1リッター50円以上の税金がかかるガソリン価格が補助金終了で高騰!悲鳴を上げる国民に政府は…宮沢氏が10年前に仕掛けた「ガソリン価格高止まりと安定供給」

ガソリン価格が高止まりしている。1月8日発表された最新のレギュラーガソリン小売価格(同6日時点)は昨年末から5円近く値上がりし、全国平均は1リットルあたり180.6円となった。8週ぶりに値上がりが止まったように見えるが、これは年末に石油元売りに対する補助金が縮小され、その反映がなされていたことが背景にある。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が解説するーー。
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高騰するガソリン代についての補助金政策の愚かさ
高騰するガソリン代についての補助金政策の愚かさについては枚挙にいとまがないが、代表的な批判は、やはり「中抜き」問題であろう。日本で実施される「ガソリン補助金」の仕組みを端的に言うと、給付先は石油元売りで、給付を前提に卸価格を抑え、結果として小売価格が抑制されるという仕組みだ。
こうした仕組みについて、小嶌正稔氏(桃山学院大学経営学部教授)のレポート「石油元売り大手3社が最高益、「ガソリン補助金で大もうけ?」の疑問に答える」(ダイヤモンド・オンライン、2022年9月9日)によれば、以下のことがわかっている。
<政府の支給額と小売価格に反映されなかった差額は増加し、(2022年)7月12日には累計で1リットル当たり45.2円分、8月9日には累計で1リットル当たり46.2円分が消費者に還元されなかった>
レポートでは、他にも<17年4月、業界再編によりシェア50%を超える巨大な元売り(ENEOSHD)が誕生した><続く19年4月、現在の3大元売り体制が完成すると、小売りでのシェア争いは姿を消した>ことで、<こうした流れにより、元売りは石油製品の販売数量が減少する中でも、確実に収益を上げる仕組みを整えつつある。結論を言うと、それゆえガソリンをはじめとした石油製品の相対的な高止まりは続く>という指摘がある。
これは、自民党の税制調査会長である宮沢洋一氏が、10年ほど前の経済産業大臣在任中に主導した業界再編ゆえに、起きた流れである。業界の先行きを不安視し、安定供給を優先させたということなのだろうが、当然、ガソリン代は高止まりする結果を招いた。ガソリン利用者の生活基盤が脅かされ、営業コストが増える一方で、石油元売りは好決算が続く。
ガソリン減税に頑なに抵抗する宮沢氏
ガソリン代金に含まれる本来の税額は1リットル当たり28.7円であった。しかし、何度も増額され、現在は1リットル当たり53.8円となっている。この税額に加え、石油石炭税や地球温暖化対策税が課され、さらに消費税も含まれるため、実際の税負担は約60円に達している。ガソリンの購入価格に占める税金の割合は全体の4割以上となっている。
中抜きが発生しないガソリン減税に頑なに抵抗し、中抜きが発生する補助金支出にこだわる宮沢氏だが、石油が高止まりする原因をつくったのは、この人物である。石油連盟と全国石油商業組合連合会、全国石油政治連盟が毎年開催する総決起大会に、宮沢氏は毎回のように出席しては、石油業界との関係性をさらに深めている様子が報じられている。
歴代の自民党政権が広範囲に恩恵が及ぶ減税よりも業界団体への補助金を優先する理由は、政治家と業界団体との関係、政策実行まで期間の短さ、そして政治的支持基盤の強化にある。
業界団体は特定の分野や地域で強い影響力を持つ存在であり、自民党に対して直接的な支出を求める声を上げる。補助金を通じてこれらの団体の利益を支えることは、自民党政治家にとって支持基盤の安定や選挙戦での強力な後援を確保する手段となる。業界団体は選挙時の資金提供や、地元有権者への働きかけを行うなど、自民党政治家にとって重要なパートナーである。このため、補助金は政治的な取引として機能しやすい。特定の業界や地域への効果を短期間で実現できる点でも政府にとって魅力的である。
補助金を通じて利害関係者との結びつきを強固に
補助金は政治家自身の評価向上にも直結する。特定地域や業界に資金が投じられれば、関係者から感謝や表彰を受ける機会が増える。これにより、自民党の政治家は「成果を上げた」という形で有権者にアピールできる。一方で、減税は幅広い国民に恩恵をもたらすものの、その効果は分散するため、政治家個人の業績として評価されにくい。