高校無償化巡る石破首相発言に女優「税金を納めることに、もはや違和感」…政権が掲げた「楽しい日本」はなぜこれほど楽しくないのか

「楽しい日本、これを国民の皆様方と共につくり上げていきたい。『今日より明日は良くなる』と実感し、自分の夢に挑戦し、自己実現を図っていける。そういう活力ある国家であると考えています」。そう石破茂総理大臣が語ったのは2025年1月6日の年頭記者会見だ。しかし、今のところ何も楽しくはない。多くの国民が期待を寄せた「103万円の壁」見直し議論は思うように進まず、米の価格は上がり続けた。そしてガソリン税の暫定税率廃止も与党は動かない。
女優の東ちづる氏もXで「楽しい日本」について疑問を呈した。「高校授業料無償化を巡り『高校教育は、国民全体の負担で賄うべき』と?が負担するのではなく。予算編成の見直しではなく?この現状に不安だらけの私たち国民が負担?施政方針演説で打ち出した『楽しい日本』からどんどん遠くなっています。税金を納めることに、もはや違和感しかないです」。
経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏がこの問題を解説するーー。
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国民はどう「楽しい日本」を実感しろというのか
石破茂首相は、メガネをかける、かけないといった単なる見た目の問題だけでなく、自身の「設定」をしばしば忘れてしまうようだ。顔が怖いという評判を気にして、度の入っていないメガネをかけていると言うのだが、報道写真を見ると、かけたりかけなかったりと一貫性がない。筆者がインタビューをした際には、メガネをかけていなかった理由を尋ねると、「今日はいいでしょう」と言われた。なぜ「今日はいい」のかは不明だが、自身の見せ方に対する意識があまりに場当たり的であることがうかがえる。
同じことが政策にも表れている。
石破首相は、施政方針演説や年頭記者会見で「楽しい日本」を掲げた。強さや豊かさといった先人の築いた功績の上に、世界平和のもと、すべての人々が安心と安全を感じ、多様な価値観を持つ一人ひとりが、今日より明日が良くなると実感し、夢に挑戦し、互いに尊重し合いながら自己実現を図る——そうした活力ある国家を目指すと述べた。
しかし、最近の発言を追うと、次のようなものがある。これで国民が「楽しい日本」を実感できると本気で考えているなら、驚きだ。
「国家のためには、受けないことでもやらなければならない。受けることばかりやっていると国は滅びる」
「つらいこと、苦しいことであっても、いかにしてそれが必要なのかということを、国民に誠心誠意お願いしていく。(そうすれば)あの人の言うことは聞いてみようという思いを持っていただける」
(いずれも3月8日の自民党会合での発言)
こうした「つらい日本、苦しい日本」発言に対し、自民党内からも公然と批判の声が上がるようになった。