東京から税金を奪っても全体の成長に繋がらない…小池百合子知事を直撃「国とは建設的な議論をしたい」東京一極集中は本当なのか

全国知事会をはじめとする国と地方の議論において、税収格差の是正を目的とした東京都への厳しい意見が相次いでいる。一方で、経済学における「集積の経済」が示すように、資本と人材を都市部に集中させることが国家全体の成長エンジンとなるという視点もある。人口減少や産業基盤の縮小が進む地域において、交付金による財政支援が必ずしも新たなイノベーションや自立的な経済成長に結びついていないという指摘も少なくない。現在の地方税財政制度の課題と、日本の成長戦略における東京の役割について、小池百合子都知事に見解を聞いた。短期連載全4回の第4回。
みんかぶプレミアム連載「大物に聞く!」
目次
東京一極集中をどう考えるか
――全国知事会などでは、税収格差を是正すべきとの観点から他県より東京都に対する厳しい意見が寄せられています。一方で、経済合理性の観点からは都市部にリソースを集中させるべきとの議論もあります。現在の税収を巡る議論と、日本の成長における東京都の立ち位置について、どのようにお考えですか。
小池知事
先日、国と都で新たな協議会を開催し、国と都が連携し、いかに強く豊かな国にしていくか、それぞれの強みをどう生かすのか、話し合いを行いました。東京、ひいては国の「真の成長」に向けて、取り組むべき方向性を共有できたと考えております。
全国知事会では、どうしても「1対その他全部」という構図になりがちです。「隣の芝生は青い」ではありませんが、「東京都ばかりに集中しているじゃないか」と言われますが、それは印象論です。こうした動きの根底には、「東京一極集中」、とりわけ東京だけに人口が集中するという先入観が大きく刷り込まれているとも考えられます。
しかし、改めて人の流れを見ていただきますと、東京だけに人口が集まっているわけではありません。北海道の人は札幌に行くし、東北の人は仙台に集まる。そして東京、名古屋、大阪、さらには福岡と、それぞれの地域の都市部に集まっているというのが、ファクトとしての人の流れです。「札仙名大福(さっせんめいだいふく)」とでも言うのでしょうか。
――各地方ブロックの中心都市への人口移動が起きているということですね。
小池知事
その通りです。東京を狙い撃ちにした地方税制度の不合理な措置は、地方自治を否定するのみならず、東京の成長を阻害し、ひいては国益を損なうものです。都はこれに断固として反対をいたします。
たとえば、地方税収に地方交付税等を加えた人口一人当たりの一般財源額でみれば、都は全国平均と同水準であり、是正すべき偏在はないのです。
国も地方も税収が増えている
――現在、東京都からは多額の税収が奪われ、地方へと再分配されています。
小池知事
平成20年度税制改正以降、地方法人課税の見直しにより、年間1.6兆円、累計12.6兆円もの都税が他道府県に配分されています。その財源が何に使われて、効果がどうだったのか、検証が必要です。
そもそも、現在、国も地方も税収が増えています。法人二税の状況について、令和5年度と6年度の決算を比べると、東京を除く道府県の伸び率が12%であるのに対して、東京は7%となっており、47都道府県中34位です。
――伸び率においては、東京は下位に位置するのですね。
小池知事
そうです。「東京だけが儲けているぞ」という刷り込みは決して正確ではありません。国の税収も地方税収も、いずれも過去最大となっています。それにも関わらず、地方の首長さんから「財政運営が苦しい」という声が上がっています。ここは、現在の税財政制度が、地方の自主性や自立性を生かしているのか、逆に阻害しているのか。このことをよくお考えいただく必要があります。
今何をすべきかというと、「どこそこばっかりいいじゃないか」と批判、攻撃するのではなく、それぞれの地域が持っている力をどうやって引き出すシステムにするのかを考えるべきです。国も、どこも平べったく平等に、ばかりをやっていると、パイの分け方だけに陥ります。ますます日本そのものが縮小に次ぐ縮小になってしまう。限られたパイを奪い合う議論ではなく、全体を成長させる視点が欠けています。
地方交付税制度の問題点
――地方交付税制度が、自治体の独自財源確保の意欲を低下させているという指摘があります。
小池知事
今の地方税制度、地方交付税制度の問題点を指摘していかないと、ますます日本そのものが縮小してしまいます。
国の税収は非常に伸びていますが、一方で、地方の一般財源はほぼ横ばいです。日本全体の租税収入に占める地方税の割合は、低下の一途となっています。その要因の一つが、自治体が頑張って税収増があっても、逆にその分、交付税が減少、相殺されてしまう地方交付税制度の仕組みです。頑張ったところがもっと頑張れるのではなく、むしろ頑張った分引かれてしまうのは、ビジネスモデルとしていかがなものでしょうか。税収増があっても、自治体が新たな財源として活用できるのは一部だけでは、「だったら頑張らないで交付税をもらった方がいいよね」みたいな話になる。結果として、自治体が努力するインセンティブの阻害に繋がってしまいます。
――増収努力が交付税の減額で相殺される構造は課題ですね。
小池知事
これをずっとやってきていた。結果として過疎も進んだ。今、地方の問題だと言われています。現実に地方が自由に使える財源が少なくなってしまう仕組み、もしくはディスカレッジ(落胆)するようなシステムが問題です。自治体の首長さんが色々努力されても報われていないということが問題です。地方交付税制度は、いわば地方の成長を阻害する制度ではないか。これが本質だと申し上げます。
この地方交付税の制度のほころびの矛先が、増収局面において「東京1人が悪いぞ」と仕向けられているのは、真の問題点から標的をずらすだけです。本質を見極めないままこれが続くというのはいかがなものかと思います。
本来、各自治体が地域の実情を踏まえて、必要な行政サービスを展開する。そのことが地方自治の基本です。東京を含め、わが国全体の真の成長に向けては、時代の変化に合わせて、各自治体が個性や強みを発揮して、多様なニーズに対応した独自の取り組みを積極的に行うことが必要です。現在の交付税制度も含めて地方税財政全体を議論すべきだと考えています。
東京都も、観光や農水産業など様々な分野で、他自治体の皆様と連携を取りながら、その接点として一緒に取り組んでいきたいと思っています。
日本全体の持続的な成長のためには、限られたパイの奪い合いではなく、パイそのものを大きくしていくことが重要です。その実現に向けて、国と都の協議会などを活用し、引き続き建設的な議論を重ねていきたいと思います。