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日本型リベラル弱体化「3つの要因」…存在意義が問われる立憲民主「国民民主に抜かれる危険性も」

 リベラル勢力の衰退が指摘されて久しい。権利や自由、福祉などを重視するリベラル派は10月の総選挙で一定の議席数を確保した。立憲民主党は選挙前勢力の98議席から148議席に伸長し、野党第1党の座を維持している。だが、政治資金パーティーをめぐる裏金問題で自民党への大逆風が吹き荒れ、与党が過半数割れの大敗となった中で立憲の比例代表での得票数はわずか0.6%増にとどまる。このままリベラル勢力は廃れていくのか。政界事情に通じる経済アナリストの佐藤健太氏は「国民の既成政党に対する不満は顕著であり、共感を生む戦略を描けなければ新たな勢力の台頭を許すだろう」と見る。

目次

自民党の票は立憲民主党には流れなかった

 先の衆院選では各党の明暗がはっきりと現われた。選挙前に247議席を確保していた石破茂首相率いる自民党は56議席も減らす大敗を喫し、連立与党を組む公明党も8議席減少した。与党の過半数割れは2009年の政権交代以来15年ぶりのことだ。

 衆院選比例代表の党派別得票数を見ると、自民党は2021年の前回衆院選から26.8%減(約533万票減)の約1458万票となり、公明党も16.2%減(約114万票減)の約596万票と落ち込む。ただ、50議席も増やした立憲民主党が大きく伸びたかと言えば、そうではない。3年前の前回(約1149万票)から約1156万票と7万票程度しか増えていないのだ。

 その他の政党を見ると、いわゆる「右」系は日本維新の会が36.6%減の約511万票となった一方で、初挑戦の日本保守党は約115万票、参政党は約187万票を獲得。逆に「左」系は共産党が19.3%減の約336万票、社民党は8.3%減の約93万票と落ち込んだ。既成政党が苦しむ中で伸長したのは国民民主党と、れいわ新選組だ。国民民主党は138%増の約617万票、れいわ新選組は71.7%増の約381万票を獲得した。

 これらの票数とメディアによる出口調査の結果を合わせ見ると、逆風下の自民党が失った約533万票は日本保守党や参政党に加え、国民民主党などに流れていったことがうかがえる。日本テレビ系列と読売新聞が実施した出口調査によれば、自民党は18・19歳と40代以上の投票先(比例代表)でトップだったが、20代と30代は国民民主党が最も多かった。自民党や立憲民主党はシニアの支持が強く、60代は約25%、70歳以上は3割近くを占めるが、国民民主党やれいわ新選組は20~40代の支持割合が高いのが特徴だ。立憲民主党は20・30代が10%台前半と低い。

リベラル勢力の衰退は、少なくとも3つの要因

 歴史的大敗を喫した自民党から離れた支持は、立憲民主党や老舗政党には向かわず、「手取りを増やす」「減税」といった国民の懐を温めるための政策を訴えた新興勢力に吸収された。最近の各種選挙においてはSNS戦略の善し悪しばかりが注目を浴びているが、現状を見る限り、有権者の多くは「保守かリベラルか」「右か左か」という従来の構図ではなく、それぞれが共感する公約や主張、発信力などを踏まえて期待を向けているのだろう。

 逆に言えば、これだけの逆風下にあった自民党の得票数は「基礎票」と見ることができる。だが、横ばいだった立憲民主党の得票数は違うはずだ。ビッグチャンスが到来したはずなのに従来よりも期待を集められず、共産党や社民党なども票を伸ばせなかったのは深刻と言えるだろう。立憲民主党は現在の小選挙区比例代表並立制の下で議席数こそ増やしたが、決して明光がさしているわけではないのだ。

 リベラル勢力の衰退は、少なくとも3つの要因が考えられる。1つ目は「旧来の対決スタイル」だ。いわゆる「モリカケ」問題に代表されるように、野党は政府・与党のスキャンダルや不祥事などへの攻撃を強める。国会の予算委員会では国民生活に直結する予算案が議論されるのかと思っていたら、その中身は政府や与党に対する批判のオンパレードだ。もちろん、問題点があれば徹底的に調査して追及すべきなのだが、何かあると同じ批判をグダグダとやっているように映る。

最大のテーマが「裏金問題」というのは何と悲しいことだろう

 世界を見渡せば戦争が行われ、足元は国民が物価高に苦しむ中で、国会における代表者を選ぶ総選挙の最大のテーマが「裏金問題」というのは何と悲しいことだろう。たしかに「政治とカネ」問題は重要ではあるものの、いつまでも延々と批判している政治が関心を持たれなくなるのは当然だ。多くの有権者からすれば、そんなことよりも自分たちの生活を何とかして欲しい、と思うのではないか。

 2つ目の要因は「わかりにくさ」だ。立憲民主党は大半の所属議員が民主党や民進党を経て現在に至る。ただ、若者には2009年の総選挙で自民党が大敗し、民主党が政権交代を果たしたことを知らない人も存在する。その一方で、SNS上には野田佳彦代表が首相時代に消費税増税への道筋をつけた人物と拡散されている。

何を実現するために構成している政党なのか

 先の衆院選で立憲民主党は「政権交代こそ、最大の政治改革。」と訴えた。だが、暮らしを豊かにするとした「7つの約束」には減税の項目は見られず、経済政策は最低賃金の引き上げやリスキリング支援などにとどまる。立憲民主党は現在、企業・団体献金の廃止を自民党に迫るが、民主党時代の2009年総選挙では政権公約に禁止を掲げたものの、翌年に受け取りを再開する方針を決めた。

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この記事の著者
佐藤健太

ライフプランのFP相談サービス『マネーセージ』(https://moneysage.jp)執行役員(CMO)。心理カウンセラー・デジタル×教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。様々なメディアでコラムニストとしても活躍している

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