「社長」になった個人投資家が教える初心者が今日から実践できる「AI投資」
生成AIの登場で、個人投資家もプロ並みの分析を手にできる時代になった。だが、使い方を誤れば、AIはあなたにとって都合のいい「イエスマン」にもなる。
「大事なのは、どこまで任せ、どこを自分で決めるかの線引きです」。そう語るのは、TBL Advisory代表のジョン・シュウギョウ氏だ。
証券会社に月数十万円を払わなければ届かなかった情報が、月数千円で手に入るいま、問われるのは道具の性能ではなく使い手の腕だという。
『生成AI投資の教科書』の著者に、初心者が今日から実践できるAI投資の作法を3回にわたって聞いた。連載全3回の第1回。

月数十万円だった環境が、月数千円で手に入る
かつて、投資の世界では、機関投資家と個人投資家のあいだに、情報量や調査能力の面で大きな差がありました。プロが使うロイターのような情報サービスは、契約しようとすれば月に何十万円という費用がかかります。銘柄を洗い出し、決算資料を読み込み、業界の動向を追いかけるという作業を仕事として毎日続けられるのも、証券会社や運用会社に勤めている人だけでした。良い情報が存在することはわかっていても、個人にはそこへ手が届かない。それが、長いあいだ当たり前の構図だったのです。
ところが、生成AIの登場によって、この構図が変わりはじめました。少なくとも情報収集や分析といった面では、個人もかなり戦えるようになってきたのです。かつては月に何十万円かかっていたことに近いものが、いまは月数千円のサブスクリプションで手に入ります。プロとまったく同じ土俵に立てるとまでは言いませんが、個人が使えるインフラは、ここ数年で一気に整いました。
そうなると、これからは、AIをいかに使いこなせるかによって、投資の有利不利が決まっていきます。裏を返せば、これまで銘柄選びに十分な時間をかけられなかった人にも、大きなチャンスが生まれたということです。日中は仕事があって、四季報を一冊じっくり読み込むような時間はとても取れない。そういう方であっても、作業の部分をAIに任せてしまえば、プロが手間をかけてやっていたことに近い分析が、自分の手元でできるようになります。
AIは格安で雇える部下だと心得よ
では、そのAIをどう使えばよいのか。
まず知っておいていただきたいのは、AIが立てられた問いに対してはきわめて誠実に応えようとしてくれる、ということです。ただし、「儲かる株はどれですか」と聞いて当ててくれるような道具ではありません。そうした問いには、そもそも誠実に答えようがないからです。ここを取り違えると、AIは使えないという結論に飛びついてしまいます。
AIは、いわば「自分の部下」です。会社の社長が部下に向かって「何か儲かる事業はないか」などと聞くことは、まずありません。代わりに投げかけるのは、A社の直近の売上はどうなっているか、この計画に潜んでいるリスクは何か、この分野について詳しく調べておいてほしい、といった具体的な指示や質問です。
AIも、これとまったく同じです。答えの出しようがある問いにまで分解して渡すことが、使いこなしの前提になります。
そのうえで大事になるのが、どこまでを部下に任せ、どこからを自分で判断するのかという線引きです。細かな調査や分析はすべてやってもらい、統合されて上がってきた結果に目を通し、最後に決めるところだけは自分がやる。
この配分をきちんと引けるかどうかが、AIを使いこなすうえでのいちばんのコツになります。ツールの操作を覚えることよりも、こうした線引きのほうがはるかに重要です。