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USスチールが最大の敗者に…バイデンの合理性を無視した阻止声明に非難殺到!WSJ紙は「腐敗」と猛批判

 日本製鉄によるアメリカの大手鉄鋼メーカー、USスチールの買収計画に対し、ジョー・バイデン大統領は国家安全保障上の懸念を理由に禁止する命令を出した。同盟国の企業同士による同意の上で行われた買収計画を大統領が阻止するのは異例だ。これに対してUSスチールのデビッド・ブリットCEOは「日本を侮辱している」「恥ずべき行動」とバイデン氏を批判した。この買収阻止計画は本当にアメリカの国益になるのか。誰が一番得することになるのか。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が解説するーー。

目次

合理性を無視した内容

 アメリカのバイデン大統領は、日本製鉄によるUSスチールの買収を正式に阻止する決定を下した。この決定は、アメリカ国内で高まる保護主義の圧力に屈したものであり、労働組合や一部の政治勢力から支持を受けている。このニュースは、USスチールの労働者、そしてアメリカ人にとって経済的にネガティブな決定と言える。

 バイデン大統領は2024年の段階で、日本製鉄の買収に反対する意向を示していた。

「USスチールは国内で所有、運営されるアメリカ企業であり続けることが不可欠だ」「(USスチールは1世紀以上、アメリカの象徴的な企業だとした上で)完全にアメリカ企業であり続けるべきだ。アメリカ人によって所有され、世界で最も優秀な鉄鋼労働組合の組合員によって操業される企業であり続けることを約束する」(全米鉄鋼労働組合での演説、2024年4月)

 上記の演説は、トランプ元大統領が選挙戦の中で買収案を批判した後に行われたものであり、激戦州の労働者層の支持をめぐる競争が背景にあった。今回の決定は、アメリカ外国投資委員会(CFIUS)が提出した報告書で結論が出なかったため、最終判断が大統領に委ねられた形となった。

 バイデン大統領が出した今回の「阻止」声明は、選挙戦当時と変わらない、合理性を無視した内容だった。

「何度も申し上げているように、鉄鋼生産とそれを生産する鉄鋼労働者は、我が国の屋台骨である。(中略)国内の鉄鋼生産と国内の鉄鋼労働者がいなければ、わが国は強さを失い、安全保障も低下する」として、冒頭で「国内」を重要視することを指摘しているが、そもそも、今回の買収はUSスチールが生産拠点を海外に移すというような内容ではない。

アメリカ市場での投資に慎重になる各国企業

 次に実績として強調されているのが中国叩きだ。「私は、中国からの鉄鋼輸入に3倍の関税をかけることで、米国の鉄鋼労働者と鉄鋼生産者の競争条件を公平にするために、断固とした行動をとった」というが、これは海外の工場で生産されたものに関税をかけた話であり、今回は国内の企業が外資系に買われるという話と全く話が違う。

 鉄鋼業が外資系であることが、アメリカの安全保障を揺るがすとは到底思えないが、外資系であることが買収阻止の決定理由とされるのであれば、アメリカの多く企業は撤退を余儀なくされることになる。バイデン大統領の決定は、日本やヨーロッパの企業に対してアメリカ市場での投資に慎重になるシグナルを送ると指摘している。

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この記事の著者
小倉健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。 Twitter :@ogurapunk、CONTACT : https://k-ogura.jp/contact

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