お先にライフシフト

第4回 5年後になくなる仕事一覧…危険度マックスの「一般事務」はどうやって同僚を出し抜くべきか

お先にライフシフト

 本連載では『LIFE SHIFT』(リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著 池村千秋訳 東洋経済新報社刊)に描かれている「長寿化によって起こるライフスタイルの変化」についてお話ししています。

目次

AIやロボットと一緒に働く時代がやって来た

 長寿化が進む現代社会では、とにかく長く働いてお金を稼がなければいけません。

 『LIFE SHIFT』の3章「雇用の未来」で、著者の一人リンダ・グラットンさんはこう言っています。

 「長い人生をお金の面で支えられるようなキャリアを選択するためには、雇用環境の変化を正しく理解する必要がある

 テクノロジーの進歩によって、間もなく雇用環境に大きな変化がもたらされます。わたしたちはこの変化を正しく理解し、ずっと続けられる職業を選ばなければいけません。

 アップルのiPhoneが誕生したのはたった15年前 ですが、そこからスマートフォンは急激に普及。今では老若男女を問わずスマホを持っているのが当たり前になりました。

 スマホは電話の利用法も変えました。通話機能を利用することがグンと減って、代わりにアプリで買い物をしたり、バーコード決済で 食事の支払いをしたり、ゲーム・動画・SNSを楽しんだりするのがメインになっています。

 このようにテクノロジーが進歩し、私たちの日々の行動やニーズが変われば変わるほど、それに合わせて新たな職業が生まれ、同時に(需要が減って)廃れていく職業も生まれます。

 またリンダ・グラットンさんは「コンピュータの処理能力が高まれば高まるほど、雇用の空洞化は加速する。高スキルの労働者も、テクノロジーに補完されるのではなく、代替されはじめるのだ」とも言っています。

 ウェブではAIが顧客対応をし、ファミリーレストランではロボットが配膳を行うなど「人工知能に仕事を奪われる」「ロボットの導入で職を失う」ことが雇用の現場で現実になりつつあります。

 そこで今回は、近い未来、大幅に雇用が減少すると予想される職業を予想し、私たちがこれから間違った職業選択や、ムダなスキルアップをしないようにしようと思います。

この職業はスキルアップしてもムダ。5年後になくなる職業

 総務省の平成30年版情報通信白書には、職業の変化についてこう書いてあります。

 「AIの導入によって業務効率や生産性が向上する結果、定型的な業務などの機械化が進むであろう職業についてはタスク量が減少する」

 AI導入によって「定型的な業務」は仕事が減ると書かれていますが、具体例にはどのような職業が考えられるでしょうか。下のグラフを見ると、危険な職業の傾向が一目で分かりますね。

(総務省「平成30年版情報通信白書」より引用)

 このグラフはAI等の導入が進展した場合、今後3年から5年を目途に業務量が増える(減る)見込みの仕事についてまとめたものです。

 増える見込みの仕事で目を引くのは「研究開発・技術系専門職」と「調査分析・法務など事務系専門職」。AIを導入することで仕事の幅が広がり、進化していく分野といえます。

 一方で、減る見込みの仕事として圧倒的に多いのは、定型的な業務の事務全般。「一般事務・受付・秘書」「総務・事務・経理等」は確実に減っていくといえるでしょう。やや専門的な仕事で作業内容が膨大だったものが、AI等のテクノロジーの進化により、効率が良くなって作業量が減るというのが主な原因です。

「人間にしかできないこと」を見極めて未来に備えよう

 DXの進展によって、あらゆる仕事にICTの専門知識が必要とされる一方で、AIやロボットの導入によって人手が減っていく職種もこれからどんどん増えます。

 『LIFE SHIFT』では、今後は低スキルと高スキルの職業の需要が増え、中スキルの仕事は減っていくと言っています。中スキルの仕事とは、例えば「銀行の窓口業務」など。専門知識が必要ですが、パターン化しているため容易にAIを導入できるからです。

 そのほかにもAI導入によって意外な職種が仕事が減ります。それは「通関士」です。

 通関士は、税関での申告や事務処理を行う国家資格。貿易、会計などの専門的な知識な上、英語やPCスキルなども必要ですが、業務内容はパターン化しているため、AIで代替可能。将来は業務量が大幅に減るとみられています。国家資格でも選び方を間違えると仕事がなくなってしまう、という代表的な例ではないでしょうか。

 それでは将来確実に稼げる仕事に就くために、我々はどんなスキルを身に付ければいいのでしょうか。答えは「人間にしかできないスキルを磨くこと」です。

 ライフシフトの著者は、次のような特徴がある職業はなくならないと言っています。

  • 人間が絶対優位をもっている仕事 = 創造性、共感、問題解決、多くの身体的作業
  • 人間が比較優位をもっている仕事 = テクノロジーが人間のスキルを補完する仕事

 具体的に言うと「医者」はなくならない職業だと言われています。細かい状況判断が求められ、人間の判断と身体的能力が必要だからです。また人間を育てる「保育士」や「教師」は、人間性を成長させる大事な役割があり、なくならない職業といえます。

 新しいテクノロジーを利用した職業は、これからどんどん増えていきます。YouTuberが職業として小学生に憧れられているのも時代の変化ですよね。 真っ先に、動画を創作して配信を始めた人たちは、変化に柔軟に対応できる人たちといえるのではないでしょうか。

 デジタル化社会に順応しつつ、新しい仕事や技術に対応できるよう、いつでも頭を柔らかくして学んでいきたいですね。

【参考文献】
『LIFE SHIFT』リンダ・グラットン アンドリュー・スコット著 池村千秋訳 東洋経済新報社刊

この記事の著者
豆原 里芽

フリーライター。投資、FX 、ライフプランなど経済・金融分野を中心に執筆。 銀行・生保・税務と金融業界における横断的キャリアを生かして、分かりやすいお金の話を目指す。 投資歴15年以上。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。日本商工会議所簿記検定2級。

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