日高屋、最高益を生んだ「ラーメン屋であり、定食屋であり、居酒屋である」という店づくりのカラクリ

昼は中華そば、夕方は食事、夜は酒とつまみーー。日高屋の強さは、同じ厨房と客席のまま時間帯ごとに注文の中身を変え、1日の中で客席の稼働時間を極限まで伸ばすビジネスモデルにある。1品ごとの利幅を追うのではなく、回転率と注文の幅を広げて固定費を薄める手法は、いかにして過去最高益を結実させたのか。元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏が、そのメカニズムを解き明かす。
みんかぶプレミアム連載「消費者トレンド最前線-ToCビジネス-儲けの構造」
単価上昇より「来店理由の多さ」で勝負する日高屋 ラーメン店とも居酒屋とも違う独自の立ち位置
日高屋は、時間帯によって店の顔が変わるチェーン店だ。
昼は中華そばや定食を手早く食べる客が中心で、夕方には早めの夕食、夜には餃子や一品料理をつまみにビールを飲む客が入る。厨房も客席も同じまま、注文の中身が変わっていく。麺だけを売る店に比べ、来店の理由が多く、昼のピークが終わっても店を動かせる。
定食、餃子、チャーハン、一品料理、酒までそろえるのは、昼食、夕食、仕事帰りの1杯を1つの店で受け止め、家賃や設備費のかかる客席を長い時間使うためである。中華そばを頼んだ客は餃子を足し、夜には酒とつまみが動く。日高屋は1品の値段を上げて稼ぐより、1日の中で店を何度も使い、注文の幅を広げて売上を積み上げる。その運営会社ハイデイ日高が、2026年2月期に過去最高益を記録した。
売上高は622.5億円、営業利益は65.8億円。経常利益と当期純利益も過去最高となり、売上高は3期連続で最高を更新した。数字は焼鳥日高などを含む会社全体の実績で、ブランド別の利益は公表されていない。2026年2月期の業態別売上高では、日高屋が全体の約95%を占めた。
表面的な業績データだけでは見落とす勝因の裏側 物価高の波を飲み込む数字の真実
その後も勢いは続いている。2026年7月3日に発表した2027年2月期第1四半期は、売上高169.9億円、営業利益21.1億円、経常利益21.2億円、四半期純利益14.4億円だった。各利益は四半期ベースの過去最高を更新した。原価率が30.3%から31.2%へ上がる一方、販管費率は57.4%から56.3%へ下がった。前年の最高益を作った構図が、新年度に入っても続いている。
物価高で節約志向が強まり、手頃な店に客が集まった。業績を眺めただけなら、そんな説明で済ませたくなるが、決算を少し深く読むと、もっと面白い構図が見えてくる。
2026年2月期の原価率は29.7%から30.8%へ上がった。米、豚肉、卵、酒類などの値上がりが響いている。安い材料を仕入れられたから、利益が増えたわけではない。それでも営業利益は前期比19.4%増えた。販管費率が60.4%から58.6%へ下がったためだ。
販管費には店舗の人件費や家賃、水道光熱費、物流費、本部費用などが含まれる。売上が増えても同じ割合では増えない費用を、より大きな売上で吸収した。外食では、原材料高を受けて値段を上げても、客数が落ちれば固定費の負担はむしろ重くなる。日高屋はその逆をやってのけた。