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「日本の社会保障は破綻するまで変わらないのか」…これだけ社会保険料を払っていながら、年金制度の崩壊に近づいていることを気にしない日本人

 みんかぶプレミアム特集「逃げの介護」第2回は三浦瑠麗氏が、調査から分かった日本人の税金・社会保険料に対する意識を解説する。「日本は、本当に年金が破綻するまで何も変えようとしないのかもしれない」。データから国民の本音を解き明かすーー。

目次

消費税をめぐるヒートアップ

 選挙が近づくたびに盛り上がるのが消費税をめぐる議論である。2019年の参院選で安倍政権は消費税10%を公約として選挙を戦い、自公が勝利したものの、その後3年間にわたりコロナ禍が蔓延して経済に圧迫を加えたこともあって、選挙のたびに消費税減税の論点が盛り上がった。昨年の参院選では、投開票日までのSNS分析で全期間の個別争点において消費税が2位につけた(下図参照)。これは、経済カテゴリーの中で、「消費税」への関心が「物価」への関心を上回ったことを示している。反対に、社会保障分野の中で全期間のランキングに入ったキーワードはなかった。

*CATs(Collective Analysis Teams, 民間有志チーム)分析提供、QUICK Data Cast発表。

 消費税は分かりやすい税だ。何を買うにもその場で支払っている税金を意識する。所得税額が低い所得帯の人にとっては、入ってくるお金を全部消費に回す感覚だろうから、消費税のインパクトは大きいだろう。だが、人びとは「日頃どれだけ自分が消費税を払っているか」に注目しても、給与明細の項目にある社会保障費に対してはあまり感度が高くない。

 2023年には、健康保険料、介護保険料、雇用保険料が軒並み値上げされた(健康保険料は地域による)。高齢化社会の進展による医療費の増大に加え、コロナ禍で企業に休業要請を出し続け、雇用調整助成金に保険料をつぎ込んだのだから不思議はない。しかし、医療と介護、年金、社会保障全般をめぐる議論は、選挙期間中に総合ランキングに浮上しなかった。

 政治家は有権者の関心が高い物事を中心に訴えがちだ。コロナ禍の出口における需要増につづき、ロシアがウクライナに侵攻したことで、エネルギー価格は高騰した。それに記録的な猛暑日が加わったことで、電気代論争が過熱する。参院選をきっかけとして電気代の問題は国政上重要な論点となったし、ガソリン代に関しては補助が継続された。しかし、国民があまり騒がない医療と年金、社会保障の抜本改革に関しては、皆避けて通ってはいないだろうか。

*CATs分析提供、QUICK Data Cast発表。

 厚生年金は、2003年4月に13.58%だったものが段階的に引き上げられ、2017年9月には18.3%となった。うち半分が労働者の自己負担である。働き盛りの年収500~600万の人にとっては、社会保障費だけで月収の15%以上が持っていかれることになる。防衛増税としての所得税付加税1%分の使用をめぐってはあれだけ議論が紛糾したが、これだけ社会保険料を払っていても日本の年金制度が破綻に近づいているのを放置してよいのかという問題については、ほぼ無風とも言っていい。

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この記事の著者
三浦瑠麗

国際政治学者、シンクタンク 株式会社山猫総合研究所代表 1980年10月神奈川県茅ケ崎市生まれ。 内政が外交に及ぼす影響の研究など、国際政治理論と比較政治が専門。東京大学大学院法学政治学研究科総合法政専攻博士課程修了、博士(法学)。東京大学公共政策大学院専門修士課程修了、東京大学農学部卒業。日本学術振興会特別研究員、東京大学政策ビジョン研究センター講師などを経て2019年より現職。『21世紀の戦争と平和』(新潮社)、『シビリアンの戦争』(岩波書店)など著作多数。近著に、「日本の分断」(文春新書)、「不倫と正義」(中野信子氏との共著、新潮新書)。

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