札幌ドーム時とは収益が雲泥の差!野球の試合がない日でも「エスコンフィールド」に人が集まる「明確な理由」北海道への経済効果は年1000億円

プロ野球・北海道日本ハムファイターズの本拠地である「エスコンフィールド北海道」(北海道北広島市)が熱い。レギュラーシーズンは年間200万人を超える観客動員数を確保し、野球場を中核とする複合施設「北海道ボールパークFビレッジ」には試合がない日も来場者が詰めかけているのだ。完成から約2年、「球場ビジネス」の枠を超えたFビレッジは地元の魅力を発信する拠点として人々に愛される。経済アナリストの佐藤健太氏は「東京に誕生予定の多目的スタジアムも北海道での成功を参考にすべきだろう」と指摘する。
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集客力がアップしている日ハム・エスコンフィールド
2023年3月に完成したエスコンフィールド北海道は、JR「北広島駅」から徒歩20分の場所にある。札幌駅や新千歳空港駅から最寄駅まで約20分、北広島駅からはバスで約5分かかり、当初は集客に不安の声が聞こえた。
だが、1年目の2023年、日本ハムのホームゲームの観客動員数は約188万人(71試合)に上り、1試合平均で2万6515人だった。それまでの本拠地である札幌ドーム(72試合)は年間約129万人、1試合平均1万7937人(いずれも2022年)だったことを考えれば、いかに集客力がアップしているのかわかるだろう。
もちろん、日本ハムと言えば、米大リーグ史上初のホームラン50本・50盗塁という「50-50」を成し遂げたドジャースの大谷翔平選手や、パドレスのダルビッシュ有投手らスターを輩出してきた人気球団だ。彼らが米国に飛び立った後も人気は衰えることなく、開業2年目の2024年はホームゲーム(72試合)の観客動員数が年間約208万人、1試合平均2万8830人にまで増加している。年間200万人超えは2017年以来のことだ。
エスコンフィールドを含む「Fビレッジ」が優れている点は、野球観戦以外の来場者も多いことにある。運営する「ファイターズスポーツ&エンターテイメント」(FSE)によれば、Fビレッジの来場者数は2023年3月12日から同12月末までに計346万4637人に達した。2024年は9月末時点で約350万人に上り、開業初年を大きく上回っている。
この約350万人のうち、約207万人は日ハム戦の入場者だ。つまり、それ以外の来場者は野球観戦以外を目的とした訪問と言える。
Fビレッジは「1つの行楽地」
試合がない日も平日に5000人、休日は8000人近くが訪れ、北海道外からの来場者は全体の約3割を占める。試合がない日も滞在時間が平均3時間に上るという。
Fビレッジの成功は、野球ファン以外のターゲット層も取り込んでいることにある。もちろん、3万5000人を収容するエスコンフィールド北海道は日本初の開閉式屋根付き天然芝球場で、スタンドの傾斜が緩やかのため選手を近くに感じられる臨場感あふれる設計となっている。
球場内の飲食ブースも充実し、試合終了後も営業している「七つ星横丁」で余韻に浸るのも良し、フィールドを一望できる世界初の天然温泉やサウナ、客室から観戦できるホテルでゆったりと過ごすのも良い。試合がない日は外野エリアに無料で入ることができ、スタジアムツアーを堪能する人もいる。人気玩具店「ボーネルンド」の直営施設は屋内外の遊具を親子で楽しむことができ、手ぶらでアウトドアができるグランピング施設「ALLPAR(オルパ)」ではBBQを満喫できる。
野球場に行くと言えば、試合観戦後は直帰することをイメージするが、Fビレッジは「1つの行楽地」になっていると言っても良いだろう。スノーパークや盆踊り、親子キャンプ、ヨガなど試合の有無にかかわらず楽しめる仕組みづくりが成功し、試合観戦を伴わない来場者の平均滞留時間を3時間超にまで伸ばしているのだ。
北海道への経済効果は年間約1000億円に
2023年の売上高を見ると、コロナ前の2019年(札幌ドーム)の約158億円から約251億円と実に100億円近くも上昇している。営業利益は当初目標の26億円を上回る36億円に上った。