田原俊彦“ラジオ炎上発言”の裏にある、時代と場のズレ…吉田豪、元ジャニーズに共通する「歪み」を指摘

TBSラジオが6月15日に放送した『爆笑問題の日曜サンデー』での発言をめぐって、田原俊彦が批判を浴びている。放送中、田原は原稿を読む女性アナウンサーの手をテーブル越しに指で触れる場面があり、さらに「真ん中の足はもっと上がるんだけどね」と性的なニュアンスを含む発言も。TBSは「不適切な言動があった」と認め、田原側に再発防止を申し入れたうえで謝罪の言葉を受け取ったと報告した。大きな騒動に発展した背景には何があるのか。プロインタビュアーの吉田豪氏が語るーー。
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予想以上に燃えた…“いつものトシちゃん”が通用しなかった理由
トシちゃん(田原俊彦)が炎上したニュースを見たとき、生放送をリアルタイムで聴いていたボクが最初に思ったのは「予想以上に燃えてるな、でもまあこうなるよな…」ってものでした。というのも、今回の発言って『日曜サンデー』でのトシちゃんを知っている人であれば驚くようなものじゃないというか、普段とそれほど大差ないって認識だったと思うんですよ。正確に言うと、前からずっとひどかったし、いつでもほぼアウトなことしか言ってなかった。それがとうとう社会的に許されなくなったというか、局まで巻き込んだ騒動にまでなったんだな、という。
実際、2023年6月に同番組に出演した回なんて、ジャニー喜多川性加害問題の最中だったにもかかわらず「ジャニーさん万歳!」「メリーさんもいい人なのよ」から始まって、「(『3年B組金八先生』で共演した)ジュリーはタイプじゃなかった。タイプだったら手出してるよ」「ジュリーはみんなで守ろう!」とジャニーズ事務所擁護全開モード。爆笑問題の太田さんが「こいつ番組を潰しに来たのか」って呆れてたくらいで。正直、前の方が内容的にはよっぽどやばかったと思います。空気が読めないことでお馴染みのあの太田さんが「芸能界で唯一『こいつKYだな』と思った」と昔から公言していたぐらいの人なので、今回の件でも驚きはなかったわけなんですよ。
でも今回は、そういう“いつものノリ”が完全にアウトになってしまった。理由としては、同じ日の直前にもTBSテレビ『サンデージャポン』で爆笑問題とトシちゃんが共演していて、でもトシちゃんがギックリ腰で元気なくて太田さんにいじられていたから、どうにか元気をアピールしなきゃってスイッチが入っていたことと、山本恵里伽アナを巻き込んじゃったことが大きかったと思います。山本アナの手を触ってたしなめられたりするやり取りも、音声だけしか聞こえないラジオの特性を活かした、一聴するとすごいことをやってるんじゃないかと想像させるギリギリのやり方だと思ってやったんだと思われるんですけど、局アナを巻き込まれたら局としても彼女を守らなきゃいけないし、ハッキリとした声明を出すしかなくなっちゃうわけで。
せめてゾーニングできていたらと思うんですよね。爆笑問題が深夜に男2人だけでやってるラジオ『火曜日JUNK 爆笑問題カーボーイ』みたいな男子校ノリの番組なら、ああいう発言もある程度許される。ところが『爆笑問題の日曜サンデー』は日曜のお昼に放送されている、アシスタントに女子アナもついてる番組ですから。家族で聞いてる人も多いだろうし、スポンサー案件のコーナーもあるしで、そんなところに昭和ノリ全開で乗り込んで下ネタを連発させてたら、まあこうなるよなっていう騒動だと思ってます。
ちなみに、この騒動の翌週がまた地獄で、ゲストがYOASOBIじゃない、不良のほうのIKURAちゃんだったんですよ。あの人って、何を聞いても9割下ネタで返す、ある種の天才でその能力が太田さんにも高く評価されてるんですけど、そんなタイミングでのゲスト出演で。さすがに今回は下ネタをほとんど封印して、めちゃくちゃやりづらそうでしたけど、それでもちゃんと笑いを取ってたから見事でしたね(笑)。
ラジオだけじゃない。テレビでも“昭和感覚”はこうして限界に来た
ラジオって、昔は「メインの男性パーソナリティに女性アシスタントがつく」みたいな構造が当たり前だったんですけど、ここ20年でかなりやり方も変わってきてるんですよね。そもそも性別でアシスタントという役割を決める必要あるのかとか、その役割自体がおかしいんじゃないかっていう話になってきて。ボクが出てたTBSラジオ『ストリーム』もそうでした。最初は小西克哉さんと松本ともこさんのコンビで、松本さんが一歩引いたアシスタント的なポジションで出演者の下ネタを軽くいなすような役割だったんですけど、次の『小島慶子キラ☆キラ』や赤江珠緒さんの『たまむすび』はメインパーソナリティーが女性で、男性がパートナーになって。いまの石山蓮華さんの『こねくと』は女性コンビの日だってあったりと、ジェンダーバランスがどんどん変わってきてますよね。
で、これはラジオに限らずテレビも同じです。たとえば80年代末に『金子信雄の楽しい夕食』って番組があったんですよ。あの『仁義なき戦い』で山守組組長を演じていた金子さんが料理も得意だっていうことで、お酒を飲みつつ、若い女性アシスタントに楽しくセクハラしながら夕飯を作る番組で。東ちづるさんがお気に入りだったんですけど、普通にお尻を触りながら進行してましたからね(笑)。で、それを軽くいなすところまで含めて、ひとつの演出として成立していたし、そこが人気番組だったわけです。平日お昼の帯番組だからターゲットは主婦層だし、そこからの反発もなかった。そういう時代だったんですけど、それが金子さんが亡くなったことで『上沼恵美子のおしゃべりクッキング』という女性の番組になったりと、これが自然な流れなんだと思います。