ChatGPTに情報を蓄積するほど「儲かる株」から遠ざかる?AIを活用した投資で重要な“引き算”の思考
AIに多くの情報を与えれば与えるほど、投資判断の精度も高くなる――。そんなありがちな思い込みを、現役プログラマーでもある投資家Go氏は否定する。Go氏によれば、むしろ不要な情報や複雑な条件を詰め込みすぎることで、AIの銘柄選びを狂わせる可能性があるという。では、AIに何を教え、何を教えないほうがいいのか。Go氏が解説する。全3回中の3回目。
※本稿は投資家Go著『AIに9割まかせる ほぼほったらかし株式投資 株価が3.53倍、利益253万円に爆増!』(KADOKAWA)から抜粋、再構成したものです。
AIは勝手に正解を見つけてはくれない
AIを株式投資に使おうと考えたとき、多くの人はまる投げすれば勝手に利益を生み出してくれると期待してしまいます。しかし、AIは自らの意思で勝手に正解を見つけ出してくれるわけではありません。AIに正しい学習をさせ、投資における優秀なアシスタントとして機能させるためには、まず人間が前提条件と判断基準を明確に設定して教え込む必要があります。
AIは、インターネット上に存在する無数の経済ニュースや企業の財務データ、過去の膨大な株価の推移といった情報を、すべて網羅して調べることはできます。
しかし、あなたがどのような戦略で、どんな状態の株を買いだと認識するのか判断基準を持っていません。そのため、ただ漠然と有望な銘柄を探してほしいと指示しても、ネット上のありきたりな情報を拾い集めただけの、投資の成功には結びつかない回答を返してくるだけになってしまいます。
AIを活用するときに最も大切なことは、判断を委ねる前に、人間自身が「勝てる投資のルール」を理解し、それを前提条件としてAIに入力してあげることです。
どんな業績であれば成長しているとみなすのか、チャートがどのような形を描いたときに安全な買い時と判断するのか。こうした基準を最初に初期設定としてしっかりと教え込むことで、AIは初めてそのルールに従い、あなたの投資する基準を理解した分析者として働き始められるのです。
AIに教えるべき「企業価値」と「チャート」
では、AIに学習させるべき前提条件は、どのようなものなのでしょうか。
投資の世界で長く安定して資産を増やし続けている投資家たちは、複雑な数式や何十種類もの指標を用いているわけではありません。彼らが重視しているのは、企業の本来の価値と現在の株価のバランス、そして市場の参加者たちが今どちらの方向に向かって売買を行っているかという、極めてシンプルで本質的な要素です。
私たちはこの本質的な要素を複数の具体的な条件に分解し、AIに登録していくことになります。
具体的に教え込むべき必須の条件は大きく分けて二つの視点から成り立ちます。
前提条件1:企業価値(ファンダメンタルズ的視点)
一つ目は企業の価値を測る視点です。例えば、企業が稼ぎ出す利益が前年と比べてしっかりと成長しているかどうかを確認します。さらに、その利益に対して現在の株価が市場全体の平均と比べて割安な水準に放置されているかどうかを、PER(株価収益率)やPEGレシオといった指標などを用いて判断させます。どんなに業績が良くても、すでに価格が高騰していれば手を出さないという安全基準をここで設定するのです。
前提条件2:チャート(テクニカル的視点)
二つ目はチャートの波から市場の熱気を測る視点です。企業の価値が割安であっても、誰もその株を買おうとしていなければ株価は下がり続けます。そこで、下落していた株価が底を打ち、25日線が上向きに転じているかどうかをAIに確認してもらいます。さらに、そのタイミングで売買の成立数(出来高)が急激に増加し、新たな買い手が市場に参入してきている事実があるかどうかも併せて評価します。
これらの条件をあらかじめAIに登録し、数多くの上場企業の中から、この条件に合致する銘柄だけを探して抽出してほしいと指示を出します。AIは人間の持つ欲望や希望的観測といった感情に一切左右されることなく、与えられた基準のみに基づいて、広大な市場のデータから条件に合う少数の銘柄だけを選び出してくれます。
どのような条件を基準として設定するかが、AIを使った投資の精度を決めるすべての土台となります。正しい判断基準を初回だけ設定したら、あとはAIが抽出した銘柄を確認して人間が最終的な売買の決断を下します。これが、安全に資産を構築していく最強の仕組みとなるのです。
“多くの情報”はAIの判断を狂わせる
AIを投資に活用しようとするとき、独学で苦労し挫折した人ほど、分析する精度を極限まで高めようとして、知っている限りのあらゆる指標や複雑な分析手法を設定しようとしてしまいます。
企業の財務諸表に書かれている細かな数値から始まり、たくさんのテクニカル指標、さらにはインターネットや投資本で見かけた最新の投資理論に至るまで、手に入る限りの情報をAIに教え込もうとします。情報量が多ければ多いほど、そして条件が複雑であればあるほど、AIはより賢く働き、負けにくい銘柄を見つけ出してくれるはずだと固く信じ込んでいるからです。
しかし、情報をAIにやたらに詰め込もうとすると、優秀なアシスタントに育てられるどころか、かえってAIを深刻な混乱状態へと陥らせる原因となります。勝敗に直結しない不必要な指標や、互いに矛盾する複数の分析手法を入れてしまうと、AIはそれらのノイズとなる情報に引っ張られてしまいます。
AIは与えられた条件を忠実に満たそうとするあまり、本来の安全に資産を増やすという目的から大きく外れ、結果として、リターンは大きいけれどリスクも大きいような、危険な銘柄ばかりを抽出してくることになるかもしれません。
多くの情報を持たせることが投資の成功につながるという発想は、自分の手でAIの判断を狂わせる間違いであることを認識しましょう。
世間でもてはやされている派手な手法は捨てよう
特にAIに「高値ブレイク(新高値手法)」を良い条件として学習させるのは危険です。高値を更新し続ける株は、すでに安値で買った投資家たちが利益確定を狙っている極めて危険な状態です。株価が移動平均線から離れすぎていると、元の価格帯へ急反落するエネルギーが溜まっていて、暴落のリスクも高まります。
AIには、高値をさらに超えていく株と高値から暴落していく株の違いはわかりません。織り込まれている期待値の読み方もわかりません。
安全に使うならば「安く買って高く売る」という投資の本質に反する手法は教えずに、底値圏から上がり始める最も安全なタイミングで買う、というシンプルなルールだけを徹底させましょう。
株式投資で長期間にわたって“できる限り安全に”資産を増やし続けるために必要な情報は、ほんの少ししかありません。繰り返しますが、相場の世界で生き残る原則は、企業価値に対して割安な状態にある株を買い、上昇し終えた高いところで売るというシンプルな行動に集約されます。AIを最高の相棒として機能させるには、この大原則から外れる不要な情報をできる限り削ぎ落とす意識が必要です。
世間で一時的にもてはやされているだけの派手な手法をすべて捨て、企業の実態と市場のトレンドを測るための、数個の条件だけを厳選してAIに教え込むこと。このノイズを排除する引き算の思考こそが、情報過多の海で溺れることなく、AIから正確な判断を引き出す最大のポイントになります。必要最小限の条件を学習させることで、AIは初めてその真価を発揮し、投資の成功へ導いてくれるはずです。
