第二十七話「初めてのウソ」連載小説「奪われるースパイ天国・日本の敗戦ー」
スパイ防止法がないこの“天国”・日本で、知らない間に国が「奪われる」──。
表向きの歴史やニュースの裏側に潜む、冷酷な国際諜報戦と、個人の運命が国家間の巨大な陰謀に巻き込まれていく壮大な安全保障サスペンス小説、ここに爆誕。
舞台は、女性初の内閣総理大臣・高地きみえが熱狂的な支持を背景に「強い日本」を目指す日本。彼女は長年の懸案である日本人拉致被害者の奪還を決意し、極秘裏に北朝鮮の金正恩総書記との会談に臨む。しかし、その外交交渉の裏側では、すでに北朝鮮の体制に「影」が差し込み、巨大な隣国・中国の思惑が絡み合っていた。
第二十七話「初めてのウソ」
東京・霞が関にあるビルの一室で、今泉謙太郎は3人の屈強な男たちに囲まれていた。1人は雑談でさえも黙々とメモに記録し、1人はホワイドボードにチャート図のようなものを書いている。そして、もう1人は中国でも会った茂田伸夫だった。
「李天佑が君に話したことをすべて教えてくれ」
「君が円明園の奥で見たモノは何だったんだ?」
謙太郎は、中国で見聞きしたことをありのままに説明した。李天佑の言動、円明園の奥にある封鎖された区画に秘密の施設が隠され、天佑が「中国の最先端技術開発センター」であると誇っていたこと、そして壁には地図と衛星写真が貼られ、日本列島が詳細に描かれていたこと・・・。天佑は日本を「スパイ天国」と呼び、インフラの弱点を指摘しながら不気味な笑みを浮かべていたことも証言した。