉱より99.8%少ない死亡、石油より99.7%少ない死亡、天然ガスより97.6%少ない死亡をもたらす。風力と太陽光も同程度に安全である。化石燃料とバイオマスは、原子力や現代の再生可能エネルギーより、単位発電量あたりはるかに多くの死者を出す。石炭が圧倒的に最も汚い」

 上記の統計データが雄弁に語る通り、原子力発電は風力や太陽光といった再生可能エネルギーと並び、全エネルギー源の中で最も人命の損失を避けることができる極めて安全な技術である。反原発運動は、しばしば子供たちの命を守るため、あるいは豊かな自然を残すためという美しい看板を掲げて原子力発電所の稼働を止めるよう要求する。

 しかし、稼働停止による電力不足の穴埋めとして石炭や天然ガスが大量に燃やされる結果、統計的にはるかに多くの命が呼吸器疾患等により失われている。特定の目立つ恐怖を回避し安心感を得るために、無関係のより多くの人命を静かな死へと追いやる構造は、理性を著しく欠いた非道な行いと言わざるを得ない。目に見える派手な事故だけを恐れ、毎日静かに進行する大気汚染という巨大な死因から目を背けることは、生命に対する重大な責任を放棄する行為に等しい。

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この記事の著者
小倉健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。 Twitter :@ogurapunk、CONTACT : https://k-ogura.jp/contact

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