「電気制御のエキスパート」正興電機製作所
今回は、「制御システム」、「受変電設備」、「蓄電池」、「下水道」、「データセンター」などの株テーマ関連から、株式会社正興電機製作所(6653)です。
Key Points:
- 2022年12月期は「増収増益」。2023年12月期2Qは「減収増益」だが、各利益においては二桁増益を達成!さらに通期予想では、大幅な「増収増益」を見込む。
- 株主還元においては、前期同様に30円配当を実施。2023年12月期の1株当たり配当金は5円増額の35円を想定。
- 情報と制御の独創技術で、電力・エネルギー分野、水・道路など幅広い分野で事業展開。プロダクト(モノづくり)に加え、IT(情報技術)、OT(制御技術)の3つの技術を持ち、AI・IoTなどの最新のデジタル技術を組み合わせた事業展開で社会インフラを支える!
目次
Identity
企業能力 KFS(Key Factor for Success = 重要成功要因)
1921年創業の同社は、「最良の製品・サービスを以て社会に貢献す」を社是として掲げ、堅実な経営、人材育成を基礎として、時代を拓く技術の開発を続けてきました。100年を超える歴史の中で、情報と制御の独創技術をコアに成長し、電力・エネルギー分野、水・道路など幅広い分野で事業展開し、社会インフラを支えています。
また国内だけでなく、1989年からは、マレーシア、中国、フィリピンへの海外進出も果たしています。
同社は、プロダクト(モノづくり)に加え、IT(情報技術)、OT(制御技術)の3つの技術を持つ数少ない企業で、さらにAI・IoTなどの最新のデジタル技術を組み合わせて活用した事業展開が特徴です。カーボンニュートラルなどの社会的課題の解決に事業を通じて取り組み、グループ総合力を発揮することでスマート社会の実現に貢献しています。
Performance:全体業績
経営環境
2023年12月期2Q期間における国内経済は、金融引き締めによる欧米の景気減速や、投資抑制による中国の成長鈍化など、世界的な停滞感の中、緩やかな回復基調が続きましたが、2023年後半から2024年にかけて、世界的な景気減速はさらに進むと見込まれ、依然として先行き不透明な状況です。こうした中、同社グループは「デジタル技術を活用した社会課題解決」、「カーボンニュートラルへの取り組み」、「One正興によるグループ総合力の発揮」の3つの重点施策に取り組んでいます。
2023年12月期2Q決算概要
P/L
P/Lは「増収増益」。利益面においては二桁の「増益」を達成!
2022年12月期は「増収増益」でしたが、直近決算の2023年12月期2Qは、前年同期比で「減収増益」です。環境エネルギー部門の国内公共分野において、水処理関連施設向け設備等が堅調に推移したものの、前年同期はサービス部門において太陽光発電所向けの大口案件の売上を計上したことなどから、売上高は125億5千6百万円(前年同期比 2.1%減)となりました。
損益面については、環境エネルギー部門の売上増加や、電力部門およびその他部門の電子制御機器分野の利益率改善により、営業利益は8億4千2百万円(前年同期比 20.2%増)、経常利益は9億4千8百万円(同 15.9%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は6億1千8百万円(同 17.9%増)となり、各利益が二桁の増益と順調に推移しています。また、2023年12月予想でも大幅な「増収増益」を想定しています。
B/S
自己資本比率は8.1ポイントUPして49.9%へと推移しており、B/Sは改善傾向!
同じく2023年12月期2Q時点の総資産は、15億1千3百万円減少し247億6千1百万円でした。
一方で純資産は13億7千3百万円増加して123億5千4百万円で推移しています。これは主に、利益剰余金が配当により1億8千2百万円減少した一方で、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上により6億1千8百万円増加、投資有価証券の時価の上昇により、その他有価証券評価差額金の増加によるものです。結果、自己資本比率は、8.1ポイントUPし49.9%へと改善傾向を示しています。
C/F
2022年12月のフリーキャッシュフローはマイナス推移、また、現金及び現金同等物期末残高は25.7%増加!
2022年12月期におけるフリーキャッシュフローは▲5億7千7百万円へと推移しています。また、現金及び現金同等物期末残高は前年同期比25.7%UPにて23億1千9百万円でした。
営業キャッシュフフローは、7千9百万円(前連結会計年度は16億3千8百万円の増加)となりました。これは、税金等調整前当期純利益16億1千2百万円を計上したものの、電力部門及び環境部門において大型プロジェクトが進んだこと等で売上債権が17億8千8百万円増加したこと等によるものです。
投資キャッシュフローは、4億9千8百万円(前連結会計年度は17億8千5百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得により4億7千6百万円支出したことによるものです。
財務キャッシュフローは、10億4千万円(前連結会計年度は1億5千4百万円の増加)となりました。これは、短期借入れによる収入17億5千4百万円があった一方で、長期借入金2億2千8百万円の返済や、配当金4億2千4百万円の支払い等により、支出が発生したことによるものです。
株主還元
前期同様に30円配当を実施。配当性向は33.6%!
株主還元においては、前期同様に1株当たり配当は30円を実施しています。配当性向は、34.4%から33.6%へと0.8ポイントDOWNしています。なお、2023年12月期には5円増額して35円を予想しています。
Performance:セグメント別業績
同社のセグメントは、「電力」「環境エネルギー」「情報」「サービス」「その他」の5部門です。
2023年12月期2Q時点でのセグメント別業績を見ていきましょう。
■「電力部門」は、売上高は前期比2.2%DOWN、営業利益は、IT(情報技術)分野でのスマート保安ソリューション(操作支援や遠隔監視)が堅調に推移したことなどにより、21.4%UPでした。
■「環境エネルギー部門」は、水処理関連施設向け設備が堅調に推移し、売上高は17.9%UP、営業利益は42.0%UPと、二桁の増収増益でした。
■「情報部門」は、国内の港湾分野でのサイバーポート事業や、ヘルスケア分野の介護認定支援システムなどのサービス事業が堅調に推移し、売上高は7.9%UP、営業利益は海外(フィリピン)の開発売上が減少し、11.9%DOWNでした。
■「サービス部門」は、太陽光発電設備関連製品、デジタル関連製品の売上減少に伴い、売上高・営業利益ともにDOWN推移。
■「その他」は、国内および海外(マレーシア)での電子制御機器分野の売上が増加し、電力会社の発電所、変電所向け工事案件も堅調に推移したことによって、売上高・営業利益ともに二桁の増収増益でした。
ESG Elements:環境・社会・ガバナンス
SDGsの認識浸透とともに、ESG項目は企業の成長可能性をはかる視点のひとつになりつつあります。
Environment(環境)
カーボンニュートラルの実現への取り組みに積極的な同社では、省エネ・新エネルギー設備と管理システムによる総合的管理制御の実現を目指しています。
福岡県の自社工場をエネルギーと環境を両立させた様々なソリューションの開発拠点と位置付けており、2021年に建設したエンジニアリング棟は、太陽光発電設備を設置するとともに、蓄電システム・EMSと連携し、「創エネ」「蓄エネ」でNet ZEBを達成しています。
Social(社会)
また、「社員が活き活きと仕事ができる」企業グループを目指して「健康経営」を推進しています。2023年3月に「健康経営優良法人(大規模法人部門)」の上位500法人が選定される「ホワイト500」に認定されました。なお同社は、2018年より6年連続で「健康経営優良法人(大規模法人部門)」の認定を受けています。
Governance(ガバナンス):
ガバナンス面では、社外取締役比率は46.2%、女性役員比率は7.7%です。
Plan:中期経営計画(SEIKO IC2026)
同社では、「サステナビリティ経営」を基本方針に、中期経営計画(SEIKO IC2026)を推進しています。
具体的な取り組みとして、①デジタルファースト(デジタル技術を活用した社会課題解決)、②脱炭素社会の実現(カーボンニュートラルへの取り組み)、③One 正興(グループ総合力の発揮による国内・アジアへの事業展開)と3つの重点方針を掲げています。
最終年度である2026年12月期には、「売上高400億円」、「営業利益36億円」、「営業利益率9.0%」の達成を経営目標としています。
Out Look:まとめ
正興電機製作所は、情報と制御の独創技術で社会インフラを支え、今後も成長していくことが期待されます。
さらに、AIやIoTなどの最新のデジタル技術を組み合わせた事業展開を得意としており、グループの総合力を発揮することでスマート社会の実現に貢献するという新たなフェーズに挑んでいます。こうした同社の果敢にビジネス展開する攻めの姿勢は間違いなく「◎」です。
★その他注目の「制御システム」「受変電設備」テーマ株
八洲電機(3153)
日立系。事業所に交通、環境、情報、エネルギー等の電気機器システムを一括設置。
カナデン(8081)
三菱電機系商社。重電・電子機器からFA・ビル設備・OA機器。インフラ、デバイスも。